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魔導世界
第19話 追われた冒険者、強壮効果を得る
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「うああああああああ~!!!」
「も、もう駄目だ……」
「みんな、諦めないでとにかく走って街道に出よう! このまま走り切れば……」
三人の必死そうな声が俺の背後に迫ってきている。
どうやら街道に免れようとしているらしいが、彼らの行く手を阻む位置に
魔導車を止めてしまっている関係で、このまま走り続けても必然的に俺がいる所にしかたどり着けない。
冒険者が俺の前にくるまえに、金貨を三枚投入して注文してみた。
【発注者】 ムギヤマ・トージ
【所属】 魔導師ギルド
【特性スキル】 猫の恩返し
【所有スキル】 亜空間倉庫 亜空間収納+1 猫語翻訳
【内容】 ミナギリンα 個数 おまかせ
最終確認 YES/NO?
もちろんイエスにした。タブレット画面に表示された明細書には注文内容の他に、俺のスキルや所属といったものが表示された。
……というか、亜空間収納?
実は俺が知らないだけで収納魔法のようなスキルが使えていたのだろうか。しかしスキルは今すぐ気にすることじゃないし、商品が届くのを待つだけだ。
どこに届くんだろ?
それにしても、逃げてくる冒険者パーティーの後ろにイノシシがいてその後ろにコムギさんが見えているけど、まるでコムギさんが獣と冒険者を追っかけているように見えてしまう。
逃げている彼らを間接的に助けているのは猫さんなのに、何だかおかしな光景に思える。
――おっと、そろそろ冒険者パーティーが目の前に来てしまうな。
「ひっひいいいい~も、もう駄目だ、追いつかれ――えっ!?」
「あああああ~」
「えっ、なに? 誰か立って……る?」
三人の冒険者パーティーのうち先頭を走っていた男が俺に気づき、倒れかけながらも滑りこむようにして二人目、三人目も俺のいるところにたどり着いた。
俺はすかさずお客様を歓迎ポーズで出迎えた。
「いらっしゃいませ! お客様! ムギヤマ商会へようこそ」
三人の格好は見たところ重厚そうな装備じゃなく、安めの革で作られた革鎧を身に着けている。
強そうな武器は携帯していなく、逃げている最中に落としたように見える。
「へ? いらっしゃい……って、商人が何でここに?」
三人とも見た感じ、まだレベルの上がっていない駆け出し冒険者みたいだ。
「野生のイノシシから逃げていたみたいですので、こちらに誘導したんですよ」
「あ、あいつは野生イノシシなんかじゃなくて、ルゴー湾に生息する魔獣のビッグボア!! とにかく目をつけられて追いかけられたらもうどうしようもないんだよ! 商人さんには悪いけど、オレたち含めてもう助からないよ……」
ルゴー湾に生息する魔獣でビッグボアか……なるほど、勉強になるな。
俺自身、戦うことがないから魔物鑑定なんかがスキルに加わらないだろうけど、こうして現地の人に教えてもらえるだけでも有難い。
そういえば、魔導石は魔獣からも手に入るって話だったような気がするけど、駆け出し冒険者たちには討伐は厳しいかもしれないしお願いは出来そうにないな。
【発送完了しました!】
諦めた表情で俺を見る三人がいる中、タブレットから聞き覚えのある電子音が響いた。
「えっ? い、今の音は何!?」
「も、もう終わりの合図なんじゃ……?」
「ひいいい」
……などなど、冒険者パーティーだけが怯えを見せているが、注文品が届くのを心待ちにしていた俺だけが両手を広げるポーズでその時を待った。
「あれ? そういえば魔獣が追いついてきてないような気がする……」
それは俺も思っていた。
あれだけ必死に俺のところに逃げてきた時、まるで目前まで迫ってくるような感じだった。それこそ、大きな体躯をした魔獣が追ってきていたなら足音だって響いてくるだろうし、地面が揺れてもおかしくないのにその気配が全く感じられないのは何故なのか。
そういえばコムギさんが魔獣を追いかけまわしていたが、聖獣と称されているコムギさんが追い出した可能性もありそう。
「ひっ!! そ、そこにいる……すぐそこまで見えてるってば!」
「げぇっ!? ほ、本当だ……」
コムギさんがどうにかしてくれたかと思いきや、魔獣が近くにいてうろうろしているのが見える。間近に見える魔獣の姿に三人ともへたり込んでしまった。
「ど、どうするんですか! 商人さん、オレたちもあなたもこのままじゃ――」
「いやぁ、本当にどうしましょうか」
魔獣の近くにコムギさんの姿はなく、見えるのは獲物を失ってうろうろしている魔獣だけだ。しかし気のせいか、冒険者パーティーはもちろんこちらの存在にまるで気づかず動いているように見える。
魔導車で動いている時やコムギさんと一緒にいる時、俺には一切危険な目に遭うことがなかったし近づいてくることもなかったが、もしかしたら見えないバリアのようなもので守られているのではないだろうか。
確か魔導師ルーナからそんな言葉を聞いたような気が。
「――わわわっ!?」
「な、なんだこの壁! 一体どこから現れたんだ……」
「魔獣が来ないかと思ったら、壁壁壁……何なんだよもう~」
魔獣が近づいてこないかと思いきや、今度は彼らの目の前を阻むかのような壁が突然のようにそびえている。壁の高さは背丈の高い大人が立ったくらいの高さだ。
……壁?
それってもしかして段ボール箱の壁なのでは?
彼らはへたり込んでいる最中で周りを見る余裕もなさそうなので、俺はその隙に手が届く高さにある箱を持ち上げ、そのまま自分の足元に移動させた。
持ち上げた時にかなりの重さがあったが、おそらく箱の中身は注文した強壮剤に違いない。
段ボール箱の中身を封じていたテープを剥がし、中身を確認するとそこには何らかの液体が入った大容量の瓶が一本だけ入っている。
一本だけであんなに重かったのか?
金貨三枚も消費したのに、一本って。とはいえ、他の箱も開けてみれば分かることだし、俺が慌てる意味はない。
――というわけで、とりあえず一本お試しで冒険者の彼らに飲んでもらって、そのうえで買ってもらえればよしとする。
その効果次第でリピートしてくれるかもしれない。
「ねえ商人さん、さっきから何をしてるんです?」
丁度よく落ち着いた一人が声をかけてきたので、俺は彼の目の前にそれを見せた。
「これは冒険者さんたちが即効で強くなる強壮剤なんです! 代金はいらないので、お試しで飲んでみませんか?」
「え? 強壮剤? でも俺、回復士なんだけど……他の二人は戦士だからあいつらに飲ませた方がいいんじゃないかな?」
回復士……戦わないタイプか。しかし、後ろでへたり込んだまま動けずにいるのがよりにもよって戦士二人。
多分回復士の彼がパーティーの要で指示を出しているっぽいし、彼がもし分かりやすく強くなってくれれば、もしかするかも。
「回復士であろうと、効果は必ず出るはずです。騙すつもりはありませんが、騙されたと思って口にしてみてもらえませんか?」
「そ、そこまで言うなら……あいつらもやる気を出すかもなので……」
「ありがとうございます!」
回復士相手にどういう効果があるのかは不透明だが試してもらうしかない――ということで、箱から大容量の瓶を取り出し、キャップを外して回復士の彼に手渡した。
少しだけでも飲めば変わる――そう信じて。
「変わった味ですね。甘みを感じるような少し苦いような……」
「……ふむふむ」
「…………う、うおおおおおおおおお!!!!」
少し大人しめの彼が何口か飲み終わった直後、拳を握りしめて雄叫びのような声を張り上げ、段ボール箱の壁を吹き飛ばしながら魔獣に向かって突っ込んでいた。
「トージはとんでもないものを飲ませたニャ」
「コムギさん! 今までどこに?」
「それは後で話すニャ。それよりもあの人間が飲んだのは、強化……魔獣くらい簡単に吹き飛ばせたりするくらいパワーアップしちゃうものなのニャ」
「えっ? そんなに?」
「も、もう駄目だ……」
「みんな、諦めないでとにかく走って街道に出よう! このまま走り切れば……」
三人の必死そうな声が俺の背後に迫ってきている。
どうやら街道に免れようとしているらしいが、彼らの行く手を阻む位置に
魔導車を止めてしまっている関係で、このまま走り続けても必然的に俺がいる所にしかたどり着けない。
冒険者が俺の前にくるまえに、金貨を三枚投入して注文してみた。
【発注者】 ムギヤマ・トージ
【所属】 魔導師ギルド
【特性スキル】 猫の恩返し
【所有スキル】 亜空間倉庫 亜空間収納+1 猫語翻訳
【内容】 ミナギリンα 個数 おまかせ
最終確認 YES/NO?
もちろんイエスにした。タブレット画面に表示された明細書には注文内容の他に、俺のスキルや所属といったものが表示された。
……というか、亜空間収納?
実は俺が知らないだけで収納魔法のようなスキルが使えていたのだろうか。しかしスキルは今すぐ気にすることじゃないし、商品が届くのを待つだけだ。
どこに届くんだろ?
それにしても、逃げてくる冒険者パーティーの後ろにイノシシがいてその後ろにコムギさんが見えているけど、まるでコムギさんが獣と冒険者を追っかけているように見えてしまう。
逃げている彼らを間接的に助けているのは猫さんなのに、何だかおかしな光景に思える。
――おっと、そろそろ冒険者パーティーが目の前に来てしまうな。
「ひっひいいいい~も、もう駄目だ、追いつかれ――えっ!?」
「あああああ~」
「えっ、なに? 誰か立って……る?」
三人の冒険者パーティーのうち先頭を走っていた男が俺に気づき、倒れかけながらも滑りこむようにして二人目、三人目も俺のいるところにたどり着いた。
俺はすかさずお客様を歓迎ポーズで出迎えた。
「いらっしゃいませ! お客様! ムギヤマ商会へようこそ」
三人の格好は見たところ重厚そうな装備じゃなく、安めの革で作られた革鎧を身に着けている。
強そうな武器は携帯していなく、逃げている最中に落としたように見える。
「へ? いらっしゃい……って、商人が何でここに?」
三人とも見た感じ、まだレベルの上がっていない駆け出し冒険者みたいだ。
「野生のイノシシから逃げていたみたいですので、こちらに誘導したんですよ」
「あ、あいつは野生イノシシなんかじゃなくて、ルゴー湾に生息する魔獣のビッグボア!! とにかく目をつけられて追いかけられたらもうどうしようもないんだよ! 商人さんには悪いけど、オレたち含めてもう助からないよ……」
ルゴー湾に生息する魔獣でビッグボアか……なるほど、勉強になるな。
俺自身、戦うことがないから魔物鑑定なんかがスキルに加わらないだろうけど、こうして現地の人に教えてもらえるだけでも有難い。
そういえば、魔導石は魔獣からも手に入るって話だったような気がするけど、駆け出し冒険者たちには討伐は厳しいかもしれないしお願いは出来そうにないな。
【発送完了しました!】
諦めた表情で俺を見る三人がいる中、タブレットから聞き覚えのある電子音が響いた。
「えっ? い、今の音は何!?」
「も、もう終わりの合図なんじゃ……?」
「ひいいい」
……などなど、冒険者パーティーだけが怯えを見せているが、注文品が届くのを心待ちにしていた俺だけが両手を広げるポーズでその時を待った。
「あれ? そういえば魔獣が追いついてきてないような気がする……」
それは俺も思っていた。
あれだけ必死に俺のところに逃げてきた時、まるで目前まで迫ってくるような感じだった。それこそ、大きな体躯をした魔獣が追ってきていたなら足音だって響いてくるだろうし、地面が揺れてもおかしくないのにその気配が全く感じられないのは何故なのか。
そういえばコムギさんが魔獣を追いかけまわしていたが、聖獣と称されているコムギさんが追い出した可能性もありそう。
「ひっ!! そ、そこにいる……すぐそこまで見えてるってば!」
「げぇっ!? ほ、本当だ……」
コムギさんがどうにかしてくれたかと思いきや、魔獣が近くにいてうろうろしているのが見える。間近に見える魔獣の姿に三人ともへたり込んでしまった。
「ど、どうするんですか! 商人さん、オレたちもあなたもこのままじゃ――」
「いやぁ、本当にどうしましょうか」
魔獣の近くにコムギさんの姿はなく、見えるのは獲物を失ってうろうろしている魔獣だけだ。しかし気のせいか、冒険者パーティーはもちろんこちらの存在にまるで気づかず動いているように見える。
魔導車で動いている時やコムギさんと一緒にいる時、俺には一切危険な目に遭うことがなかったし近づいてくることもなかったが、もしかしたら見えないバリアのようなもので守られているのではないだろうか。
確か魔導師ルーナからそんな言葉を聞いたような気が。
「――わわわっ!?」
「な、なんだこの壁! 一体どこから現れたんだ……」
「魔獣が来ないかと思ったら、壁壁壁……何なんだよもう~」
魔獣が近づいてこないかと思いきや、今度は彼らの目の前を阻むかのような壁が突然のようにそびえている。壁の高さは背丈の高い大人が立ったくらいの高さだ。
……壁?
それってもしかして段ボール箱の壁なのでは?
彼らはへたり込んでいる最中で周りを見る余裕もなさそうなので、俺はその隙に手が届く高さにある箱を持ち上げ、そのまま自分の足元に移動させた。
持ち上げた時にかなりの重さがあったが、おそらく箱の中身は注文した強壮剤に違いない。
段ボール箱の中身を封じていたテープを剥がし、中身を確認するとそこには何らかの液体が入った大容量の瓶が一本だけ入っている。
一本だけであんなに重かったのか?
金貨三枚も消費したのに、一本って。とはいえ、他の箱も開けてみれば分かることだし、俺が慌てる意味はない。
――というわけで、とりあえず一本お試しで冒険者の彼らに飲んでもらって、そのうえで買ってもらえればよしとする。
その効果次第でリピートしてくれるかもしれない。
「ねえ商人さん、さっきから何をしてるんです?」
丁度よく落ち着いた一人が声をかけてきたので、俺は彼の目の前にそれを見せた。
「これは冒険者さんたちが即効で強くなる強壮剤なんです! 代金はいらないので、お試しで飲んでみませんか?」
「え? 強壮剤? でも俺、回復士なんだけど……他の二人は戦士だからあいつらに飲ませた方がいいんじゃないかな?」
回復士……戦わないタイプか。しかし、後ろでへたり込んだまま動けずにいるのがよりにもよって戦士二人。
多分回復士の彼がパーティーの要で指示を出しているっぽいし、彼がもし分かりやすく強くなってくれれば、もしかするかも。
「回復士であろうと、効果は必ず出るはずです。騙すつもりはありませんが、騙されたと思って口にしてみてもらえませんか?」
「そ、そこまで言うなら……あいつらもやる気を出すかもなので……」
「ありがとうございます!」
回復士相手にどういう効果があるのかは不透明だが試してもらうしかない――ということで、箱から大容量の瓶を取り出し、キャップを外して回復士の彼に手渡した。
少しだけでも飲めば変わる――そう信じて。
「変わった味ですね。甘みを感じるような少し苦いような……」
「……ふむふむ」
「…………う、うおおおおおおおおお!!!!」
少し大人しめの彼が何口か飲み終わった直後、拳を握りしめて雄叫びのような声を張り上げ、段ボール箱の壁を吹き飛ばしながら魔獣に向かって突っ込んでいた。
「トージはとんでもないものを飲ませたニャ」
「コムギさん! 今までどこに?」
「それは後で話すニャ。それよりもあの人間が飲んだのは、強化……魔獣くらい簡単に吹き飛ばせたりするくらいパワーアップしちゃうものなのニャ」
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