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魔導世界
第35話 商人、魔法とスキルを売る?
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「商人様、お野菜が欲しいのだけれど……」
「はいはい、お安いですよ。この画面の一覧にある野菜を選んでお金を直接投入してください」
「え、この石板に?」
【野菜】 ワイルドキュウリ 銅貨×1
【野菜】 ガルス産ポテト 銅貨×1
【汁物】 ガルス産異世界風ヌードル 銀貨×2
【汁物】 アズリゼ風タコス 銀貨×3
ご注文はムギヤマ商会まで
魔導師の姉妹が規格外なだけで住人のほとんどは、人間と変わらないエルフたち。そんな住人から求められる商品はいたって普通だった。
求めてくるのはほとんど野菜ばかりだったが、注文一覧に出てくる野菜も日本で聞き慣れた野菜の名前を少しひねったようなものが多く、それがかえって売りやすさを感じている。
「ムギヤマ商会さん。野菜以外にも何かあるのか? 石とか弓とか、こう……なんだ、狩りに使えそうなやつだ」
「予算次第ですが、商品はいつでも注文出来ますよ」
「なるほどなぁ。お金がたまったらそん時は頼む!」
「お待ちしています」
エルフの年配者は買わずに見ているだけが多かった。だが、石板持ちの商人に対し好意的な人が多く、何よりライバルとなる商人がいないので俺にとっては凄くやりやすい場所に思えた。
売上のほとんどは銅貨や銀貨で、商品構成的に金貨を投入されることはなかったものの、ここでも出来るという手ごたえを感じられた。
銅貨や銀貨は金貨に両替が出来るようになったので、今までのように金貨だけを狙い撃ちする必要がなくなったのが大きい。
エルフ住人たちからある程度満足してもらったので、俺はもう一度城の方に行ってみる。
「あっ、トージさま。お探ししていました。氷属性に決めましたので、お願いします」
「そ、そうですか」
……やはり逃れられないんだな。こればかりは発注してみないと何とも言えないが、物ではなくて記憶や知識を習得させるとなると、もはや神の領域になりそうな気がしないでもない。
とりあえず発注してみるか。
【発注者】 ムギヤマ・トージ
【魔法】強化版氷属性
【対象】アズリゼ王国の魔導師マリヤ
【必要石】魔導石×5
覚醒後、一定期間魔法使用不可
「マリヤさん。魔導石はお持ちですか?」
「は、はい! いくつ必要ですか?」
「五個ですね。それと……」
一時的に魔法が使えなくなることをマリヤに伝えると、一瞬だけ落ち込みを見せたが反属性を覚えられる嬉しさが勝ったのか、彼女は静かに頷いてみせた。
それにしても流石魔導師だ。
俺が王国を訪れる可能性があると魔導師ルーナから聞かされたあと、この日のために魔導石をいくつも用意していたらしい。俺が散々集めるのに苦労している魔導石をこうも容易く手に入れられるのは、正直羨ましい限り。
「……それでは注文しましたので、そのままお待ちください」
「え、何もしなくてもいいんですか?」
「そうですね。何かが起きるとかはないと思いますよ」
魔法が一時的に使えなくなるペナルティがある時点で、それが分かったら多分本人はすぐ気づくだろうな。そうなると注文した俺が出来ることは何もなくなる。
【ムギヤマ・トージ様】
【注文は受理されました】
一応注文確認が出るんだ。
その直後――
「――あっああぁぁぁ……魔力の流れ、気配が全部全部……!! うそ、うそ……」
どうやらマリヤの体に変化が表れたみたいだ。痛みとかそういうのはなさそうだが、ショックを受けているのは分かる。
こうなると落ち着くまで話しかけない方がよさそう。
「トージ。お待たせニャ~ウニャ? なにかあったかニャ?」
「実は――」
「――なるほどニャ。マリヤの体内から魔力が全く感じられなくなっているニャ」
コムギさんはマリヤの身に何かあったことをすぐに理解するも、特に驚く様子を見せない。
「今さら言うのも変だけど、やっぱりネット倉庫で注文したら駄目なやつだったんじゃ?」
「仕方ないニャ。魔導師が希望したならトージは何も悪くないのニャ。ジーナも同じ意見だニャ?」
コムギさんと討論していたジーナも妹の様子を気にしていたようで、冷めた表情で妹を眺めている。
「……そう思うわ。妹が選択したものをとやかく言ってもどうしようもないことだわ。まぁ、今はショックが大きいだろうけれど魔法が使えなくなるのは本当に一時的ですもの。すぐに元気になると思うわ」
魔法でそこそこショックを覚えているということは、スキルだとどうなるのか。俺の場合、魔導宅配ボックスを自由に出せるようになっただけで特にペナルティ的なものはなかったが。
魔導師が得ようとするスキルだとしたら、結構なペナルティをくらうのでは?
「スキルを付与する……で、合ってますか?」
「大したスキルでもないのだけれど、猫変化スキルにするわ」
「猫変化!?」
これは意外だ。魔導師であれば何らかのスキルが備わっているはずなのに、王国の女王が猫になることを希望するとは。
エルフの王国を治めているはずなのに、何で猫になりたいのか。
「理由は何でしょうか?」
「コムギに負けたくないからよ!」
「へ?」
「コムギは護衛に長けた猫。だからこそあなたのような商人を得られて、世界中を歩き回っている。そんなのって悔しいじゃない! あたくしだって外を自由に動き回りたいわ!」
というか、猫になるスキルなんてあるのだろうか?
「本当にそれでいいんですか?」
「……悪い?」
「い、いいえ」
しかし女王が望んでいるなら叶えるしかない。
【発注者】 ムギヤマ・トージ
【内容】 猫変化スキル
【対象】 エルフ女王
【必須】 魔導石×2222
発注可能期間200日間 初回発注限定
「あの~、魔導石が2222個必要で期間限定みたいなんですが」
「そんなに!? そんな用意は無いわ……期間はどれくらいの猶予があるというの?」
「およそ200日間ですね」
「…………随分と厳しいのね。くっ……スキルは諦めるしか……」
俺も驚いた。猫になるのにこんなにも難易度が高いとは。思わずコムギさんを見るも、コムギさんは最初から猫だということを得意げにしているのか、目を細めて満足げな表情だ。
「ニャ~」
「はいはい、お安いですよ。この画面の一覧にある野菜を選んでお金を直接投入してください」
「え、この石板に?」
【野菜】 ワイルドキュウリ 銅貨×1
【野菜】 ガルス産ポテト 銅貨×1
【汁物】 ガルス産異世界風ヌードル 銀貨×2
【汁物】 アズリゼ風タコス 銀貨×3
ご注文はムギヤマ商会まで
魔導師の姉妹が規格外なだけで住人のほとんどは、人間と変わらないエルフたち。そんな住人から求められる商品はいたって普通だった。
求めてくるのはほとんど野菜ばかりだったが、注文一覧に出てくる野菜も日本で聞き慣れた野菜の名前を少しひねったようなものが多く、それがかえって売りやすさを感じている。
「ムギヤマ商会さん。野菜以外にも何かあるのか? 石とか弓とか、こう……なんだ、狩りに使えそうなやつだ」
「予算次第ですが、商品はいつでも注文出来ますよ」
「なるほどなぁ。お金がたまったらそん時は頼む!」
「お待ちしています」
エルフの年配者は買わずに見ているだけが多かった。だが、石板持ちの商人に対し好意的な人が多く、何よりライバルとなる商人がいないので俺にとっては凄くやりやすい場所に思えた。
売上のほとんどは銅貨や銀貨で、商品構成的に金貨を投入されることはなかったものの、ここでも出来るという手ごたえを感じられた。
銅貨や銀貨は金貨に両替が出来るようになったので、今までのように金貨だけを狙い撃ちする必要がなくなったのが大きい。
エルフ住人たちからある程度満足してもらったので、俺はもう一度城の方に行ってみる。
「あっ、トージさま。お探ししていました。氷属性に決めましたので、お願いします」
「そ、そうですか」
……やはり逃れられないんだな。こればかりは発注してみないと何とも言えないが、物ではなくて記憶や知識を習得させるとなると、もはや神の領域になりそうな気がしないでもない。
とりあえず発注してみるか。
【発注者】 ムギヤマ・トージ
【魔法】強化版氷属性
【対象】アズリゼ王国の魔導師マリヤ
【必要石】魔導石×5
覚醒後、一定期間魔法使用不可
「マリヤさん。魔導石はお持ちですか?」
「は、はい! いくつ必要ですか?」
「五個ですね。それと……」
一時的に魔法が使えなくなることをマリヤに伝えると、一瞬だけ落ち込みを見せたが反属性を覚えられる嬉しさが勝ったのか、彼女は静かに頷いてみせた。
それにしても流石魔導師だ。
俺が王国を訪れる可能性があると魔導師ルーナから聞かされたあと、この日のために魔導石をいくつも用意していたらしい。俺が散々集めるのに苦労している魔導石をこうも容易く手に入れられるのは、正直羨ましい限り。
「……それでは注文しましたので、そのままお待ちください」
「え、何もしなくてもいいんですか?」
「そうですね。何かが起きるとかはないと思いますよ」
魔法が一時的に使えなくなるペナルティがある時点で、それが分かったら多分本人はすぐ気づくだろうな。そうなると注文した俺が出来ることは何もなくなる。
【ムギヤマ・トージ様】
【注文は受理されました】
一応注文確認が出るんだ。
その直後――
「――あっああぁぁぁ……魔力の流れ、気配が全部全部……!! うそ、うそ……」
どうやらマリヤの体に変化が表れたみたいだ。痛みとかそういうのはなさそうだが、ショックを受けているのは分かる。
こうなると落ち着くまで話しかけない方がよさそう。
「トージ。お待たせニャ~ウニャ? なにかあったかニャ?」
「実は――」
「――なるほどニャ。マリヤの体内から魔力が全く感じられなくなっているニャ」
コムギさんはマリヤの身に何かあったことをすぐに理解するも、特に驚く様子を見せない。
「今さら言うのも変だけど、やっぱりネット倉庫で注文したら駄目なやつだったんじゃ?」
「仕方ないニャ。魔導師が希望したならトージは何も悪くないのニャ。ジーナも同じ意見だニャ?」
コムギさんと討論していたジーナも妹の様子を気にしていたようで、冷めた表情で妹を眺めている。
「……そう思うわ。妹が選択したものをとやかく言ってもどうしようもないことだわ。まぁ、今はショックが大きいだろうけれど魔法が使えなくなるのは本当に一時的ですもの。すぐに元気になると思うわ」
魔法でそこそこショックを覚えているということは、スキルだとどうなるのか。俺の場合、魔導宅配ボックスを自由に出せるようになっただけで特にペナルティ的なものはなかったが。
魔導師が得ようとするスキルだとしたら、結構なペナルティをくらうのでは?
「スキルを付与する……で、合ってますか?」
「大したスキルでもないのだけれど、猫変化スキルにするわ」
「猫変化!?」
これは意外だ。魔導師であれば何らかのスキルが備わっているはずなのに、王国の女王が猫になることを希望するとは。
エルフの王国を治めているはずなのに、何で猫になりたいのか。
「理由は何でしょうか?」
「コムギに負けたくないからよ!」
「へ?」
「コムギは護衛に長けた猫。だからこそあなたのような商人を得られて、世界中を歩き回っている。そんなのって悔しいじゃない! あたくしだって外を自由に動き回りたいわ!」
というか、猫になるスキルなんてあるのだろうか?
「本当にそれでいいんですか?」
「……悪い?」
「い、いいえ」
しかし女王が望んでいるなら叶えるしかない。
【発注者】 ムギヤマ・トージ
【内容】 猫変化スキル
【対象】 エルフ女王
【必須】 魔導石×2222
発注可能期間200日間 初回発注限定
「あの~、魔導石が2222個必要で期間限定みたいなんですが」
「そんなに!? そんな用意は無いわ……期間はどれくらいの猶予があるというの?」
「およそ200日間ですね」
「…………随分と厳しいのね。くっ……スキルは諦めるしか……」
俺も驚いた。猫になるのにこんなにも難易度が高いとは。思わずコムギさんを見るも、コムギさんは最初から猫だということを得意げにしているのか、目を細めて満足げな表情だ。
「ニャ~」
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