フットサル、しよ♪

本郷むつみ

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部員獲得会議です♪

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「さて、今日のここのおごりを最後に志保へのわだかまり消えた。という事にしてあと1人。あと1人、部員を集めれば部活となる」

「私はジャンクフードと言う物は口には合わないのですが、仕方がないので今回はこれで手を打ちますわ」

(コクコク)

「えぐ、えぐ、今月のお小遣いが早くも無くなった。私は部員を集めただけなのに。しかも、なぜ柚季ちゃんまで……」

 4人は学校帰りにファーストフード店にいた。そして泣いている志保を無視して、理沙達は話を進め始めた。

「で、これから私たちはどうすればいいのですわ?」

「もうすぐGWだけど、GWに入っちゃうと部員集めは難しい。それにここまで時間が経つとチラシやポスターも効果がない。でも、もう1人部員は必須。だから何とかしないと……って、いつまで泣いているんだよ! 志保が部長だろ? なんで私が仕切らないといけないんだ!」

「いいよ、理沙が部長やればいいじゃん」

 泣き止んだ志保が今度はふてくされる。両頬を膨らませ、会話に絡んでくる素振りを全くしなくなった。
 4月も終わりが近づき、部員集めは完全に行き詰っていた。
 大きなため息を1つついた理沙は、仕切り直して亜紀と柚季の顔を交互に見た。

「はあ~。志保は立ち直るまで時間がかかりそうだから先に話を進めようか」

「私が入部したからには同好会なんて中途半端な事は絶対に許しませんわ」

「同好会じゃ新聞が出せないの……」

「あなた、本当に必要な時にしか声を出さないのですわね。私にとって必要ではない事はペラペラと喋るくせに」

 頬を膨らませながらジュースを飲む亜紀を柚季は携帯で写真を撮った。

「ちょっと、何しているんですか? 勝手に写真を撮らないで下さるかしら。一言言って頂ければ、ちゃんと写真用のポーズを取りますわ」

 そう言って亜紀はモデル気取りで写真用のポーズを取った。

「……そういう写真は撮らないの」

「何ですか? せっかくこの私がポーズを作ってあげているのに」

 柚季は小さな声で呟くと、携帯をポケットに収めた。柚季の行動に納得いかない亜紀は、なんとか写真を撮ってもらおうと色んなポーズを柚季の前でとる。
 だが、柚季は全く興味を示さない。そんな2人の話を終わらせて、理沙が話を戻す。

「脱線はもういい。実質、あと3日しかない。もう部活をやる生徒はほとんどがどっかに入部しているはず」

「確かにそうですわね。無駄な事に時間を使うなら、もっと有効的に使わないといけませんわ」

(コクコク)

 理沙の考えに亜紀と柚季が同調する。真剣な顔で理沙が亜紀と柚季を交互に見る。
 しかし、次に理沙から出た言葉は意外なセリフであった。

「で、どうしようか?」

 そのセリフを聞いた亜紀は椅子から滑り落ち、柚季は無表情のまま首をかしげた。

「何も考えてありませんの?」

(コクコク)

 亜紀と柚季が理沙に詰め寄った。

「だって、私は当たり前の事は思いつくけど、アレンジは苦手なんだもん……」

 小さくなる理沙に対し、亜紀は呆れながら座り直す。深いため息をつく亜紀に対し、申し訳なさそうにさらに小さくなる理沙。
 そして理沙は、「なんか、良い案ある?」と可愛く、甘えた声で言ってみた。

「今のしぐさでもう一回言って欲しいの。シャッターチャンスを逃したの」

「はあ~? あなたは一体何を考えていますの? 私を撮らずに佐原さんなら撮るのですか?」

「そうじゃないの。作ったポーズは撮らないの。売れない……」

「へぇ~、って売っているんだ? えぇぇぇぇ~~~!」

 柚季のカミングアウトに理沙と亜紀が飛び跳ねるように驚く。

「ちょ、ちょっと待って。柚季ちゃん、もう1回聞くよ? 売っているの? 誰に?」

「私と佐原さん、どっちの人気がありますの?」

「問題はそこじゃない!」

 ツッコミを入れる理沙に対し、亜紀は無視して柚季に詰め寄る。
 柚季はバッグから携帯タブレットを取り出し、操作をし始めた。その姿をただ見つめる理沙と亜紀。

「これがランキングなの」

 携帯タブレットを2人に見せる柚季。

「1位は相原さんなの」

「お~ほっほっほ。やはり民衆はわかっていますわね」

 そう言って理沙に高笑いをしてドヤ顔を見せる。
 しかし、柚季が亜紀の高笑いを制し、「でも、総合1位は理沙さんなの」と、冷静な声で亜紀に伝える。

「どういう事ですか?」

 バン! と机を叩きながら、立ち上がって亜紀が柚季に食いつく。怒って顔を近づけてくる亜紀を無視して冷静に柚季は説明をし始めた。

「相原さんが1位なのは1年生限定でのランキングなの。でも、2、3年生の評価も入れた総合ランキング1位は理沙さんなの。言ってみれば2年生、3年生に相原さんの認知度がまだ浸透してないってことなの。新入生代表をやったのは理沙さんなの」

「くっ! たった1回の敗北がこんな評価になるなんて……信じられませんわ」

 握り拳を作り、悔しがる亜紀を横目に理沙は静かにジュースを飲んでいる。
 そんな理沙を見た亜紀が握り拳を固めたまま詰め寄った。

「たった1回勝っただけで、私に完全勝利したと思わないで欲しいですわ。2、3年生に私の存在を知らしめればすぐ逆転しますわ」

 まるで背中から炎でも出す勢いで亜紀が燃え上がる。そんな中、空気を読まない人間がいきなり声を上げた。

「そうだ、良い事を考えた~」

 顔を上げ、間延びした声で志保が起き上がる。
 志保が出すアイディアの恐ろしさを知っている理沙と亜紀が顔を強張らせた。

「えっと、志保。何を思いついたんだ? お願いだから、実行する前に私たちに相談してくれ?」

「そ、そうですわ。これ以上、犠牲者を出さないためにも。ね、戸崎さん」

 強張った表情のまま、理沙と亜紀が志保に詰め寄った。その様子を見て志保が少し憤慨した。

「大丈夫だよ。信用ないな~」

 腕を腰に当て、頬を膨らます志保。

「柚季ちゃんに頼るって感じなんだけどね。1年生の新入部員はもう期待出来ない。だったら二、三年生をどっかの部から引き抜いちゃおうよ。柚季ちゃんがいるんだから出来るよ」

 あまりの志保のカミングアウトに他の3人は目が点となる。
 固まった3人をよそに空気の読めない志保が首をかしげながら理沙たちを見回した。

「あれ、どうしたの? いいアイディアじゃないかな?」

「お前はもう少し、人の都合というものを考えろぉぉぉ~!」

 そう言って理沙は思いっきり志保の両頬をつねり上げた。

「痛い、痛い、痛いぃぃぃ!」

「でも、やり方は別としても良い案かもしれないの」

 涙を流して理沙に謝る志保を横目に柚季が小さな声で呟いた。

「あなたまで何を言っていますの? そこまで卑劣な真似をする事は、相原財閥次期党首のこの私が許しませんわ」

「そうだよ。柚季ちゃん。志保みたいになっちゃいけないよ」

「みんな、酷い。せっかく考えたのに!」

 理沙と亜紀が完全に志保の考えを否定しつつ、柚季を正しい道に導こうと必死になって説得し始める。
 しかし、柚季は3人のやり取りを無視してタブレットを操作し始めた。
 3人が見つめる中、柚季の指が高速で動く。しばらくすると柚季の指が止まり、タブレットの画面を3人に見せた。

「この人なら大丈夫かもなの。2年生、遠藤舞(えんどう まい)166Cm、51Kg、ハンドボール部所属のGK。岡家高校では珍しいスポーツ特待生。中学の時に県選抜選手にも選ばれた事がある人なの」

「へえ、確かに条件はぴったりだけど、引き抜きはまずいだろ。しかも、特待生で県選抜選手って凄すぎるだろ」

 理沙が柚季の説明を聞きながらも、引き抜きを否定する。志保も亜紀も同じ意見だと言わんばかりに頷いた。

「うん。でも遠藤先輩はここ最近、部活に出てないらしいの。部活辞めて、特待生扱いも辞めたらしいの」

「さすがのあなたも遠藤先輩の真相はまでは分からないって事ですわね」

 両腕を組み、皮肉たっぷりな口調で亜紀が柚季に言った。いつもは無表情な柚季だが、少しだけ眉を上げる。
 しかし、柚季は反論しなかった。その態度が亜紀の言葉を肯定する事になっていた。

「でも、理由だけでも聞いてみない? もし、本当に辞めるのならフットサル部に来てもらうのだって頼めるし、特待生のGKなら即戦力間違いなし」

 いつも通り明るく間の伸びた志保の声が場の空気を和らげる。

「確かにそうだな。特待生を辞めるぐらい理由だ。よっぽどの事が無いとフットサル部には来てくれないとは思うが、話をしてみてもいいんじゃないか? 他に当てもないことだし」

「まあ、そうですわね。このままここにいても何も状況が変わるわけでもないわけですし」

(コクコク)

 理沙の考えに亜紀と柚季が同調した。気合いを入れる理沙と亜紀と柚季の3人。

「じゃあ、明日、遠藤先輩の所にみんなで聴きに行こう~」

 志保のノンビリとした声が店内に響き渡り、3人の気合いは一気に削がれた。



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