人質王女の婚約者生活(仮)〜「君を愛することはない」と言われたのでひとときの自由を満喫していたら、皇太子殿下との秘密ができました〜

清川和泉

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第2部 自由

イリスの本心

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「おそらく、ブルーノ様はこれであなた様に危害を加えるようなことはないと思いますわ」
「それはどういった意味でしょうか」

 イリスは扇を口元にあてた。

「ブルーノ様は好戦的な方ですが、それはむしろあえて行っているのです。あなた方に挑発的な態度を取ってどのような態度を示すのか、いわば試しておられるのですね」
「……どうして、そのようなことをなさるのでしょうか」
「皇族たるもの、自分の意志を持たなければならないと常に仰っておりますわ。ただブルーノ様の性根が良い方かどうかは別の話ですが。自分の意志をキチンと言えたあなた様はさしずめ合格、といったところでしょうか」

 イリスは瞳を細める。
 
「これは内緒にしていただきたいのですが」

 クレアが頷くと話を続けた。

「わたくしは案外、ブルーノ様を気に入っておりますのよ。最初は大変な方と婚約を結ぶことになってしまった、どうして最初の婚約話が通らなかったのかと思いましたが」

 それはアーサーのことだと思うと、胸がチクリと痛んだ。

「ただ、ブルーノ様は大変に偏った考えをお持ちの方なので、先ほどの発言も半分は本心でしょう。ですからわたくしが教育を……助言をと思いまして、就任式の夜、皇太子殿下にブルーノ様の情報を少々お伝えをしておりましたの」

 瞬間、クレアはイリスの瞳に視線を合わせた。

「左様でしたか」

 イリスは小さく頷く。

「とにかく、独特な偏見で凝り固まった方なものですから。あのまま皇太子殿下に情報を差し上げていなかったら、今ごろ第二宮には多数の刺客が押し寄せていたと思いますわ」

 イリスは笑顔で言ってのけるが、その実全く笑えない内容だった。
 心底恐ろしさが込み上げてくる。

「ただ、あの時はそれだけではなく、実はあなた様のことで一つ依頼を受けていたのですよ」

 思わぬ言葉にクレアは目を見開いた。

「わたくしのことですか?」
「はい。実は」

 イリスは、再びクレアの耳元に囁いた。

「あなた様をあの日の夜、園庭に呼び出して欲しいと依頼を受けていたのですわ。ただ、人払いの対策は立てていたのですがクレア様は予想外のタイミングであの場所に来られたものですから、あの時は『席を外して欲しい』とお伝えしたのです」

 言葉の意味を呑み込んだ瞬間、イリスはクレアから離れてカーテシーをした。

「ではクレア様、本日はお越しくださいまして誠にありがとうございました。後日改めて謝罪をさせていただきますわ」

 イリスの綺麗な仕草を見ると、会話は終わったのだと暗に示されているように感じた。

「こちらこそ、本日はお招きいただきましてありがとうございました。それではまたお会いしましょう」
「ええ、必ず。……クレア様とは個人的に親交を深めたいと思っておりますのよ」

 そして、別れのカーテシーをし合い解散となった。
 様々なことが判明し混乱しつつも、それでも真実を知ることができたので胸はスッとしたように感じる。

 そう思いながら、クレアは馬車に乗り込んだのだった。
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