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第3部 幸せのために
万能魔法薬
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翌日。
早速、第二宮の空き部屋を利用した研究室で「万能魔法薬」の試作品作りが行われた。
製作には宮廷魔法使いのリゼルを呼び寄せ統括してもらった。なお彼は今日は本業は非番であるし、アーサーの隠密であるクロが秘密裏に連れて来たので皇帝に情報は漏れていないはずだ。
「こちらの万能魔法薬のレシピですが、……綺麗な水に月見草? これはまた難解な、というよりこれではほぼ製作は不可能と言わざるを得ないでしょう」
緑色髪をたなびかせ、まだ少年の面影を残したリゼルは「うーん」と呟いた。
「こちらのレシピは、通常のものとは違うのですか?」
これまでクレアは、魔法道具のレシピはアンナの実家である魔法道具店のレシピを見たのみであるので、他と比較することができなかった。
「はい。失礼ながらこちらのノートのレシピは定型の様式を取っておりません。通常であれば魔法式を書き込み、導き出された数値を元に然るべき手順と道具を用いて製作します。このように、ただ原材料を魔力混入装置にかけて製作するなど聞いたこともありません」
目を白黒させるリゼルに、クレアとアーサーは互いに顔を見合わせた。
「そのレシピは、代々伝わるものだと聞きましたが……」
「代々伝わる? 本来レシピはその時代の道具や魔力の質にに合わせて変えていくものですので、何代も以前のレシピは破棄されるものなのですがね」
リゼルは自分のノートを二人に見せ、少し間を置いた後に呟いた。
「確か、何世紀も前には我が国に特別な方がおられて、その方専用の魔法道具のレシピが何処かに伝わっていると聞いてはいますが」
「特別な方?」
特別という言葉がとても気にかかった。
「ええ。なんでもその方は、どんなものでも自由に創造することができたようです。ですが何か理由があり、とある魔法道具屋に頼んでご自分の力を最小限に使いつつ魔法道具を生産したとか。まあ、ほとんど伝説のようなものですが」
その話は不思議と自然に飲み込むことができた。
むしろこれまでの疑問が解決されたように思う。
リゼルが王宮に戻り室内にアーサーと二人になると、先ほどの件で話合うことにした。
「特別な方とは、つまり創造の力を使用できる女性のことなのでしょうか」
「おそらくはそうだろうな。確かに一世紀ほど前に我が国に短期間だがそういった女性が存在したと記録に残っている」
「左様ですか。ではその方はその後どうなったのでしょうか」
「残念ながらその先の所在の記録は残っていないのだ」
「左様でしたか」
それでは推測するしかないようだが、ふとあることが思い当たった。
「……おそらくアンナの実家の魔法道具店が、伝説上の魔法道具店ですよね」
「ああ、そう推測するのは妥当だろうな」
「ならば、その伝手で魔法使いを多く輩出しているバーラ侯爵家と繋がりがあったのでしょうか」
クレアの言葉に、アーサーは少し時間を置いてから頷いた。
「確かに、そう考えるのが自然だよな」
以前にアンナは伝手で皇女宮の下女になれたと言っていたし、特にリリーとは懇意にしているようだ。古来からの家同士の親交があるのだろう。
「折を見て聞いてみます」
「ああ、頼む」
それから二人は室内に常備された魔力混入機に綺麗な水と月見草をかけた。すると一分も経たないうちにそれは完成したのだった。
「これが万能魔法薬なのでしょうか」
「ああ。すぐに効能を確認しよう」
完成した「万能魔法薬」はくれぐれも皇帝に発見されないように隠蔽魔法が使用できる魔法道具に魔法薬を使用して出元が不明になるように操作した。
また、安全性は確認した上で密かにクロを使いスラムの感染者に薬を使用してもらったところ、発熱や悪寒が引き病状が落ち着いたとのことだ。
「やはり薬は完成していたのでしょうか」
「ああ。まだそうと判断をするには情報が不足していると思うが、トスカの症状は一刻を争う状態らしい」
「……! アーサー様、どうかこの薬をトスカ様に届けて欲しいのです」
「ああ、分かった。こちらの正体を悟られないよう最大限に配慮しつつ、トスカに投薬するように手配する」
幸い塔の見張りに付いているのは、アーサーが属国で暮らしていた時に派遣されていた護衛騎士であったので、彼を通じてトスカを看病している侍女に薬を持たせるのは容易であった。
そして万能魔法薬はトスカに無事に投与され、二日後に彼女の容体は安定したと報告が入ったのである。
早速、第二宮の空き部屋を利用した研究室で「万能魔法薬」の試作品作りが行われた。
製作には宮廷魔法使いのリゼルを呼び寄せ統括してもらった。なお彼は今日は本業は非番であるし、アーサーの隠密であるクロが秘密裏に連れて来たので皇帝に情報は漏れていないはずだ。
「こちらの万能魔法薬のレシピですが、……綺麗な水に月見草? これはまた難解な、というよりこれではほぼ製作は不可能と言わざるを得ないでしょう」
緑色髪をたなびかせ、まだ少年の面影を残したリゼルは「うーん」と呟いた。
「こちらのレシピは、通常のものとは違うのですか?」
これまでクレアは、魔法道具のレシピはアンナの実家である魔法道具店のレシピを見たのみであるので、他と比較することができなかった。
「はい。失礼ながらこちらのノートのレシピは定型の様式を取っておりません。通常であれば魔法式を書き込み、導き出された数値を元に然るべき手順と道具を用いて製作します。このように、ただ原材料を魔力混入装置にかけて製作するなど聞いたこともありません」
目を白黒させるリゼルに、クレアとアーサーは互いに顔を見合わせた。
「そのレシピは、代々伝わるものだと聞きましたが……」
「代々伝わる? 本来レシピはその時代の道具や魔力の質にに合わせて変えていくものですので、何代も以前のレシピは破棄されるものなのですがね」
リゼルは自分のノートを二人に見せ、少し間を置いた後に呟いた。
「確か、何世紀も前には我が国に特別な方がおられて、その方専用の魔法道具のレシピが何処かに伝わっていると聞いてはいますが」
「特別な方?」
特別という言葉がとても気にかかった。
「ええ。なんでもその方は、どんなものでも自由に創造することができたようです。ですが何か理由があり、とある魔法道具屋に頼んでご自分の力を最小限に使いつつ魔法道具を生産したとか。まあ、ほとんど伝説のようなものですが」
その話は不思議と自然に飲み込むことができた。
むしろこれまでの疑問が解決されたように思う。
リゼルが王宮に戻り室内にアーサーと二人になると、先ほどの件で話合うことにした。
「特別な方とは、つまり創造の力を使用できる女性のことなのでしょうか」
「おそらくはそうだろうな。確かに一世紀ほど前に我が国に短期間だがそういった女性が存在したと記録に残っている」
「左様ですか。ではその方はその後どうなったのでしょうか」
「残念ながらその先の所在の記録は残っていないのだ」
「左様でしたか」
それでは推測するしかないようだが、ふとあることが思い当たった。
「……おそらくアンナの実家の魔法道具店が、伝説上の魔法道具店ですよね」
「ああ、そう推測するのは妥当だろうな」
「ならば、その伝手で魔法使いを多く輩出しているバーラ侯爵家と繋がりがあったのでしょうか」
クレアの言葉に、アーサーは少し時間を置いてから頷いた。
「確かに、そう考えるのが自然だよな」
以前にアンナは伝手で皇女宮の下女になれたと言っていたし、特にリリーとは懇意にしているようだ。古来からの家同士の親交があるのだろう。
「折を見て聞いてみます」
「ああ、頼む」
それから二人は室内に常備された魔力混入機に綺麗な水と月見草をかけた。すると一分も経たないうちにそれは完成したのだった。
「これが万能魔法薬なのでしょうか」
「ああ。すぐに効能を確認しよう」
完成した「万能魔法薬」はくれぐれも皇帝に発見されないように隠蔽魔法が使用できる魔法道具に魔法薬を使用して出元が不明になるように操作した。
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