猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら

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商人と猫

最終話 コムギさんといつまでもいっしょ

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「――あ」

 二人とも倒れ込んでる!

 ……ということは、シャムガルドは向こうの世界に飛べなかったんだ。

「コムギさん、二人の元に行こう!」
「惜しいけど地面に降りるニャ」

 俺に抱っこされたことで元気を取り戻したのか、コムギさんは地面に降りて二人が倒れているところに走っていく。

 あぁ、抱っこタイムが……。

「トージ~! 私はシャムガルドを起こすニャ。トージはリルルの様子を確かめてニャ~」
「おっけ~」

 俺とコムギさんで手分けして二人の様子を見に行くことに。リルルが倒れているところに近づくと、彼女は狼の姿ではなく少女の姿で倒れていた。

「リルル、リルル。大丈夫かい?」
「…………」
「う~ん……起きそうにないのは困ったな」

 女の子だから下手に触れるわけにもいかないし、かといって大声で目を覚まさせてあげるのは何か違う。

「――全く、世話の焼ける娘だね」

 触れていいのか迷っていると、リルルは誰かの声と同時に抱きかかえられていた。

「えっ?」
「やぁ、トージ! あたしの娘がすっかり迷惑をかけたようだね」
「サシャさん!? あれ、何でここが?」
「あははっ! そりゃあ分かるさ。娘が暴走状態になって大気を不安にさせたくらい気づくさ!」

 相変わらず活発な狼母ちゃんだな。彼女がフェンリルだったのは訊かないでおくが。

「それに少しの畏怖も感じないなんて、流石はあたしの見込んだトージだね! フェンリルと聞いてもちっとも変わらないあんたのそういうとこが好きだよ」
「あっ……ど、どうも」

 俺が訊かなくても気づいてたなんて。

「リルルが迷惑をかけたね。あの子、コムギちゃんは大丈夫そうだけど大事にしてやんなよ?」
「もちろん!」
「あたしはこのまま村に帰らせてもらうよ。この場所はあまり気分が良くないのでね」

 青空が見えていて空気が澄んだように思えるのに、俺には分からない何かがある場所なのか。

「あ、それと今すぐとは言わないけど、後で落ち着いた時にでもあんたが出す魔導ボックスを購入したいから、ウォルフ村に寄っておくれよ。車があるんだろ? それで来たらいいさ! トージはあたしたちにとって特別な人間だからね。じゃあ、頼んだよ!」

 ……あっという間にいなくなってしまった。

 おっと、コムギさんのところに行かないと。

「あっ、トージ! サシャが来ていたのが見えたニャ。リルルは大丈夫だったのかニャ?」
「サシャの様子を見る限りでは問題は無さそうだったよ。シャムの様子はどう?」
「とっくに起きてるけど気まずそうなのか、ちっとも起きてくれないニャ」
「あぁ~……」

 コムギさんが大変な時に転移しようとしてたもんな。介抱するコムギさんに何も言えそうになくて寝たふりしてる感じか。

「シャム。気持ちはわかりますけど、そろそろ起きてくれませんか?」
「トージが穏やかなうちに起きた方がいいと思うニャ」

 俺は滅多に怒らないが、コムギさんはあえてそれを強調してシャムガルドに声をかけたんだな。

「わ、分かったのだ」

 シャムガルドは幼女姿に戻り、バツの悪そうな顔をしながら立ち上がる。

「どうしてトージを向こうの世界に連れて行こうとしたのニャ?」
「ボクも日本に行きたかったのだ……。だからあの狼の力が暴走しているうちに行けると思って、ムギヤマくんの力を借りようと思ったのだ。そうじゃないと簡単には行けなくて、だからごめんなさいなのだ……それから、コムギがどうなるかなんて気にしなくてごめんなさいなのだ」

 シャムガルドはすっかり落胆しているだけでなく、自分がしたことの恥ずかしさを感じて力なく首を前に垂らしている。

「トージは良かったのニャ?」
「うん?」

 落ち込むシャムガルドはそのままそっとしておくとして、コムギさんが俺に何かを聞きたいみたいで俺の顔をじっと見てきた。

「もしかしたらトージにとって最後のチャンスだったかもしれないニャ。磁場を狂わせるようなあんな強大な力はもう生まれないかもしれないのニャ。それなのに、トージはそれをやめさせようとしていたニャ。何でニャ?」

 意識はリルルの方にあったはずなのに、コムギさんは俺の選択を気にしてくれていたのか。

 やっぱりこの世界に残ることを決めて正解だった!

「俺はコムギさんのパートナーだからね。だから、コムギさんを残して元の世界に戻るつもりはなかったんだよ。コムギさんと一緒にいたいんだ。コムギさんも同じ気持ちかな?」
「ニャ、ニャウ……私が決めた主には違いニャいけど、何だか恥ずかしいニャ~。でもでも、トージが大好き! 大好きなトージなのニャ~! ずっとずっといつも一緒にいてくださいなのニャ!」

 おおおおおおおおお!!!

 猫が好きで本当に良かったし、この世界に招かれて本当に良かった。

「コムギさん。コムギさんと俺はいつまでも一緒だよ!」

 ~おしまい~




完結しました!
ここまで応援、お読みくださりありがとうございました!

作風は違いますがおじさんが主役の新作を公開しました。
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