28 / 52
魔導世界
第28話 タイムセールと逞しき乙女たち
しおりを挟む
追加注文で氷を掴んでも平気な手袋を発注しようとすると、画面にはなぜか時間制限が表示された。
これってもしや、タイムセールか?
【人魚専用手袋】 ただし、ルゴー洞門限定
【人魚専用ドライアイス】 ただし、ルゴー海域限定
【ドライアイス・ブロック型】 異世界お試し用
残り時間 59:08
ルゴー洞門限定とかルゴー海域限定商品?
時間制限されても時計がないから俺には判断出来ないんだが。しかし、幸いにも全て銅貨で買えるみたいなので渡された銅貨を全て使って、買えるだけ注文してみた。
すると、
「まぁっ! 透明なものが勝手に手に張り付いているわ! トージ! これが手袋なのね?」
……スキルアップしてないのに人魚族には優しい設定か?
「そ、そうです! 手袋を外さない限り、心配はないはずです」
「ウフフ。それは最高ね!」
少しだけ俺への態度が軟化しただろうか?
それはそうと、ドライアイスの威力と効果を見せるには手本を見せる必要がある。
俺用の手袋が無かったので、目に見える範囲に捨ててある棒を拾い、それを使って見せることにした。
ルゴー洞門は両側とも岩になっている。しかし、アドリアナの力で海中に放り投げられるように出来るらしく、俺はドライアイスのブロック型を使って実行。
その効果はすぐに表れた。
「――! トージ!! ドライアイスが消えてしまったわ! それも霧のようによ!」
「それなら心配ないです。それがドライアイスなんです。時間が経てば、周辺の海水が冷えてくるはずです。ただし、あくまで一時的なので追加で使いたい場合は……」
説明しようとすると、少しだけ冷たくそれでいて柔らかな感触が俺の顔に当たった。抱きつかれたものと推測するが、コムギさんのもふもふには勝てないから問題はない。
「トージ、ありがとう! あなたのおかげでわたくしたちはゆで上がらずに済むわ」
「お役に立てて何よりです」
「追加で欲しくなったらあなたのお店に行けば買えるのかしら?」
「……残念ながら、私は固定のお店を構えてないんですよ」
仮に構えていても人魚さんが地上に出てくるのは難しいだろうな。
「すると、その変なもので移動しながら商売を?」
魔導車には警戒してるのか。
「そうなんです。ですので、また購入して頂くには今からお見せするボックスで直接購入していただくか、魔導師の拠点に来ていただいて相談していただくかになりますね」
「魔導師といえばガルスの村が近いけれど、人間のフリをするのは魔力を必要とするから面倒なの。だから、ボックスを見せてちょうだい!」
……そうなるよな。
そういえば、スキルでボックスを出せるようになったけど、どうやって出すんだ?
「トージ。ボックスはどこにあるのかしら?」
「し、少々お待ちを……」
アドリアナと他の人魚たちが、動きが気になるのか俺に期待の眼差しを向けている。
こんな緊張感でどうすればボックスを出せるっていうんだ?
「コムギさん~」
こういう時に都合よくコムギさんを頼ってしまうが、
「唱えればいいニャ」
……などと、コムギさんはあっさりと答えを教えてくれる。唱えるというと、魔法名を唱える時のあれだよな?
多少の恥ずかしさはあるが、人魚さんたちが注目しているし仕方ない。
「ま、魔導宅配ボックス!」
とにかく空いてる場所、それもアドリアナの目の前がいいだろう――そう思いながら、声に出して叫んでみた。
「…………やれやれニャ」
「えっ? なんか間違ってました?」
「そんなことないけどニャ……」
周りを見ると、人魚さんたちもコムギさんと同様の反応を見せている。
魔法を唱える感じと言われても俺にはよく分からなかったのだが、多分出現してくれるはずだ。
「……そんな感じでボックスが現れてくれるのね?」
「は、はい」
そうして少しの間を置いたところで、アドリアナの目の前に透明タイプのボックスが降ってきた。
「これがボックス……合ってるかしら?」
透明というかシースルーボックスだな。これも人魚さんに合わせた色合いなんだろうか。
「はい。それが魔導宅配ボックスです。使い方は――」
一通り説明しただけで人魚さんたちは使い方をマスターしてくれた。スキルアップによる恩恵はどうやら人魚さんたちに与えられたとみえる。
「トージ。ボックスの代金はおいくら?」
「あぁ、それは……」
王都ロディアークは初めてだったからボックスの料金は貰わなかったが、やはりボックス自体も売るべきだよな。
アドリアナが持っているか分からないが、ボックスの価値や使い勝手を考えたら魔導石を代金にするのが望ましい。
「それならアドリアナ」
「ええ」
「魔導宅配ボックスの代金は、魔導石を頂くよ。魔導石はレアなものだからもしかしたら持ってないかもしれないが……」
「魔導石ね。分かったわ。これで足りるかしら?」
「二個か。それでいいよ。ありがとう」
――って、えぇ!?
魔導石が二個も手に入ったのか!?
こうもあっさりと渡されるなんて、海の中は一体どれだけのお宝が。
「ウフフ、これで取引成立ですわ! トージ。これからもわたくしたちをお願いね!」
これってもしや、タイムセールか?
【人魚専用手袋】 ただし、ルゴー洞門限定
【人魚専用ドライアイス】 ただし、ルゴー海域限定
【ドライアイス・ブロック型】 異世界お試し用
残り時間 59:08
ルゴー洞門限定とかルゴー海域限定商品?
時間制限されても時計がないから俺には判断出来ないんだが。しかし、幸いにも全て銅貨で買えるみたいなので渡された銅貨を全て使って、買えるだけ注文してみた。
すると、
「まぁっ! 透明なものが勝手に手に張り付いているわ! トージ! これが手袋なのね?」
……スキルアップしてないのに人魚族には優しい設定か?
「そ、そうです! 手袋を外さない限り、心配はないはずです」
「ウフフ。それは最高ね!」
少しだけ俺への態度が軟化しただろうか?
それはそうと、ドライアイスの威力と効果を見せるには手本を見せる必要がある。
俺用の手袋が無かったので、目に見える範囲に捨ててある棒を拾い、それを使って見せることにした。
ルゴー洞門は両側とも岩になっている。しかし、アドリアナの力で海中に放り投げられるように出来るらしく、俺はドライアイスのブロック型を使って実行。
その効果はすぐに表れた。
「――! トージ!! ドライアイスが消えてしまったわ! それも霧のようによ!」
「それなら心配ないです。それがドライアイスなんです。時間が経てば、周辺の海水が冷えてくるはずです。ただし、あくまで一時的なので追加で使いたい場合は……」
説明しようとすると、少しだけ冷たくそれでいて柔らかな感触が俺の顔に当たった。抱きつかれたものと推測するが、コムギさんのもふもふには勝てないから問題はない。
「トージ、ありがとう! あなたのおかげでわたくしたちはゆで上がらずに済むわ」
「お役に立てて何よりです」
「追加で欲しくなったらあなたのお店に行けば買えるのかしら?」
「……残念ながら、私は固定のお店を構えてないんですよ」
仮に構えていても人魚さんが地上に出てくるのは難しいだろうな。
「すると、その変なもので移動しながら商売を?」
魔導車には警戒してるのか。
「そうなんです。ですので、また購入して頂くには今からお見せするボックスで直接購入していただくか、魔導師の拠点に来ていただいて相談していただくかになりますね」
「魔導師といえばガルスの村が近いけれど、人間のフリをするのは魔力を必要とするから面倒なの。だから、ボックスを見せてちょうだい!」
……そうなるよな。
そういえば、スキルでボックスを出せるようになったけど、どうやって出すんだ?
「トージ。ボックスはどこにあるのかしら?」
「し、少々お待ちを……」
アドリアナと他の人魚たちが、動きが気になるのか俺に期待の眼差しを向けている。
こんな緊張感でどうすればボックスを出せるっていうんだ?
「コムギさん~」
こういう時に都合よくコムギさんを頼ってしまうが、
「唱えればいいニャ」
……などと、コムギさんはあっさりと答えを教えてくれる。唱えるというと、魔法名を唱える時のあれだよな?
多少の恥ずかしさはあるが、人魚さんたちが注目しているし仕方ない。
「ま、魔導宅配ボックス!」
とにかく空いてる場所、それもアドリアナの目の前がいいだろう――そう思いながら、声に出して叫んでみた。
「…………やれやれニャ」
「えっ? なんか間違ってました?」
「そんなことないけどニャ……」
周りを見ると、人魚さんたちもコムギさんと同様の反応を見せている。
魔法を唱える感じと言われても俺にはよく分からなかったのだが、多分出現してくれるはずだ。
「……そんな感じでボックスが現れてくれるのね?」
「は、はい」
そうして少しの間を置いたところで、アドリアナの目の前に透明タイプのボックスが降ってきた。
「これがボックス……合ってるかしら?」
透明というかシースルーボックスだな。これも人魚さんに合わせた色合いなんだろうか。
「はい。それが魔導宅配ボックスです。使い方は――」
一通り説明しただけで人魚さんたちは使い方をマスターしてくれた。スキルアップによる恩恵はどうやら人魚さんたちに与えられたとみえる。
「トージ。ボックスの代金はおいくら?」
「あぁ、それは……」
王都ロディアークは初めてだったからボックスの料金は貰わなかったが、やはりボックス自体も売るべきだよな。
アドリアナが持っているか分からないが、ボックスの価値や使い勝手を考えたら魔導石を代金にするのが望ましい。
「それならアドリアナ」
「ええ」
「魔導宅配ボックスの代金は、魔導石を頂くよ。魔導石はレアなものだからもしかしたら持ってないかもしれないが……」
「魔導石ね。分かったわ。これで足りるかしら?」
「二個か。それでいいよ。ありがとう」
――って、えぇ!?
魔導石が二個も手に入ったのか!?
こうもあっさりと渡されるなんて、海の中は一体どれだけのお宝が。
「ウフフ、これで取引成立ですわ! トージ。これからもわたくしたちをお願いね!」
125
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜
自ら
ファンタジー
異世界に転移したアキト。 彼に壮大な野望も、世界を救う使命感もない。 望むのはただ、 美味しいものを食べて、気持ちよく寝て、静かに過ごすこと。 ところが―― 彼が焚き火をすれば、枯れていた森が息を吹き返す。 井戸を掘れば、地下水脈が活性化して村が潤う。 昼寝をすれば、周囲の魔物たちまで眠りにつく。 村人は彼を「奇跡を呼ぶ聖人」と崇め、 教会は「神の化身」として祀り上げ、 王都では「伝説の男」として語り継がれる。 だが、本人はまったく気づいていない。 今日も木陰で、心地よい風を感じながら昼寝をしている。 これは、欲望に忠実に生きた男が、 無自覚に世界を変えてしまう、 ゆるやかで温かな異世界スローライフ。 幸せは、案外すぐ隣にある。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました
竹桜
ファンタジー
誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。
その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。
男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。
自らの憧れを叶える為に。
クラスで異世界召喚する前にスキルの検証に30年貰ってもいいですか?
ばふぉりん
ファンタジー
中学三年のある朝、突然教室が光だし、光が収まるとそこには女神様が!
「貴方達は異世界へと勇者召喚されましたが、そのままでは忍びないのでなんとか召喚に割り込みをかけあちらの世界にあった身体へ変換させると共にスキルを与えます。更に何か願いを叶えてあげましょう。これも召喚を止められなかった詫びとします」
「それでは女神様、どんなスキルかわからないまま行くのは不安なので検証期間を30年頂いてもよろしいですか?」
これはスキルを使いこなせないまま召喚された者と、使いこなし過ぎた者の異世界物語である。
<前作ラストで書いた(本当に描きたかったこと)をやってみようと思ったセルフスピンオフです!うまく行くかどうかはホント不安でしかありませんが、表現方法とか教えて頂けると幸いです>
注)本作品は横書きで書いており、顔文字も所々で顔を出してきますので、横読み?推奨です。
(読者様から縦書きだと顔文字が!という指摘を頂きましたので、注意書をと。ただ、表現たとして顔文字を出しているで、顔を出してた時には一通り読み終わった後で横書きで見て頂けると嬉しいです)
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる