猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら

文字の大きさ
9 / 73
異世界と猫

第9話 助っ人(猫)さん、キレイなモノを拾ってくる

しおりを挟む
 考えさせてくださいと言ったものの、輝きを保ち続けられる物なんてそう簡単に見つかるものじゃない。

 ましてアイゼルクラスの永続的な明るさを参考にされたら、生半可なものじゃ――などと考えを巡らせていたら何も始まらないよな。

「え~と、サシャさん。その輝くモノはどれくらいお求めなのですか?」
「……ん? あぁ、そうだね。沢山あればあるほど嬉しいかもしれないが、大事なのは気持ちが込められているかどうか……うん、そういうモノなら贅沢は言わないさ」

 さらに条件が厳しくなったような?

 量よりも質って意味だろうけど、結局はそこにいきつく。よりいい品物を手にしたいと思うのは当然だろうが、初めてのお客様で早くもそれを求められるとは。

 しかし、俺も商人として中途半端な覚悟で挑むわけにはいかない。魔導師ルーナが課した試練に挑みながらこの世界で生きていかなければならないのだから。

 それと、もっとも重要なのはコムギさんと共に旅をし続けることだ。

「分かりました。それでは、私は今からお求めの商品を確保しに行ってまいります! サシャさんはこの場でお待ちいただくか、拠点マーケットを歩き回っていただいても構いません」

 こうなれば、魔導幌馬車の亜空間倉庫を思いきり活用させてもらう。

「あ、あぁ……」
「それでは、私は商品を調達しに行ってまいります!」

 俺はサシャさんに頭を下げ、魔導幌馬車の中の亜空間倉庫に入って探しに行くことに。

「――え? ちょっとあんた! 幌馬車に入っていってどうするん……い、いない!? 荷台も空っぽ……一体どこに行ったっていうのさ」

 ルーナさんに初めて使い方を聞いた時はまだ中に進むことは叶わなかった。いくら恩恵スキルがあっても、目的がはっきりしていない状態ではスキル不十分とされて行けなかったからだ。

 おおっ、先の方に行けるようになってる!

 少し手を伸ばしてみると全然別の空間に通じていて、まるで水面の揺らぎのように空間が揺れたかと思えば、目に映る光景はどこかの工場の倉庫のように見えている。

 ルーナさんによると、亜空間はあくまで想像上の空間。俺が行きたいと願う倉庫も想像した場所に限られるという。

 ……とはいえ、希望すれば過去世界にも行けるし、そうじゃない場所にも行けるという話だった。

 亜空間倉庫は自動化された無人倉庫かつ無人の店舗のようなもので、わざわざ人を介して交渉する必要はなく、物をいつでも取り出せたり送ってもらうことも可能だ。

 ルーナさんは初めだけは倉庫に入るような感覚で商品を探すことから始められては? と言っていた。

 慣れてきたら自分が使いやすいようにお店のようにしてもいいし、単なる倉庫の収納棚という形にしてもいいという。

 ……えっと、サシャさんが求めている物に近い商品は多分――。

「むむぅ……。参ったね、まさか人間が消えてしまうなんて。かと言って、商人さんの幌馬車に勝手に入るわけにもいかないだろうし、他の者を呼んだとてどうすることも……」
「ニャウゥ~?」

 トージが亜空間倉庫に入っている頃、外に取り残されたサシャはどういう状況なのか理解出来ずその場に留まっていた。

 そこに現れたのは一匹の猫で、しかもサシャに話しかけるかのようにすり寄っていた。

「……ん? 君はトージの猫さんかな?」
「ウニャゥ……ウニャウニャ」
「うんうん、初めましてだねコムギさん。あたしはサシャさ! 早速で悪いけど、コムギさんにお願いしたいんだが、トージを呼んできてくれないか? 幌馬車に入ったっきり出てこないんだ。ここで待ってていいものかどうか分からないのでね」

 そう言うと、サシャは困惑顔で幌馬車を眺めてみせる。

「ニャウ!」
「うん、頼むよ」

 サシャの言葉を理解した猫は、幌馬車に飛び乗ってそのまま中へと進んで行く。

「うう~ん……どうしても届かないな。目に見える全ての空間を歩けるわけじゃないのか。奥に入っているアレが欲しいのに……」

 目に見える倉庫空間に足を踏み入れた俺は、思い当たる物に手を伸ばし探していた。だが、スキル的なものが不足しているのか奥にある棚から箱を落としてしまっていた。

 しかも落として散らばった物に手が届かず、欲しい物を拾うことすら出来ずにいる。

 う~ん、一度外に戻ってみるか?

 亜空間倉庫の具体的な使い方は訊いていなかったが、何となく通販倉庫の注文方法のようなイメージを浮かべていた。それだけにこの手こずりは想定外だった。

 まだ稼ぎも無ければスキルも成長してないから仕方がないかもだけど。

「ウニャ~!」
「……あれっ? コムギさんの声?」

 アイゼルクラスに着いてすぐに別行動をとっていたはずのコムギさんの声が、どこからともなく聞こえてくる。

 もしかして見かねて探しにきてくれたんだろうか……などと思っていたら、コムギさんは俺がいるところを通り過ぎ、奥に散らばっている物を口に入れて俺のところに戻ってくる。
 
「ニャッ!」
「あ、ありがとう、コムギさん」

 コムギさんの口に含まれていたのは丸くて小さいビー玉で、色がついたものは角度によっては光って見える。

 俺が思い浮かべていたイメージは当初ガラス玉の方だった。しかし、奥に見えたビー玉の方が希望に近いのではないかと考え直した。

 考え直して手を伸ばした結果が散らばしだったが、俺の優柔不断で空間が歪んでしまい、奥に行けなかった可能性が高い。

「ビー玉。俺が欲しいのはビー玉!」

 俺の決定が固まったのが合図だったかのように歪んだ空間が正常に戻り、倉庫の端の方まで進めるようになった。

 この間に俺は箱からこぼしてしまったビー玉をまとめて箱に入れ、それをそのまま持ち運んでこの場を後にした。

「ふぅっ、お待たせいたしました!」

 魔導幌馬車から外に出ると、石の上に座っていたサシャさんが目を丸くしながら俺の突然の姿に驚いていた。

「……むぅ。まるで魔法だね。だけど商人の秘密を暴く趣味はないし、聞かないでおくよ」
「あ、ありがとうございます」
「礼ならコムギさんに言っときなよ! あんたを心配して幌馬車に入っていったんだからね」
「えっ? コムギさんが?」

 近くを探すも、さっきまで一緒にいたはずのコムギさんがまたしてもどこかにいなくなっていた。

「フフッ、あの子は照れ屋さんだろうね。それでいて中々厳しそうな子だね」
「そ、そうですね」

 もしかしたら、あくまで初回だけのサービスで助っ人してくれたのかもしれないな。

 でも、おかげで品物が手に入った。

 これがサシャさんが求めるものであればきっと上手くいくはず。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

元・神獣の世話係 ~神獣さえいればいいと解雇されたけど、心優しいもふもふ神獣は私についてくるようです!~

草乃葉オウル ◆ 書籍発売中
ファンタジー
黒き狼の神獣ガルーと契約を交わし、魔人との戦争を勝利に導いた勇者が天寿をまっとうした。 勇者の養女セフィラは悲しみに暮れつつも、婚約者である王国の王子と幸せに生きていくことを誓う。 だが、王子にとってセフィラは勇者に取り入るための道具でしかなかった。 勇者亡き今、王子はセフィラとの婚約を破棄し、新たな神獣の契約者となって力による国民の支配を目論む。 しかし、ガルーと契約を交わしていたのは最初から勇者ではなくセフィラだったのだ! 真実を知って今さら媚びてくる王子に別れを告げ、セフィラはガルーの背に乗ってお城を飛び出す。 これは少女と世話焼き神獣の癒しとグルメに満ちた気ままな旅の物語!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

処理中です...