【完結】《BL》溺愛しないで下さい!僕はあなたの弟殿下ではありません!

白雨 音

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仮装パーティから一週間が経った頃。
珍しく、ランベールが夜に離宮を訪ねて来た。

チリンチリン…

訪問を告げる鈴に、僕は空耳かと思ったが、螺旋階段の下にはランベールの姿があった。
いつもならば、パーラーのソファに我が物顔で座っているのに…
いつもと違うと、嫌な予感がするものだ。

「遅くにごめんね、クリス」

ランベールはいつもの様に微笑んでいるが、何処か、寂し気に見えた。

「いえ、何かあったのですか?」
「うん…暫く、王都を空ける事になってね…」
「暫く?どの位ですか?」
「一月程かな、視察に行く事になったんだ。
それはいつもの事でね、だけど、おまえに会えないのが寂しいよ…」

ランベールが寂しそうな目で僕を見つめ、優しく僕の頬を撫でた。

「僕も一緒に行きましょうか?」

僕は後先考えずに、つい、そんな事を申し出ていた。
ランベールは薄い青色の目を大きくしたが、苦笑した。

「ありがとう、だけど、私だけで行かなくてはいけなくてね、王太子だからね」

そうか…
兄弟であっても、王子と王太子とでは違うのか…

僕がこうして療養し、公務をせずにいても成り立っているが、
王太子だときっとそうはいかない、責任も重いだろう。

「クリス…今夜は、一緒に寝てもいい?」

ランベールが僕の耳元に唇を寄せ、囁いたので、僕はドキリとした。
顔がカッと熱くなり、頭が働かなくなる。

「あ、あの、その…一緒に、なんて…」

「一緒に寝るだけ、何もしないから、お願い、クリス」

優しく甘い声で強請られ、僕はそれを拒む事など出来なかった。

「何もしないなら、いいです…」
「ありがとう、クリス」

ランベールは僕の頬に唇を押し当て、抱擁した。
それから、いきなり僕を荷物の様に抱え上げた。

「に、にいさん!??」
「大丈夫、落とさないからね」

そ、そういう事では無くて…

仕方なく大人しく運ばれていると、ランベールは僕が使っている二階の部屋ではなく、
一階の大きな部屋へ入って行った。
その大きなベッドにそっと下ろされる。
二人で寝ても十分に広いベッドだ。

僕はベッドの端に寄り、ランベールの場所を空けた。

「そんなに端に行かなくていいよ、こっちにおいで」

ベッドに上がって来たランベールに言われ、僕はもそもそと近付く。

「もう少し」と促され…
結局、寄り添う距離まで近付いたかと思うと、ランベールが僕を抱きしめてきた。

「捕まえた!」
「ぎゃ!!兄さん!何もしないって…」
「うん、抱きしめるだけで、我慢するよ」

だが、熱い体を密着させられ、足を絡められると…
僕の頭は、溶けたクリームの様になる。
堪らなく、顔が火照っている。
いや、体全体が火照っているのか?
その上、その大きな手に背中を撫でられると…

「はぁ…!」

変な声を漏らしてしまい、僕は顔を伏せ、固まった。

「ふふ、クリス、感じちゃった?クリスは感じ易いからね」

ランベールがうれしそうに言う。
僕はそれを無視し、眠った振りをする事にした。

自分を落ち着かせないと…

そう思うのに、触れている体温が気持ち良く、
無意識に絡み合った足にすり寄っていた___

「クリス、悪い子だね…」

ランベールが耳元で熱い息を吐き、僕はビクリとした。

「気持ち良くしてあげようか?」

それは、悪魔の誘惑だった。
僕は必死で頭を振り、抗った。

「駄目…!」

僕は修道士だ!
淫行は禁じられている!
神を裏切り、自分の身を穢す事だ___

「クリス、キスはしてもいい?」

キス?

「いつもしてるから、いいよね?」

いつもしているなら、いい…のかな?

僕の戸惑いを攫うかの様に、ランベールの口が、僕の口を塞いだ。

「ん…!」

舌が絡み付き、吸われる…

「ん!!」

熱い…!

その熱に、頭は真っ白になり、僕は何も考えられなくなっていた。

ランベールは思いのままに、僕の口内を蹂躙すると、唇を離した。
触れるか触れないかの距離で、熱い息が漏れる。

「は、はぁ…はぁ…」
「はっ、は…!」

ランベールの息も荒く、僕は何故かそれがうれしかった。

「クリス、可愛いよ…」

大きな手で顔を撫でられ、再び口付けられる。
僕は先程よりも大胆に、受け入れていた。
口を開き、自分から舌を絡める。

「ん!」

くちゃくちゃ
ぴちゃぴちゃ

二人の間で生まれる音に、煽られる。
ピタリと体を付け、夢中でキスをしていた。

ランベールの手が、僕の背中を降りて行き、尻に触れたかと思うと、
ぐいと、掴まれた。

「んん!?」

驚きに体が反り返る。
離れた唇を、ランベールが追って来た。

「クリス、キスしようね…」

キス…
僕は言われるままに、唇を開く。
だが、唇を重ねながらも、ランベールの手は僕の尻を揉みしだいた。

「ん!はぁ…あぁ!」

痛いし変な感じだ、だけど、気持ちいい…
だが、どうして、尻を揉まれているのか、分からなかった。

「にいさ…おしり、もまないでぇ…」
「駄目?私はもっと、おまえを触りたいよ…」
「ん、でも…はぁ、はぁ…あん!」

尻の割れ目を強く指で押され、僕は声を上げていた。

「だめぇ、へんなことしないで…」

目尻に涙が滲む。
ランベールの舌がそれを舐め取った。

「クリス、触るだけだから、いいよね?」
「だめぇ…、へんなとこ、さわるから…」
「触れ合うと気持ちいいよ、ほら、触って…」

ランベールの手が僕の手首を掴み、その尻に触れさせる。
僕は怖くて「いや!」と払ってしまった。

「ご、ごめんなさい…」
「いいよ、無理させてごめんね?」

ランベールの手が僕の尻から離れる。
安堵してもいいのに、何故か、申し訳ない気持ちになった。
それで、思わず、引き止めてしまった。

「ううん…少しなら、触ってもいいよ…」
「っ!ありがとう、それじゃ、少しだけね?クリス、向こうを向いてくれる?」

意味は分からなかったが、僕は言われるままに、ランベールに背を向けた。

「!?」

ランベールの手が僕の太腿を撫で上げる。
その感触に、僕はビクビクとし、体を丸めた。
だが、ランベールは僕にピタリと体を付けてきて、更に撫で回し…
僕の股間に触れた。

「あっ!?」

「あぁ、にいさ…んん!!」

止めようとしたが、その手はやわやわと僕のモノを揉んで来る。

「ひっ!やぁ…やめてぇ…駄目だからぁ!」

僕は止めたが、ランベールの手は無遠慮に、僕のズボンの中に入って来た。

「ん!!!」

手で直に触れられ、僕の体は引き攣った。
こんなの、知らない!
自分がどうかなってしまいそうに思え、僕は恐怖に泣いていた。

「いや!こわい!さわらないでぇ!」

「クリス、大丈夫だから…普通の事だよ、ほら、私も…」

尻に固いものを押し当てられ、僕は息を飲んだ。

「だめ…しちゃ、だめだよ、かみさまがだめだって…」

「神様は許してくれるよ、自然の事だからね…」

ランベールの手は更に大胆に動き、僕を快楽へと促した。
僕はその波に飲まれるかの様に、翻弄させられ、喘ぎ…
欲望を吐き出していた。
少し後に、ランベールもそれを吐き出していた。

僕は泣き疲れていた事もあり、ぐったりとベッドに沈む。
酷い睡魔に襲われた。

「無理をさせてごめんね、クリス…
どうしても、おまえとしておきたかったんだ…後悔しない様に…」

ランベールが僕を抱きしめ、額にキスを落とした。


僕が目を覚ましたのは、翌朝になってからだった。
そこにランベールの姿は無く、僕は自分のベッドで綺麗な姿で寝ていたので、
昨夜の事は夢だったのかと思った程だ。

だが、昼前に、青色の花の花束が届けられた。
それは、ネックレスの花に似ていて、《幸運をもたらす花》に違いないと思った。

ランベールの好きそうな事だ。

僕は「ふふ」と笑いを零し、メッセージカードに目を落とした。

【私が帰って来るまで、良い子にしているんだよ】
【帰ったら、昨夜の続きをしようね】
【君を愛する者より】

「愛する者…!」

昨夜の事を思い出すと、顔が赤くなる。
動転して、ランベールを拒んでしまったし、まるで子供の様な態度を取ってしまった。
あんなの、《ランベールのクリストフ》ではないだろう。
だが、ランベールは変に思わなかった様だ。

「強引だったから、負い目を感じていたのかな?」

「でも、『良い子に』だなんて、子供扱いしてる!」

「昨夜の続きとか…無理だから!」

僕は修道士だ!
ランベールは上手い事を言っていたけど、本来ならば、懺悔室に行き、
その後で反省室か、悪くすれば、見習いに降格になるか…
修道院から追い出されてしまう行為だ。

それを想像し、気を引き締めようとしたが、上手くはいかなかった。

「馬鹿馬鹿しい!僕はクリストフじゃないんだから!
続きをするのは、きっと、本物のクリストフだ…」

ランベールは一月帰らないと言っていた。
その間に、クリストフが帰って来たら…

「ランベール様とは、もう、会えないのか…」

浮き立っていた気持ちが、一気に落下した。

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