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魔導世界
第23話 魔導宅配ボックス
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自分の名を名乗りながら中へ進むと、そこには猫を膝に乗せて椅子に座る年若い男性たちが談笑する姿があった。
商人ギルドの建物のはずなのに、俺はもしかして異世界の猫カフェにでも迷い込んでしまっただろうか?
「お待ちしていましたよ、ムギヤマさん!」
"ギルド"とは組合の意で、同業者の組織という認識だった。それは間違っていないだろうが、商人の集まりというよりも猫カフェにしか見えない。
「しょ、商人ギルド……ですよね?」
それに妙なのは、確か王都には猫がほとんどいないという話だったはず。それなのにここにいる人たち全員にそれぞれ猫さんがついていて、とても穏やかな表情をしている。
「はい。間違いなく。ここはロディアーク王都の商業組織であり、猫好きな商人が集まるキャットス・ギルドでもあります」
受付の女性は微笑みながら丁寧な説明をしてくれた。冗談ではなく、本当に猫好きの商人たちが集まっているようだ。
「もしかして、私が猫を連れていたから優遇してくれているのですか?」
「それもありますが、ムギヤマさんは信頼に足るお人だと聞かされましたので、このようなお出迎えをさせていただいた次第です」
肝心のコムギさんはここにいないけど。
「聞かされた? どなたからですか?」
「それは……」
「ここからはオレ……いえ、ボクが説明します」
受付の女性に変わって奥の部屋から現れたのは、予想していた人物だった。
ああ、やはり思った通りだ。てっきり貴族か王族かと思っていたけど、そうじゃなくて同業の偉い人だった。
「先ほどぶりですね、ムギヤマさん」
「回復士のロードさんは、もしかしてギルドの……?」
「はい。ボクはこの王都の商人たちを束ねているギルド長なんです。取引素材の採取が目的で外に出たりするのですが、王都の外は思っていた以上に危険だったなと実感しましたよ~」
戦えないのに草原に出ていたとは。回復スキルはあったみたいだが、そうするとあそこにいた二人は雇われの冒険者だろうか。
商人を護衛するくらいなら簡単だと思っていたのだろうけど、あの二人もミナギリンαがなければまともに戦えていなかった。
「なるほど。どうりで……」
自ら動くタイプの人だったわけか。強壮剤を飲ませて興奮させてしまったけど、傷を負わせなかっただけでも良かった。
「ちなみに他の二人は本物の冒険者でした。ボクの知り合いなんですが、まだ駆け出し冒険者でしてね。ですので、外にあれだけの大型魔獣がうろついているとは思っていなかったみたいでした。ただ、ムギヤマさんからお売り頂いたドリンクのおかげで彼らも命拾いをしましたので、本当に助かりました!」
本当にまさかの駆け出し冒険者だった。
「私の商品がお役に立てて良かったです」
ううむ、それにしてもコムギさんに対する扱いが猫好きのそれに近いものがあったけど、まさか猫を愛でる集まりまで運営していたとは驚きだ。
「そういえば、あの猫さんは一緒じゃないんですか?」
「彼女……コムギさんは気ままに動く猫さんなので、町とかに着いたときは別行動になることが多いです」
「なるほど。コムギさん、いいお名前ですね」
俺の飼い猫さんではないが、名前は確かに素敵だ。
「ところで、こちらのギルドでは主にどういった活動をしているのですか?」
「先ほども少し話しましたが、素材採取がほとんどです。取引相手向けに卸しているんですが、この辺りは薬草となる草が豊富に生えているので冒険者ギルドとも取引をしていますね」
「そうすると、猫さんは……」
「ボクの趣味ですよ。ボクは立場上猫さんを飼えませんので、ギルド所属者の猫さんたちの憩いの場としてこの場所を使っているんです」
ギルド長の特権による運営か。猫さんの主人にとって最高の環境すぎる。
それにしても、採取メインになっている王都周辺にあんな危険な魔獣がいるなんて、駆け出し冒険者ではどうにも出来ないのではないだろうか。
たまたま俺が通りがかったが、そうじゃなかった場合はどういう対処をしていたんだろう。
「あの魔獣を討伐出来るレベルの冒険者は?」
「え? あぁ、ボクたちの危うさに驚かせてしまいましたね。王都にはランクの高い冒険者が数人ほどいますのでご安心を。それと、街道まで逃げることが出来れば魔獣は逃げていくことが多いです」
――つまり、俺が道を塞いでいなければ何とかなった可能性があるわけか。
駆け出し冒険者にしては度胸が良すぎると思った。
「ムギヤマさん、そろそろ取引のお話をします?」
「ミナギリンαの追加注文……いえ、定期購入でしたか?」
「そうですね、その定期購入の件でご相談があるんです」
そういえば、ウォルフ村のサシャさんも次に買いたい時はどうすればいいといった話をしていたが、仮に王都内で定期購入契約をしてもらった場合、連絡する手立てをどうするべきなんだろうか。
「そうですね、私もその件について詳しく話をしたいと思って――な、なんだ?」
話の途中、突然建物が揺れだすと同時に重く感じられる音が響いた。
「まさか、地震……!? いや、しかしここは崖上……そんなはずは」
ああ、そうか。崖上に位置する王都は岩の上に建っているから、そもそもの地盤がしっかりしているんだ。
それなのに建物が揺れるほどの衝撃を感じるなんて、一体何が。
「ロードさん! いえ、ギルド長!! ギルド長のお部屋に得体のしれない物が出現しました! 商談中に申し訳ありませんが、至急お部屋にお戻りを!」
得体のしれない物だから魔物の類ではなさそうだが、さっきの揺れと音に関係があるやつだろうか?
「ムギヤマさん! 途中ですみませんが、失礼します!!」
そう言うと、ロードは頭を深く下げてすぐさま奥の部屋へと足早に急いだ。しかし、部屋の様子に首を傾げながら彼はすぐに俺のところに戻ってきた。
「あ、あの、ムギヤマさん。一緒に来てもらえませんか?」
「部屋に現れた物の確認ですね?」
「は、はい……」
ただ事じゃない、その場にいる誰もが動揺している中、部屋に突如として現れたという物を見に行くとそこにあったのは――
――なんかどこかでよく見たボックスだな。
もしかしてこれが発注された魔導スキルの物なのでは?
商人ギルドの建物のはずなのに、俺はもしかして異世界の猫カフェにでも迷い込んでしまっただろうか?
「お待ちしていましたよ、ムギヤマさん!」
"ギルド"とは組合の意で、同業者の組織という認識だった。それは間違っていないだろうが、商人の集まりというよりも猫カフェにしか見えない。
「しょ、商人ギルド……ですよね?」
それに妙なのは、確か王都には猫がほとんどいないという話だったはず。それなのにここにいる人たち全員にそれぞれ猫さんがついていて、とても穏やかな表情をしている。
「はい。間違いなく。ここはロディアーク王都の商業組織であり、猫好きな商人が集まるキャットス・ギルドでもあります」
受付の女性は微笑みながら丁寧な説明をしてくれた。冗談ではなく、本当に猫好きの商人たちが集まっているようだ。
「もしかして、私が猫を連れていたから優遇してくれているのですか?」
「それもありますが、ムギヤマさんは信頼に足るお人だと聞かされましたので、このようなお出迎えをさせていただいた次第です」
肝心のコムギさんはここにいないけど。
「聞かされた? どなたからですか?」
「それは……」
「ここからはオレ……いえ、ボクが説明します」
受付の女性に変わって奥の部屋から現れたのは、予想していた人物だった。
ああ、やはり思った通りだ。てっきり貴族か王族かと思っていたけど、そうじゃなくて同業の偉い人だった。
「先ほどぶりですね、ムギヤマさん」
「回復士のロードさんは、もしかしてギルドの……?」
「はい。ボクはこの王都の商人たちを束ねているギルド長なんです。取引素材の採取が目的で外に出たりするのですが、王都の外は思っていた以上に危険だったなと実感しましたよ~」
戦えないのに草原に出ていたとは。回復スキルはあったみたいだが、そうするとあそこにいた二人は雇われの冒険者だろうか。
商人を護衛するくらいなら簡単だと思っていたのだろうけど、あの二人もミナギリンαがなければまともに戦えていなかった。
「なるほど。どうりで……」
自ら動くタイプの人だったわけか。強壮剤を飲ませて興奮させてしまったけど、傷を負わせなかっただけでも良かった。
「ちなみに他の二人は本物の冒険者でした。ボクの知り合いなんですが、まだ駆け出し冒険者でしてね。ですので、外にあれだけの大型魔獣がうろついているとは思っていなかったみたいでした。ただ、ムギヤマさんからお売り頂いたドリンクのおかげで彼らも命拾いをしましたので、本当に助かりました!」
本当にまさかの駆け出し冒険者だった。
「私の商品がお役に立てて良かったです」
ううむ、それにしてもコムギさんに対する扱いが猫好きのそれに近いものがあったけど、まさか猫を愛でる集まりまで運営していたとは驚きだ。
「そういえば、あの猫さんは一緒じゃないんですか?」
「彼女……コムギさんは気ままに動く猫さんなので、町とかに着いたときは別行動になることが多いです」
「なるほど。コムギさん、いいお名前ですね」
俺の飼い猫さんではないが、名前は確かに素敵だ。
「ところで、こちらのギルドでは主にどういった活動をしているのですか?」
「先ほども少し話しましたが、素材採取がほとんどです。取引相手向けに卸しているんですが、この辺りは薬草となる草が豊富に生えているので冒険者ギルドとも取引をしていますね」
「そうすると、猫さんは……」
「ボクの趣味ですよ。ボクは立場上猫さんを飼えませんので、ギルド所属者の猫さんたちの憩いの場としてこの場所を使っているんです」
ギルド長の特権による運営か。猫さんの主人にとって最高の環境すぎる。
それにしても、採取メインになっている王都周辺にあんな危険な魔獣がいるなんて、駆け出し冒険者ではどうにも出来ないのではないだろうか。
たまたま俺が通りがかったが、そうじゃなかった場合はどういう対処をしていたんだろう。
「あの魔獣を討伐出来るレベルの冒険者は?」
「え? あぁ、ボクたちの危うさに驚かせてしまいましたね。王都にはランクの高い冒険者が数人ほどいますのでご安心を。それと、街道まで逃げることが出来れば魔獣は逃げていくことが多いです」
――つまり、俺が道を塞いでいなければ何とかなった可能性があるわけか。
駆け出し冒険者にしては度胸が良すぎると思った。
「ムギヤマさん、そろそろ取引のお話をします?」
「ミナギリンαの追加注文……いえ、定期購入でしたか?」
「そうですね、その定期購入の件でご相談があるんです」
そういえば、ウォルフ村のサシャさんも次に買いたい時はどうすればいいといった話をしていたが、仮に王都内で定期購入契約をしてもらった場合、連絡する手立てをどうするべきなんだろうか。
「そうですね、私もその件について詳しく話をしたいと思って――な、なんだ?」
話の途中、突然建物が揺れだすと同時に重く感じられる音が響いた。
「まさか、地震……!? いや、しかしここは崖上……そんなはずは」
ああ、そうか。崖上に位置する王都は岩の上に建っているから、そもそもの地盤がしっかりしているんだ。
それなのに建物が揺れるほどの衝撃を感じるなんて、一体何が。
「ロードさん! いえ、ギルド長!! ギルド長のお部屋に得体のしれない物が出現しました! 商談中に申し訳ありませんが、至急お部屋にお戻りを!」
得体のしれない物だから魔物の類ではなさそうだが、さっきの揺れと音に関係があるやつだろうか?
「ムギヤマさん! 途中ですみませんが、失礼します!!」
そう言うと、ロードは頭を深く下げてすぐさま奥の部屋へと足早に急いだ。しかし、部屋の様子に首を傾げながら彼はすぐに俺のところに戻ってきた。
「あ、あの、ムギヤマさん。一緒に来てもらえませんか?」
「部屋に現れた物の確認ですね?」
「は、はい……」
ただ事じゃない、その場にいる誰もが動揺している中、部屋に突如として現れたという物を見に行くとそこにあったのは――
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もしかしてこれが発注された魔導スキルの物なのでは?
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