猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら

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アフターストーリー 1

見つけたニャ!

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 いつものように、おつかいするコムギさんの帰りを待ちながら部屋で拾われてきた古びたお皿や鍋の汚れを磨いていた時のことだった。

 突然コムギさん用にこしらえたペットドアから、勢いよく何かが入って来た感じがあった。

「えっ!? な、何だ何だ?」

 動きが早すぎて思わず声を上げてしまったが、部屋に入って来たのは――

「――ウニャニャ、興奮しすぎちゃったニャ」

 てっきり全く別の動物が入り込んできたかと思っていたけど、部屋に入り込んでいたのはコムギさんだった。

「コムギさんどうしたの? まだおつかいから帰ってくるには早いよね?」
「そ、そうニャ! トージ!! 見つけてしまったニャ!!」
「? 何を見つけたの?」

 いつもそれほど興奮することのないコムギさんが、珍しく興奮しながら俺を見つめてくる。

 すると、コムギさんは口をもにょもにょさせながら俺の顔にダイブしてきた。よほど嬉しいことがあったのか、滅多にしてくれない顔すりすりで俺を一瞬で幸せにしてくれた。

「フニャ~……」
「落ち着いたかな?」

 俺の顔にすりすりと甘えつつ、興奮状態から落ち着いたコムギさんが俺の目を見ながら膝の上に手をちょんちょんしてゆっくりと話し始める。

「見つけたニャ! 大きな穴ニャ!!」
「大きな穴? もしかしてその中から沢山の物が出てきたのかな?」
「違うニャ! 拾えるものはなかったニャ。だけど、大きい穴なのニャ! トージにも見て確かめて欲しいニャ!」
「え? 俺にも? もしかして歩いて行けるところにあるの?」

 コムギさんがおつかいに行く範囲は基本的に漁村の周辺。部屋で待つ俺をなるべく心配させたくないと思ってくれているようで、夕方の明るい時間にきちんと帰ってくれる。

 そう考えると、コムギさんが見つけた大きな穴のある場所はここから比較的近い場所にあるということに。

「早く早く、行くニャ~!」

 そう言ってコムギさんはペットドアから外に出て行くので、とりあえず手ぶらで外へと向かう。

 岩山の部屋から外に出ると、まだ空は明るく漁村の人たちが沖の方で漁をしている姿が確認出来る。

 ……普段は部屋に籠ってのんびりしてるから気づかない光景だ。

 それはともかく、よほど興奮しているのかコムギさんは俺をちらちらと気にしながらも、森の方へと早歩きしている。

「わわわ、待って待って!」
「こっちニャこっちニャ~」

 メルバ漁村は漁村ではあるが、村から一歩外に出るとすぐに深々とした森に囲まれる。その森はかなり広く、徒歩ではそう簡単に抜け出せないくらい。

 正直言って、魔導車じゃなければメルバ漁村を見つけられなかったんじゃないかと思うくらいの森が広がっている。
 
 考え過ぎだろうけど、メルバ漁村の存在をあまり知られたくない、もしくは辺境すぎてあまり漁村を訪れる人間が今まで無かったからこその森なんじゃないだろうか。

「トージ~! こっちニャ!」

 ……おっと、考え事をしてる余裕はなかったな。

「もうすぐ追いつくよ」

 若干の息を切らせながら少しひらけた場所にたどり着くと、そこはコムギさんが日向ぼっこをするのに丁度いい場所で、先に着いていたコムギさんが気持ち良さそうに座って待っていた。

 彼女の周りを一応気にして見てみるも、差し当たって大きな穴は見当たらない。分かりやすく視界に飛び込んでくるのは、誰も使っていない古びた小屋だけだ。

「コムギさん、お待たせ!」
「待ってたニャ」

 尻尾をフリフリしながら機嫌よく俺を見るコムギさん。そんな彼女からは、特に案内するといった動きは見られない。

「あれ、大きな穴はどこなのかな?」
「小屋の中にあるニャ。そこに入ってみればすぐに分かるニャ」
「え? 小屋の中?」
「ウニャ」

 予想はしてたけどやっぱり小屋なのか。

 小屋の外観をぐるりと一周して見てみるも、誰かが長い年月をかけて使っていたくらいの年季が入った造りに見える。

 しかし長く伸びきった蔓がいくつも見えるうえ、小屋を支えている側面の柱は日当たりが悪いせいか苔が相当数こびりついていて今にも崩れそう。

「トージ。小屋の中に進んでニャ」
「廃屋みたいだけど、入っても大丈夫なのかな?」
「大丈夫ニャ! 何度も入って確かめたけど、人間が出入りする気配は全く感じられなかったニャ」

 コムギさんはおつかいと称してお出かけしてるけど、結構冒険してるんだなぁ。まさか長年放置された小屋の中に入ることになるとは想像してなかったけど。

 コムギさんだけが入れるくらいの隙間に手を差し込んで小屋の扉を開けて中に入ると、小屋の中は使い古され今は錆びついたつるはしや、農耕に使っていたであろう鍬が立て掛けられている。

 小屋の中は今住んでいるワンルームくらいの広さしかなく、扉を開けてすぐに部屋といった感じだ。

 しかしワンルームと違うのは奥行きがあることだ。風が奥から吹き込んでいて、明らかに奥に隙間か穴があるということが分かる。

「トージ~! こっちニャ~!!」

 俺を呼ぶコムギさんの声が気のせいか響いて聞こえる――ということは、かなり大きな穴があるということになるが。

 まずは大きな穴があるのかを確かめるだけということで奥へと足を進めると、そこには朽ちて壊れた鉄格子が地面に倒れていて大きな穴が広がっていた。
 
「こ、これ?」
「ウニャ! この先は洞窟に違いないニャ」
「コムギさんは入ってないの?」
「見つけただけニャ。入るならトージと一緒に行くのがいいと思ったニャ」

 な、なんて健気なんだ。

 おつかいで出かけてる時は自分だけで動いているのに、大きな穴を見つけたら一緒に行こうとするなんて、あまりに可愛すぎる!

「どうするニャ? このまま入ってみる?」
「ん~……手ぶらで来ちゃったからね。明日また来てみようか。洞窟になってるなら、中で珍しいものを拾えるかもしれないからね」

 もしかしたらそこまで奥深い洞窟じゃないかもしれないし、出来る準備をしてから入ってみないと。

「それもそっか~。流石トージニャ! それじゃあお家に帰ることにするニャ~」
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