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魔導世界
第15話 魔導師アイゼルクラスの意外な取引
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「いや~そうか、君がトージくんか! 想像したとおりだなぁ~」
魔導幌馬車改め魔導四輪車に姿を変えたあと、そこから拠点アイゼルクラスへはすぐに戻ることが出来た。
着いて早々に俺を出迎えたのは、両耳にピアスをぶら下げつつ全身黒衣に身を包み無精ひげを生やした魔導師アイゼルクラスと名乗る男だった。
どう見ても異質に見える男は、周りの目を気にせずに俺を宿屋へと案内してくれた。宿屋は特別変わったところはなく、旅の人の姿が多く見られた。
そのうちの一室、ベッドが一つと木製の机と椅子だけが置かれた部屋に通された俺は、ベッドに腰掛ける男と向き合っている。
いつもどこかにいなくなるコムギさんも、相手が相手なせいかちゃんと近くに座っていて大人しい。
「ど、どうも。初めまして、麦山湯治と申します」
「ハッハッハー! まぁまぁ、楽にしておくれよ。僕もその方が気楽に出来るんだからさ」
「そういうことなら……」
随分とラフな感じだが、おそらく俺よりも年上。しかしそう思わせない言動と余裕を感じる。
もっとも気になるのは男の傍らに置かれたタブレットらしきものだ。なぜ向こうの物がこっちにあるのか。
「よし。それじゃあ改めよう! 僕は魔導師アイゼルクラス! この拠点を作った魔導師さ! そして君はルーナに選ばれたトージ。いやぁ~会いたかったよ」
拠点を作ったアイゼルクラス本人に会えるとは。ルーナさんの話では放置してそこにいない魔導師が多いと聞いていただけに意外すぎた。
「ニャー?」
「おっ! その子がルーナの使い魔の猫か。美人さんだなぁ。今はトージに雇われているわけだね! なかなか優秀そうだ」
言いながら、男はコムギさんの頭を優しく撫でている。
「ウニャニャ」
あれ、コムギさんの言葉がただの猫の鳴き声に聞こえる。
「彼女はコムギさんと言いまして、言葉も話せるんですが……」
「ああ、君とルーナにはそうだろうね。僕は使い魔の言葉は分からないんだ。契約もしてないからそのせいでもあると思うよ」
……なるほど、魔導師だからって分かるわけじゃないんだ。
「それでその、俺に話があるというのは?」
確か亜空間倉庫についてはアイゼルクラスに――という話だった。
「おっと、そうだった。トージ……君のスキル『亜空間倉庫』を『ネット倉庫』に変えてみないか?」
「へ?」
「便利だよねぇ~アレ。僕もお世話になったものだよ~」
まるで日本というか、向こうの世界にいたような口ぶりだ。ルーナさんもコムギさんが猫カフェで働いていた時に来ていたらしいが。
まさかルーナさん同様にこの人も?
「ど、どういうことですか? なぜ向こうの世界のことが……」
「僕も少しの間、日本に行ったからだよ。僕の場合は電気街に興味があったからなんだけどね。あれ、ルーナから聞いてない?」
……驚いたな。すでに異世界側の人間、それも魔導師たちが日本に来ていたとは。
「もしかして、他の魔導師も……?」
「そうなんだよ! ルーナを入れて五人パーティーで行ったんだ。楽しかったなぁ。ルーナは使い魔の猫……その子を探すのが目的だったけどね」
「他にも三人の魔導師が日本に……」
「まぁそれはどうでも良くて、どうだい? ネット倉庫!」
「あれば便利になるのは間違いありませんが、俺のスキルをどうやって変えてしかもネット倉庫に?」
ルーナさんによって幌馬車から馴染みのある軽バンというか、魔導四輪車になったのもあるが、向こうのものや技術をどうやって使えるように出来るというのか。
「そこで取引だ。君、向こうの物をまだ持っているかい?」
向こうの物といえば、そういえばまだしまっていたものがあったな。
「腕時計なら……」
「お、時を刻むものだね! いいね、まさにぴったり! それを僕にくれると助かるんだが、どうだい?」
猫王国の老商人にも渡さずに持っていたが、とうとう手放すことになるのか。
「じゃあ、それと引き換えに世界を繋げてみせよう。ついでに魔導四輪車もスキルアップに合わせた改造を施すとしよう! 終わったら呼ぶから、マーケットにでも行っててくれるかい?」
「えっと、魔導四輪車とスキルがレベルアップをするって意味ですか?」
「まぁ、待ちたまえ! さぁ、そうと分かったら外に出た出た!」
ネット倉庫にするだとか魔導四輪車をさらにレベルアップするだとか、魔導師アイゼルクラスは妙に張り切っていた。
そんな人に腕時計を渡して本当に大丈夫だろうか?
とはいえ、強制的に宿から出されてしまったので、時間つぶしと散策を兼ねて拠点マーケットを見て回ることにする。
「変わった人だったニャ~」
「コムギさんはあの人の言ってることが分かったの?」
「もちろんニャ。向こうは分からなくても私は分かるニャ! ニャフフ、だからカフェでのことも全て理解していたのニャ」
「あ、あ~……」
やっぱり人の言葉を理解出来ていたんだ。何だか今になって恥ずかしくなってきた。
「と、とりあえずマーケットを見て回ろうか」
「ウニャ!」
果たして腕時計と引き換えにどこまで移動販売へのお膳立てが整うのか。
しかし、魔導世界に来られたおかげで日本でやっていた時よりも快適な移動販売が始められそうだ。
魔導幌馬車改め魔導四輪車に姿を変えたあと、そこから拠点アイゼルクラスへはすぐに戻ることが出来た。
着いて早々に俺を出迎えたのは、両耳にピアスをぶら下げつつ全身黒衣に身を包み無精ひげを生やした魔導師アイゼルクラスと名乗る男だった。
どう見ても異質に見える男は、周りの目を気にせずに俺を宿屋へと案内してくれた。宿屋は特別変わったところはなく、旅の人の姿が多く見られた。
そのうちの一室、ベッドが一つと木製の机と椅子だけが置かれた部屋に通された俺は、ベッドに腰掛ける男と向き合っている。
いつもどこかにいなくなるコムギさんも、相手が相手なせいかちゃんと近くに座っていて大人しい。
「ど、どうも。初めまして、麦山湯治と申します」
「ハッハッハー! まぁまぁ、楽にしておくれよ。僕もその方が気楽に出来るんだからさ」
「そういうことなら……」
随分とラフな感じだが、おそらく俺よりも年上。しかしそう思わせない言動と余裕を感じる。
もっとも気になるのは男の傍らに置かれたタブレットらしきものだ。なぜ向こうの物がこっちにあるのか。
「よし。それじゃあ改めよう! 僕は魔導師アイゼルクラス! この拠点を作った魔導師さ! そして君はルーナに選ばれたトージ。いやぁ~会いたかったよ」
拠点を作ったアイゼルクラス本人に会えるとは。ルーナさんの話では放置してそこにいない魔導師が多いと聞いていただけに意外すぎた。
「ニャー?」
「おっ! その子がルーナの使い魔の猫か。美人さんだなぁ。今はトージに雇われているわけだね! なかなか優秀そうだ」
言いながら、男はコムギさんの頭を優しく撫でている。
「ウニャニャ」
あれ、コムギさんの言葉がただの猫の鳴き声に聞こえる。
「彼女はコムギさんと言いまして、言葉も話せるんですが……」
「ああ、君とルーナにはそうだろうね。僕は使い魔の言葉は分からないんだ。契約もしてないからそのせいでもあると思うよ」
……なるほど、魔導師だからって分かるわけじゃないんだ。
「それでその、俺に話があるというのは?」
確か亜空間倉庫についてはアイゼルクラスに――という話だった。
「おっと、そうだった。トージ……君のスキル『亜空間倉庫』を『ネット倉庫』に変えてみないか?」
「へ?」
「便利だよねぇ~アレ。僕もお世話になったものだよ~」
まるで日本というか、向こうの世界にいたような口ぶりだ。ルーナさんもコムギさんが猫カフェで働いていた時に来ていたらしいが。
まさかルーナさん同様にこの人も?
「ど、どういうことですか? なぜ向こうの世界のことが……」
「僕も少しの間、日本に行ったからだよ。僕の場合は電気街に興味があったからなんだけどね。あれ、ルーナから聞いてない?」
……驚いたな。すでに異世界側の人間、それも魔導師たちが日本に来ていたとは。
「もしかして、他の魔導師も……?」
「そうなんだよ! ルーナを入れて五人パーティーで行ったんだ。楽しかったなぁ。ルーナは使い魔の猫……その子を探すのが目的だったけどね」
「他にも三人の魔導師が日本に……」
「まぁそれはどうでも良くて、どうだい? ネット倉庫!」
「あれば便利になるのは間違いありませんが、俺のスキルをどうやって変えてしかもネット倉庫に?」
ルーナさんによって幌馬車から馴染みのある軽バンというか、魔導四輪車になったのもあるが、向こうのものや技術をどうやって使えるように出来るというのか。
「そこで取引だ。君、向こうの物をまだ持っているかい?」
向こうの物といえば、そういえばまだしまっていたものがあったな。
「腕時計なら……」
「お、時を刻むものだね! いいね、まさにぴったり! それを僕にくれると助かるんだが、どうだい?」
猫王国の老商人にも渡さずに持っていたが、とうとう手放すことになるのか。
「じゃあ、それと引き換えに世界を繋げてみせよう。ついでに魔導四輪車もスキルアップに合わせた改造を施すとしよう! 終わったら呼ぶから、マーケットにでも行っててくれるかい?」
「えっと、魔導四輪車とスキルがレベルアップをするって意味ですか?」
「まぁ、待ちたまえ! さぁ、そうと分かったら外に出た出た!」
ネット倉庫にするだとか魔導四輪車をさらにレベルアップするだとか、魔導師アイゼルクラスは妙に張り切っていた。
そんな人に腕時計を渡して本当に大丈夫だろうか?
とはいえ、強制的に宿から出されてしまったので、時間つぶしと散策を兼ねて拠点マーケットを見て回ることにする。
「変わった人だったニャ~」
「コムギさんはあの人の言ってることが分かったの?」
「もちろんニャ。向こうは分からなくても私は分かるニャ! ニャフフ、だからカフェでのことも全て理解していたのニャ」
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