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商人と猫
第42話 ウォルフ村の娘、トージを頼る
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コムギさんとスキルのどちらかを選択だとか、魔導師はつくづく人を悩ませる存在というべきかなんというか。
そんなこんなで、俺は晴れて鑑定スキルを得られた。もちろんコムギさんとはそのままだ。
彼女とはこれからも良好なパートナーとして少しでも長く旅を続けていけたら、それだけでも俺は幸せな気持ちになれる。
――ところ変わって、俺たちは今、静かな草原地帯に車を止めて休んでいる。アースガルフから出てきたばかりではあるが、ここがどこなのか分かっていない。
とはいえ、どこかに必ず導いてくれるのが魔導車のいいところ。
「フニァァァ~……のんびり出来るっていいニャ~」
「そうですね」
「また眠くなってきたニャ」
「コムギさんは寝てて大丈夫ですよ。着いたら起こしてあげますから」
……そう言いつつ、俺も少しだけ寝ることにした。
魔導車は自動運転が可能となっているが、それは次の目的地がある程度決まっている時に限る。目的を決めていない場合、無駄な燃費を食わないためにも動かさない方が安全だからだ。
それに次なる目的地については魔導師ローニから特に何も聞かなかったというのもあって、どこに町があって拠点があるのか見当がつかない。
商売に限っていえば、焦ったところで何かが進展するでもないのを知っているだけに何とかなるだろう精神で動くことにしている。
まぁ、旅ってそんなものだろうし。
魔導師ルーナからの急かしも今はあまりなくなったので、今はとにかくコムギさんとの時間を大切したい。
コムギさんが眠っている間に俺だけ動くのもあまり良くないし、危険地帯に進入したとしても外に出ることが出来ないため、俺の判断で移動するのは控えなければならない。
そんなコムギさんの寝顔を眺めていたら、俺もウトウトしながら次第に窓に寄り掛かる感じで眠り始めた。
「ガリ……ガリガリ」
……?
気のせいか窓の外から何かが爪を立てているような音がする。確か停車中でも魔導車は魔物に感知されないはず。
それが何で音が聞こえているんだ?
コムギさんを見ると、とても気持ち良さそうに寝ていてとてもじゃないが起こしたくない。
仕方なく窓から見えている外の景色に目をやると、そこには獣が一匹だけ座っていて、しかもこっちを見ているような気がした。
まさか窓を叩いていたのはあの狼か?
何となく目が離せないでいると、狼はこっちの様子を窺いながらゆっくりと近づいてきているように見える。
参ったな。まさか高い知能を持った獣なんだろうか。魔導車に守られているとはいえ、このまま眺めているわけにもいかないしどうしたものか。
一瞬だけコムギさんを見るも、スヤスヤ寝ていてやっぱり起こしづらい。
コムギさんを頼るのは極力なしの方向で――そう思いながら外を見ると、そこに狼の姿はなく、一人の少女の姿があった。
あれっ? 人間……なわけないよな?
少女は窓のすぐ近くにきて、握りこぶしで窓をコンコンと叩いてくる。見た目は完全に人間の少女のようだが、口を開いて何かを訴えてきている感じには見えない。
「フニゥゥ~……フニャ? トージ、どうしたのニャ?」
「あっ、コムギさん」
何らかの気配を察したのか、コムギさんが目を覚ましてくれた。
「えっと、それがその……窓の外に女の子がいまして」
「ニャ?」
「あ、あれ? さっきまでいたのに……」
幻覚でも見ていたのか?
そう思った直後、コムギさん側の窓にさっきの少女が覗き込む姿勢で姿を現した。
「ニャニャ!? び、びっくりしたニャ~……むむっ?」
「ど、どうしました? 何か……」
「フミュゥ~多分知っている子のような気がするニャ」
「え? 知り合いですか?」
可愛く首を傾げるコムギさんだったが、すぐに俺の顔を見ながらとりあえず外に出ることを提案してきた。
「大丈夫ですかね」
「外に出たら分かると思うニャ」
直接匂いを嗅げば誰なのか分かるかもしれない――ということで、外に出ることに。
「やっと気づいてくれた! トージ」
「え?」
「ウニャ、知らないニャ……」
外に出ると狼の姿はどこにも見当たらず、少女しかいない。そんな少女の近くに寄っても、コムギさんは首を傾げたまま分からないみたいだった。
「トージ。トージ? ピカピカ光る石をくれたトージ?」
……ん?
光る石って、もしやウォルフ村の狼の子供か?
「へ? まさかだけど、サシャさんの娘さん!?」
「……ん。サシャ、いま、忙しい。代わりにわたし、来た。一緒に行って欲しい」
「行って欲しいところがあるのかい? 魔導ボックスが欲しいとかじゃなくて?」
「違う。行きたいところ、危険。でも、トージなら行けるって聞いた」
護衛出来るほど俺自身が強くなったわけでもないんだけど、とりあえずコムギさんに訊いてみてからだよな。
「ニャ?」
そんなこんなで、俺は晴れて鑑定スキルを得られた。もちろんコムギさんとはそのままだ。
彼女とはこれからも良好なパートナーとして少しでも長く旅を続けていけたら、それだけでも俺は幸せな気持ちになれる。
――ところ変わって、俺たちは今、静かな草原地帯に車を止めて休んでいる。アースガルフから出てきたばかりではあるが、ここがどこなのか分かっていない。
とはいえ、どこかに必ず導いてくれるのが魔導車のいいところ。
「フニァァァ~……のんびり出来るっていいニャ~」
「そうですね」
「また眠くなってきたニャ」
「コムギさんは寝てて大丈夫ですよ。着いたら起こしてあげますから」
……そう言いつつ、俺も少しだけ寝ることにした。
魔導車は自動運転が可能となっているが、それは次の目的地がある程度決まっている時に限る。目的を決めていない場合、無駄な燃費を食わないためにも動かさない方が安全だからだ。
それに次なる目的地については魔導師ローニから特に何も聞かなかったというのもあって、どこに町があって拠点があるのか見当がつかない。
商売に限っていえば、焦ったところで何かが進展するでもないのを知っているだけに何とかなるだろう精神で動くことにしている。
まぁ、旅ってそんなものだろうし。
魔導師ルーナからの急かしも今はあまりなくなったので、今はとにかくコムギさんとの時間を大切したい。
コムギさんが眠っている間に俺だけ動くのもあまり良くないし、危険地帯に進入したとしても外に出ることが出来ないため、俺の判断で移動するのは控えなければならない。
そんなコムギさんの寝顔を眺めていたら、俺もウトウトしながら次第に窓に寄り掛かる感じで眠り始めた。
「ガリ……ガリガリ」
……?
気のせいか窓の外から何かが爪を立てているような音がする。確か停車中でも魔導車は魔物に感知されないはず。
それが何で音が聞こえているんだ?
コムギさんを見ると、とても気持ち良さそうに寝ていてとてもじゃないが起こしたくない。
仕方なく窓から見えている外の景色に目をやると、そこには獣が一匹だけ座っていて、しかもこっちを見ているような気がした。
まさか窓を叩いていたのはあの狼か?
何となく目が離せないでいると、狼はこっちの様子を窺いながらゆっくりと近づいてきているように見える。
参ったな。まさか高い知能を持った獣なんだろうか。魔導車に守られているとはいえ、このまま眺めているわけにもいかないしどうしたものか。
一瞬だけコムギさんを見るも、スヤスヤ寝ていてやっぱり起こしづらい。
コムギさんを頼るのは極力なしの方向で――そう思いながら外を見ると、そこに狼の姿はなく、一人の少女の姿があった。
あれっ? 人間……なわけないよな?
少女は窓のすぐ近くにきて、握りこぶしで窓をコンコンと叩いてくる。見た目は完全に人間の少女のようだが、口を開いて何かを訴えてきている感じには見えない。
「フニゥゥ~……フニャ? トージ、どうしたのニャ?」
「あっ、コムギさん」
何らかの気配を察したのか、コムギさんが目を覚ましてくれた。
「えっと、それがその……窓の外に女の子がいまして」
「ニャ?」
「あ、あれ? さっきまでいたのに……」
幻覚でも見ていたのか?
そう思った直後、コムギさん側の窓にさっきの少女が覗き込む姿勢で姿を現した。
「ニャニャ!? び、びっくりしたニャ~……むむっ?」
「ど、どうしました? 何か……」
「フミュゥ~多分知っている子のような気がするニャ」
「え? 知り合いですか?」
可愛く首を傾げるコムギさんだったが、すぐに俺の顔を見ながらとりあえず外に出ることを提案してきた。
「大丈夫ですかね」
「外に出たら分かると思うニャ」
直接匂いを嗅げば誰なのか分かるかもしれない――ということで、外に出ることに。
「やっと気づいてくれた! トージ」
「え?」
「ウニャ、知らないニャ……」
外に出ると狼の姿はどこにも見当たらず、少女しかいない。そんな少女の近くに寄っても、コムギさんは首を傾げたまま分からないみたいだった。
「トージ。トージ? ピカピカ光る石をくれたトージ?」
……ん?
光る石って、もしやウォルフ村の狼の子供か?
「へ? まさかだけど、サシャさんの娘さん!?」
「……ん。サシャ、いま、忙しい。代わりにわたし、来た。一緒に行って欲しい」
「行って欲しいところがあるのかい? 魔導ボックスが欲しいとかじゃなくて?」
「違う。行きたいところ、危険。でも、トージなら行けるって聞いた」
護衛出来るほど俺自身が強くなったわけでもないんだけど、とりあえずコムギさんに訊いてみてからだよな。
「ニャ?」
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