16 / 32
16. 王宮の庭師
しおりを挟む
王宮の庭園の解放について、まずは職員の意見を聞こうと言うことで下見が行われた。
ラルフも参加した。
広さと植物の豊かさに驚いた。
ここでフローラがドレスを着て皆に祝福されるのかと想像してみた。
明るい開放的な中で清楚な花嫁は光の中に溶けてしまいそうに見えるんじゃないだろうか。よく似合う。
実際に歩いてみると岩の配置や計算された植木の配置に目がいく。
「この池は少し子供には危険かもしれませんね。」
それでは柵を、という声があるのでメモをしていく。
(せっかくの景観なのに金属の柵は味気ないだろうか。)
「入り組んでいて迷路のようになっているので、解放するのはこちらだけであちらの通路は塞いだほうが良いのでは」
そんなことを言いながら歩いていると、一人の老人が座り込んでいた。
「あの人は……?」
「ああ、長い間勤めてくださった庭師で、腕は良いのですが偏屈で。庭園の解放に反対しているんです。仕事は息子や弟子に引き継がれているのでご心配なく。」
「しかし、長くここを手入れされた方が反対というのは」
「陛下からのお言葉で解放が決まっているので、従っているようなものですが、内心は違っているんでしょうね。ああして庭を、眺めたり座り込んだりしています」
どうしても心に引っ掛かった。
フローラに相談すると、その庭師に会ってみたいという。
偏屈だと聞いたし、初めは共に挨拶に行った。
ベンというお爺さんは、フローラを見て不思議そうな顔をした。
「どうかしましたか」
「想像していた感じとは違っていたので少々驚いた。
王宮の庭で結婚式をしたいから庭を開けろなど、我儘そうで傲慢で強情な娘だろうと思っていた」
ラルフはそれで反対なのかと思った。もともと庭園解放の話が先で、結婚式はあとから便乗しただけだ。
説明しようとしたが、フローラがベンの隣に座り込んだ。
「ふふ、私は強情だと言われます。我儘はそれほど言ったことはないと思いますが、結婚式は我儘を言おうと思いまして」
「服が汚れるぞ?」
「構いません。わ、座って眺めるとまた違いますね」
ラルフもしゃがんでみる。
確かに少し起伏があり、目線の高さによって違って感じられた。
「変わり者だな、あんたたち」
「よく言われます」
「陛下の考えもわかるし、時代の変化かもしれん。わかってはいるんだが……変えたくないんだ、わしは。」
ぽつりぽつりとベンは話してくれた。
「王女殿下が、好きだと言ってくれたこのままの庭を。王族の方だけが見ると思うと誇りだった」
「だが、結婚式の前には剪定してやる。花も咲かせてやる」
「ありがとうございます」
二人でお礼を言った。
「よかったね、フローラ」
フローラは握りこぶしを口元に当てている。
考え事をしている。
また何か思い付いたんだろうか。
腰の辺りに手をおいて、ゆっくりと歩きながら馬車に戻った。
ラルフも参加した。
広さと植物の豊かさに驚いた。
ここでフローラがドレスを着て皆に祝福されるのかと想像してみた。
明るい開放的な中で清楚な花嫁は光の中に溶けてしまいそうに見えるんじゃないだろうか。よく似合う。
実際に歩いてみると岩の配置や計算された植木の配置に目がいく。
「この池は少し子供には危険かもしれませんね。」
それでは柵を、という声があるのでメモをしていく。
(せっかくの景観なのに金属の柵は味気ないだろうか。)
「入り組んでいて迷路のようになっているので、解放するのはこちらだけであちらの通路は塞いだほうが良いのでは」
そんなことを言いながら歩いていると、一人の老人が座り込んでいた。
「あの人は……?」
「ああ、長い間勤めてくださった庭師で、腕は良いのですが偏屈で。庭園の解放に反対しているんです。仕事は息子や弟子に引き継がれているのでご心配なく。」
「しかし、長くここを手入れされた方が反対というのは」
「陛下からのお言葉で解放が決まっているので、従っているようなものですが、内心は違っているんでしょうね。ああして庭を、眺めたり座り込んだりしています」
どうしても心に引っ掛かった。
フローラに相談すると、その庭師に会ってみたいという。
偏屈だと聞いたし、初めは共に挨拶に行った。
ベンというお爺さんは、フローラを見て不思議そうな顔をした。
「どうかしましたか」
「想像していた感じとは違っていたので少々驚いた。
王宮の庭で結婚式をしたいから庭を開けろなど、我儘そうで傲慢で強情な娘だろうと思っていた」
ラルフはそれで反対なのかと思った。もともと庭園解放の話が先で、結婚式はあとから便乗しただけだ。
説明しようとしたが、フローラがベンの隣に座り込んだ。
「ふふ、私は強情だと言われます。我儘はそれほど言ったことはないと思いますが、結婚式は我儘を言おうと思いまして」
「服が汚れるぞ?」
「構いません。わ、座って眺めるとまた違いますね」
ラルフもしゃがんでみる。
確かに少し起伏があり、目線の高さによって違って感じられた。
「変わり者だな、あんたたち」
「よく言われます」
「陛下の考えもわかるし、時代の変化かもしれん。わかってはいるんだが……変えたくないんだ、わしは。」
ぽつりぽつりとベンは話してくれた。
「王女殿下が、好きだと言ってくれたこのままの庭を。王族の方だけが見ると思うと誇りだった」
「だが、結婚式の前には剪定してやる。花も咲かせてやる」
「ありがとうございます」
二人でお礼を言った。
「よかったね、フローラ」
フローラは握りこぶしを口元に当てている。
考え事をしている。
また何か思い付いたんだろうか。
腰の辺りに手をおいて、ゆっくりと歩きながら馬車に戻った。
42
あなたにおすすめの小説
【完結】ぼくは悪役令嬢の弟 〜大好きな姉さんのために復讐するつもりが、いつの間にか姉さんのファンクラブができてるんだけどどういうこと?〜
水都 ミナト
恋愛
「ルイーゼ・ヴァンブルク!!今この時をもって、俺はお前との婚約を破棄する!!」
ヒューリヒ王立学園の進級パーティで第二王子に婚約破棄を突きつけられたルイーゼ。
彼女は周囲の好奇の目に晒されながらも毅然とした態度でその場を後にする。
人前で笑顔を見せないルイーゼは、氷のようだ、周囲を馬鹿にしているのだ、傲慢だと他の令嬢令息から蔑まれる存在であった。
そのため、婚約破棄されて当然だと、ルイーゼに同情する者は誰一人といなかった。
いや、唯一彼女を心配する者がいた。
それは彼女の弟であるアレン・ヴァンブルクである。
「ーーー姉さんを悲しませる奴は、僕が許さない」
本当は優しくて慈愛に満ちたルイーゼ。
そんなルイーゼが大好きなアレンは、彼女を傷つけた第二王子や取り巻き令嬢への報復を誓うのだが……
「〜〜〜〜っハァァ尊いっ!!!」
シスコンを拗らせているアレンが色々暗躍し、ルイーゼの身の回りの環境が変化していくお話。
★全14話★
※なろう様、カクヨム様でも投稿しています。
※正式名称:『ぼくは悪役令嬢の弟 〜大好きな姉さんのために、姉さんをいじめる令嬢を片っ端から落として復讐するつもりが、いつの間にか姉さんのファンクラブができてるんだけどどういうこと?〜』
姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚
mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。
王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。
数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ!
自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。
【完結】あなたの色に染める〜無色の私が聖女になるまで〜
白崎りか
恋愛
色なしのアリアには、従兄のギルベルトが全てだった。
「ギルベルト様は私の婚約者よ! 近づかないで。色なしのくせに!」
(お兄様の婚約者に嫌われてしまった。もう、お兄様には会えないの? 私はかわいそうな「妹」でしかないから)
ギルベルトと距離を置こうとすると、彼は「一緒に暮らそう」と言いだした。
「婚約者に愛情などない。大切なのは、アリアだけだ」
色なしは魔力がないはずなのに、アリアは魔法が使えることが分かった。
糸を染める魔法だ。染めた糸で刺繍したハンカチは、不思議な力を持っていた。
「こんな魔法は初めてだ」
薔薇の迷路で出会った王子は、アリアに手を差し伸べる。
「今のままでいいの? これは君にとって良い機会だよ」
アリアは魔法の力で聖女になる。
※小説家になろう様にも投稿しています。
盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない
当麻月菜
恋愛
生まれた時から雪花の紋章を持つノアは、王族と結婚しなければいけない運命だった。
だがしかし、攫われるようにお城の一室で向き合った王太子は、ノアに向けてこう言った。
「はっ、誰がこんな醜女を妻にするか」
こっちだって、初対面でいきなり自分を醜女呼ばわりする男なんて願い下げだ!!
───ということで、この茶番は終わりにな……らなかった。
「ならば、私がこのお嬢さんと結婚したいです」
そう言ってノアを求めたのは、盲目の為に王位継承権を剥奪されたもう一人の王子様だった。
ただ、この王子の見た目の美しさと薄幸さと善人キャラに騙されてはいけない。
彼は相当な策士で、ノアに無自覚ながらぞっこん惚れていた。
一目惚れした少女を絶対に逃さないと決めた盲目王子と、キノコをこよなく愛する魔力ゼロ少女の恋の攻防戦。
※但し、他人から見たら無自覚にイチャイチャしているだけ。
【完結】政略結婚はお断り致します!
かまり
恋愛
公爵令嬢アイリスは、悪い噂が立つ4歳年上のカイル王子との婚約が嫌で逃げ出し、森の奥の小さな山小屋でひっそりと一人暮らしを始めて1年が経っていた。
ある日、そこに見知らぬ男性が傷を追ってやってくる。
その男性は何かよっぽどのことがあったのか記憶を無くしていた…
帰るところもわからないその男性と、1人暮らしが寂しかったアイリスは、その山小屋で共同生活を始め、急速に2人の距離は近づいていく。
一方、幼い頃にアイリスと交わした結婚の約束を胸に抱えたまま、長い間出征に出ることになったカイル王子は、帰ったら結婚しようと思っていたのに、
戦争から戻って婚約の話が決まる直前に、そんな約束をすっかり忘れたアイリスが婚約を嫌がって逃げてしまったと知らされる。
しかし、王子には嫌われている原因となっている噂の誤解を解いて気持ちを伝えられない理由があった。
山小屋の彼とアイリスはどうなるのか…
カイル王子はアイリスの誤解を解いて結婚できるのか…
アイリスは、本当に心から好きだと思える人と結婚することができるのか…
『公爵令嬢』と『王子』が、それぞれ背負わされた宿命から抗い、幸せを勝ち取っていくサクセスラブストーリー。
嫌われ黒領主の旦那様~侯爵家の三男に一途に愛されていました~
めもぐあい
恋愛
イスティリア王国では忌み嫌われる黒髪黒目を持ったクローディアは、ハイド伯爵領の領主だった父が亡くなってから叔父一家に虐げられ生きてきた。
成人間近のある日、突然叔父夫妻が逮捕されたことで、なんとかハイド伯爵となったクローディア。
だが、今度は家令が横領していたことを知る。証拠を押さえ追及すると、逆上した家令はクローディアに襲いかかった。
そこに、天使の様な美しい男が現れ、クローディアは助けられる。
ユージーンと名乗った男は、そのまま伯爵家で雇ってほしいと願い出るが――
家族から冷遇されていた過去を持つ家政ギルドの令嬢は、旦那様に人のぬくもりを教えたい~自分に自信のない旦那様は、とても素敵な男性でした~
チカフジ ユキ
恋愛
叔父から使用人のように扱われ、冷遇されていた子爵令嬢シルヴィアは、十五歳の頃家政ギルドのギルド長オリヴィアに助けられる。
そして家政ギルドで様々な事を教えてもらい、二年半で大きく成長した。
ある日、オリヴィアから破格の料金が提示してある依頼書を渡される。
なにやら裏がありそうな値段設定だったが、半年後の成人を迎えるまでにできるだけお金をためたかったシルヴィアは、その依頼を受けることに。
やってきた屋敷は気持ちが憂鬱になるような雰囲気の、古い建物。
シルヴィアが扉をノックすると、出てきたのは長い前髪で目が隠れた、横にも縦にも大きい貴族男性。
彼は肩や背を丸め全身で自分に自信が無いと語っている、引きこもり男性だった。
その姿をみて、自信がなくいつ叱られるかビクビクしていた過去を思い出したシルヴィアは、自分自身と重ねてしまった。
家政ギルドのギルド員として、余計なことは詮索しない、そう思っても気になってしまう。
そんなある日、ある人物から叱責され、酷く傷ついていた雇い主の旦那様に、シルヴィアは言った。
わたしはあなたの側にいます、と。
このお話はお互いの強さや弱さを知りながら、ちょっとずつ立ち直っていく旦那様と、シルヴィアの恋の話。
*** ***
※この話には第五章に少しだけ「ざまぁ」展開が入りますが、味付け程度です。
※設定などいろいろとご都合主義です。
※小説家になろう様にも掲載しています。
だってわたくし、悪女ですもの
さくたろう
恋愛
妹に毒を盛ったとして王子との婚約を破棄された令嬢メイベルは、あっさりとその罪を認め、罰として城を追放、おまけにこれ以上罪を犯さないように叔父の使用人である平民ウィリアムと結婚させられてしまった。
しかしメイベルは少しも落ち込んでいなかった。敵対視してくる妹も、婚約破棄後の傷心に言い寄ってくる男も華麗に躱しながら、のびやかに幸せを掴み取っていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる