【完結】仕事のための結婚だと聞きましたが?~貧乏令嬢は次期宰相候補に求められる

仙桜可律

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22. 王都からの客

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バーリヤ侯爵夫妻が領地にやって来た。フローラは出迎える。

「何か困ってることはないかしら?フローラさん。」

「皆様よくして下さるので、すっかり寛いでしまっています。こちらに来るまでは、色々と覚えないといけないと張り切っていたのですが」

「まあ。いいのよそんなの。あなたが心苦しくなくこちらにも馴染んでくれると嬉しいわ。侍女たちも令嬢のドレスなんて久しぶりだから腕が鳴ったのではないかしら。」

にこにこと並ぶ使用人の笑顔をみて、夫妻も喜んでいる。
もう一人、馬車から降りたのはアンリさん。

「お久しぶり。早速で悪いけれどフローラ様、少しふっくらされました?採寸してもいいですか?」

ジャッと巻尺を構える。

「だってこちらの空気が美味しいので、お料理も美味しくて、果物も美味しくて」

「そのぶん動いてくださいね。肌艶は申し分ないです。」

少し休んでから染色の工房を見に行くことになった。
侯爵は執事と話があるそうで、ローズ様とフローラはホールに飾られた絵を眺めたりした。お茶を飲みながらラルフ様の子供の頃の話を聞かせてもらった。

染色工房でも、もちろん歓迎された。ウェディングドレスを作るという初めてのことに張り切っている。しかもそれが敬愛するラルフ様の花嫁だなんて。

染色の色見本を花の形にしてくれていたり、説明も分かりやすく工夫するなどフローラに特産の布を気に入ってもらおうとしていた。

職人はフローラに気に入ってもらうためにあれこれ考えていたが、フローラを一目みて吹き飛んだ。
年配の職人が涙ぐんでよろこんでいる。
フローラの着ているワンピースが、この工房で染めた布だったからだ。
そのグラデーションの出方をきちんと理解した裁断をして仕立ててあり、歩く度に色が移り変わるように見えたからだ。
フローラが気に入っているのだとわかった。

「素晴らしいデザインですな」

「これは、こちらのアンリさんが作ってくださいました。」

「なんと」

「布が軽やかでデザインに困ったわ。この繊細な染めじゃないと」

アンリさんがフローラの服を指差して言った。

「皆さん」

フローラが息を吸った。

「よろしくお願いします。」

職人たちの地響きのような声があがった。

「任せてください!」

その様子を聞いたローズ様は、ラルフに手紙を送った。
領地の者もフローラ嬢を歓迎している、と。
しばらく迎えに来なくてもこちらに順応しています。

「いいのですか?」
執事が見せられた手紙の内容に少し戸惑う。

「いいのよ。こう書いた方が気になって早く迎えに来るはずよ。いつまでも仕事仕事で、フローラさんを最優先してもらわないと困るわ」


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