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しおりを挟む行為の後、ランベールは僕を抱え上げ、一階の大きな浴場へ連れて行ってくれた。
体を洗ってくれ、中に指を入れ、掻き出してくれた。
行為の後、理性を取り戻した僕は、酷く恥ずかしかった。
「自分で出来ますから…」
「うん、私がしたいだけだから、気にしなくていいよ。
それに、怪我してないか、見て上げるからね…」
「やっ!見なくていいです!!!」
僕はランベールを押し退け様としたが、やはり力では敵わなかった。
ランベールに見られながら、中のものを掻き出される、この状況に耐えられず、
僕は両手で顔を覆った。
「あ、また、感じちゃった?」
僕のものがゆるりと勃ち上がる…
「ふ、ふえええ…」
恥ずかしさのあまり、僕はとうとう泣いてしまった。
「泣かないで、虐めてごめんね?」
「ふええ…みないで、みっともないからぁ…」
「みっともなくないよ、反応してくれて、うれしいし、可愛い」
ランベールが頬や唇にキスを落とす。
高ぶっていた気持ちは落ち着いたものの、僕のものは中途半端になっていた。
「おいで」
ランベールは僕を抱き上げると、広い浴槽に入って行った。
石造りの広い浴槽には、然程熱くはない湯が張られていた。
ランベールは僕を後ろから抱える様にして座ると、僕のものを握った。
お湯の中だと、直接的では無い分、羞恥心も薄らいだ。
「あ…ん」
僕の背中に、ランベールが体を押し付けて来る。
空いている手は、僕の腹を撫で、そして膨らみのない胸を揉んだ。
「むね…ないから」
「でも、気持ちいいでしょ?」
「へんなかんじ…」
「乳首の方が好き?」
乳首を抓られ、「ひゃん!」と声を上げてしまった。
ランベールの指は、更に大胆に乳首を弄ってきて、僕を悶えさせた。
「ふ、ふぅ!も、やめてぇ…」
その手に手を重ねると、カプリと肩口に噛みつかれた。
「ひゃぁ!」
ぱしゃん!
驚きにお湯が跳ねる。
肩口を舐められ、そこから首筋を舐め、耳朶にまできた。
ゾクゾクとし、扱かれると、訳が分からなくなる___
僕は煽られるままに、それを吐き出していた。
「は…ぁ…」
「クリス、私のもしてくれる?」
ランベールが僕の体の向きを変え、向かい合わせにした。
ランベールの膝の上に乗った僕は、そこに勃ち上がっているものを目にし、赤くなった。
ああ、のぼせそうだ…
「僕が…するの?」
「嫌なら、自分でするけど、クリスにして欲しいな」
まるで邪気が無く、憎めない。
僕は『して貰ったし…』と、恐る恐る、それに触れた。
お湯の中だからか、変な感触だ。
「僕、下手だと思いますけど…」
「おまえが感じる事を、教えて、クリス」
ランベールの甘い囁きに勇気付けられ、僕は手を動かした。
「ふ…ん…」
鼻から抜ける、甘い声。
「兄さん、気持ちいい?」
「ん…いいよ、クリス…もっと、強くして」
ランベールの痴態に、僕は興奮していた。
「ん…」
僕はランベールに口付けていた。
ランベールの手が、僕の手に重なる。
激しく擦り上げると、ランベールはそれを吐き出し、熱い息を吐いた。
「クリス、愛してるよ」
ランベールが僕に口付け、僕たちは重なる様にキスをした。
◇◇◇
あの日から一週間近くが経つが、ランベールは毎夜、離宮を訪れていた。
行為をしない日もあったが、そんな日でも、一緒にベッドに入り、
二人で寄り添って眠った。
だが、ランベールは既婚者だ。
毎夜では、周囲が何と噂をするか分からない。
それを話すと、ランベールは眉を下げた。
「そうなんだけどね…でも、私はクリスと一緒に居たいし…」
普通の人ならば、それも良いだろう。
だが、ランベールは王太子なのだ。
「お立場をお考え下さい、王太子」
「はぁい、心配掛けてごめんね、クリス」
ランベールが僕の頬を撫でる。
もしかしたら、ランベールは、僕を心配して、来てくれていたのではないか?
僕が寂しがると思って…?
何故か、そんな風に感じた。
「兄さん、離れていても、僕は兄さんの事を想っているから…」
「うん、私も同じだよ、会えない時の分まで、覚えておいてね…」
ランベールが口付ける。
熱い口付けに、僕は頭まで蕩けそうになる。
だが、ランベールはあっさりと抱擁を解いた。
「クリス、今夜は止めておこうね、明日は大切な式典だから」
式典…
僕の気持ちは一気に沈んだ。
ゾスター部族とサンセット王国の紛争を無事終息させた上、
ゾスター部族を原因不明の病から救った___
その祝賀式典が開かれる。
指揮官のランベールは、その見事な働きで表彰され、勲章を貰う事が決まっている。
そして、僕…第三王子クリストフも、病を解明した功労者として、
表彰され、勲章を貰う事が決まってしまった。
「…僕も出席しないといけないでしょうか?」
僕が渋ると、ランベールは呆れた顔になった。
「まだ言ってるのかい?出席して、勲章を貰う事は変えられないよ。
おまえが勲章を辞退したら、ゾスター部族の者たち皆が、残念に思うよ。
彼等にとって、おまえは救世主なんだからね」
救世主…
僕がした事は、切っ掛けを作った事位なんだけど…
こんな事で勲章を貰うには気が引ける。
それに、この事がクリストフに知られたら、どれ程怒る事か…
クリストフが僕に望んでいたのは、クリストフの別邸で、
大人しく『病気療養』して過ごす事だっただろう。
それが、ランベールの離宮に囲われ、紛争の後方支援に行ったなど…
ああ、とても言えない…
それに、僕はクリストフの恋人であるランベールと、関係を持ってしまった。
影武者ではあるが、別人なのだから、不義になるのではないか…
そう思いながらも、僕は関係を止められないでいる。
いや、望んでさえいる。
クリストフが戻るまでの間だけだから…
クリストフが戻れば、《僕》は消える。
ランベールの記憶に、《僕》はいない。
《僕》との間にあった事は、全て、クリストフとの事になる。
全て承知して、決めた事だ。
それに、ランベールが真実を知れば、恨まれるのは《僕》だ。
愛した者から恨まれる位なら、存在しない方がいい。
僕の内だけの、思い出でいい___
「クリス、心配しなくても大丈夫だよ、私も一緒だからね」
ランベールが僕の手を取り、その笑みで勇気付けてくれる。
僕は、「はい、お願いします」と頷いた。
◇◇
表彰や勲章の授与は、城で行われた為、招待客以外は入る事も出来なかった。
だが、その後、勲章を受けた者たちは馬車で、騎士団が前後に就き、王都を周った。
僕が一番心配していた事は、王に会い勲章を受ける事だった。
王、つまりは、クリストフの父親だ。
隣には王妃、クリストフの母親も座っていた。
両親ならば、影武者と気付かれるのではないか…
気が気では無かったが、幸い、王と王妃にこれといった反応は見え無かった。
「クリス、乗って」
ランベールに促され、白塗りに金色の飾りの付いた豪華な馬車に乗った。
座席のクッションもふかふかとし、座り心地が驚く程良かった。
ランベールが隣に乗ると、馬車が動き出した。
「やっと、二人きりになれたね」
ランベールが僕の手を握る。
それだけで、緊張は解かれ、代わりに体が火照ってくる。
「兄さん、誰かに見られたら…」
「手を握るだけなら大丈夫だよ」
ランベールは僕の指に、自分の指を絡ませた。
ドキドキする。
「そんな可愛い表情してたら、バレちゃうかな?」
ランベールが「ふふ」と笑う。
だが、僕が指を解こうとすると、ギュっと握り込んだ。
「こうしていたい」
「兄さんは我儘です」
「ふふ、そうかもしれないね、いつも、私の我儘を聞いてくれてありがとう、クリス」
我儘で、それでいて、狡い。
そんな事を言われたら、僕は言いなりだ。
僕もギュっと握り返した。
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