猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら

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アフターストーリー 1

おつかいネコさん、お役立ちな物を拾ってくる

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 移動販売スキルなどが使えなくなって以降(正確には石板とか魔導車が不具合)、コムギさんがおつかいネコさんとして外に出かけるようになった。

「やぁ、トージさん! コムギさんのお帰りが待ち遠しいのかい?」
「はは、いやぁ……」
「トージ。おつかいネコさんの出迎えご苦労さん! 今日はどこまでお出かけしてるんだろうな?」
「どうでしょうね」

 ……などと、すっかり猫好きのおじさんとして、メルバ漁村ではちょっとした有名人となってしまった。

 漁村の人たちに移動販売を宣伝する前だったのが幸いしたというのもあるだろうけど、漁村の人たちには俺が商売をしている人とは思われていない。

 思われているのは、おつかいする猫さんの帰りをのんびり待つおじさんとしてである。

 要するにただの猫好きおじさん。

 それでも、

「お帰り、コムギさん!」

 こうしてコムギさんの帰りを待つだけの生活でも楽しいと思えるようになったのだから、まさにスローライフを満喫していると言っても過言じゃない。

「ただいまなのニャ~!!」

 おつかいネコとして動くコムギさんは、部屋の前で待つ俺に思いきり飛び込んでくる。

 その度にモフっとした感触が自分の懐に訪れるので、今やコムギさんの帰りを待つのが待ち遠しくてたまらない。

 コムギさんの言葉は当然ながら俺にしか聞こえていないので、漁村の人たちから見れば微笑ましい主人とネコさんの光景である。

「ウニャ~ウニャニャ~」

 コムギさんも嬉しそうに俺に抱きついてくるのがとても愛おしく感じる。

「コムギさん、今日も何かを拾ってきたのかな?」
「あっ、そうニャ! 今日は変わったものを色々拾ってきたのニャ」
「そっかそっか。それじゃあ、お部屋に入ろうか」
「ニャ」

 コムギさんはこう見えて普通の猫ではなく聖なる力を宿した聖獣さん。俺のスキルに準じたスキルをコムギさんは有していて、特に亜空間収納なんかは有効活用している。

 そんな彼女が最近おつかいで拾ってくるのは、部屋に飾れそうな装飾品や鑑賞品の数々だ。

 最初こそガラクタと呼ばれる物ばかり拾っては反省を見せていたが、徐々に行動範囲を広げて土中に埋まっている調度品なんかを見つけられるようになった。

 元々コムギさんは俺が何かを言わなくても自由に外を歩き回り、自分が食べたいものをどこかで見つけて一人で食べていた。

 しかし俺と一緒に暮らすようになってからは、おつかいと称して食べられそうなものを探してくるようになった。

 今のところまだ食べ物には至ってないが。

「そろそろいいかニャ?」
「うん、何かな?」
「待ってニャ。沢山あるからトージに見て欲しいニャ」

 そう言うとコムギさんは、見えない壁から沢山の物を可愛い手で取り出した。空間からゴロゴロと部屋の床に転がる。物のほとんどは古びた花瓶や壺が多めだが、一つだけ変わった容器が床に転がってきた。

 俺は唯一残った鑑定スキルを使って、それらを見てみる。

「……うん? これはフラスコ容器?」
「ウニャ。砂浜に流れていたものニャ。空っぽで綺麗だったから拾ってきたニャ~」

 フラスコ容器のイメージといえば、ポーションとかの薬品類が思い浮かぶ。そういうのを昔、向こうの世界のアニメとかで見た記憶がある。

 こういうのが落ちてるってことは、そう遠くないところに冒険者が歩いてそうな場所があるということになるけど。

「コムギさん。今日はどこまで行ってきたの?」
「砂浜沿いをずっと歩いてたニャ。壺とかは森の土中にあったものニャ」
「そっか。土中にあるものは昔のものかもしれないけど、砂浜のはどこからか流れ着いてきたのかもしれないね」

 ポーションかどうかはともかく、コムギさんが拾ってきたものをいつものように手洗いして、部屋の棚に並べておいた。

 泥だらけのお皿や欠けたコップなんかは念入りに水洗いをして便利に使わせてもらっているが、それらは基本的に年代物ばかり。

 年代物だったら中にはレアなものもあるはずで、それなら磨いたり直したりすれば漁村の人たちに使ってもらえる――と思ったのが理由だ。

 それに移動販売スキルがなくても、鑑定スキルで何らかの商売が出来ればいいに越したことはない。

 ワンルームの部屋でのんびり待つのも悪くないけど、俺としてもコムギさんが拾ってくるもので生計を立てていけたらいいなと考えるようになった。

「トージ? 頭を抱えて考え込んでいるけど、大丈夫かニャ?」

 ポーション容器が見つかったことで考え込んでいたら、コムギさんが膝の上に乗っかりながらじっと俺の顔を眺めていた。

「大丈夫だよ。ごめんね、心配かけちゃったね」

 とても心配をさせてしまったので、コムギさんの背中を軽く撫でてあげた。

「フニャ~ニャウゥ~」

 食べる物は漁村で何とかなってるけど、実用的な物で商売が出来るようになれば――そんなことを思いながら、今日もコムギさんをひたすらモフりまくった。
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