猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら

文字の大きさ
60 / 73
アフターストーリー 1

コムギさん、誇り高き猫のプライドを見せる?

しおりを挟む
「もしかして、コムギさんは初めからクウくんのことが分かってたの?」
「ニャフフ。当然なのニャ!」

 猫同士何か通じるものがあってもおかしくないか。人間になれるのはいいとしても人間のニオイが、とか言ってたしやっぱり心配だな。

「とにかく、彼が心配だし外に行こう!」
「仕方ないニャ~……ウウニャ」
「よし、それじゃあ……んん? コムギさん、何かな?」

 部屋のドアを開けて外へ出ようとすると、コムギさんがズボンの裾に爪を引っかけている。

 コムギさんはとても可愛い猫さんだけど、今まであからさまな甘え方はしてこなかった。そんな猫さんが裾に爪を引っかけて無言で訴えてくるなんて、俺が外に行くことに何か不満でもあるのだろうか。

「……抱っこして欲しいニャ」
「抱っ――!」

 なんというおねだり!

 あまり抱っこが好きじゃないコムギさんの方から俺におねだりをしてくるなんて、どういう心境の変化があったんだろう?

 しかしこんな機会は滅多にないし、とにかく抱っこしてあげないと。幸いにして落ち着いた状態だ。

 まずはコムギさんの後ろに回って、両脇に片手を入れながらゆっくりと持ち上げ、あとはお尻を支えながら抱き上げ、俺の体に引き寄せて密着させれば。

「フニャゥ」

 ……良かった、正解だった。

「え、えっと、このまま外に出ればいいのかな?」
「ウニャ」

 いつもの言葉を話さないということは、愛猫として外に出してほしいってことみたいだ。

 ――ということで、村の人が集まりやすい宿屋近くに足を運ぶと、そこには一人の少年が村の人たちに囲まれ、話をしているのが見える。

「もしかして彼がクウくんなのかな」
「ニャ~」

 コムギさんは頑なに言葉を使ってくれず、単なる猫鳴きしかしてくれない。そんなコムギさんを抱っこしながら彼に近づいた。

「あ! トージだ! このトージがおいらを居候させてくれるおじさんなんだぞ。だから、おいらを信じて欲しいぞ~」

 居候?

 ああ、そうか。メルバ漁村は人が少ない村。そこにいきなり少年が現れたら、怪しまないわけがない。

 それで囲まれているのか。

「トージ。この子の言うことは本当か?」
「ん~まぁ、そうなりますね」
「そうなのか。いきなりお前さんの家から出てきたから、てっきり泥棒かと思って取り囲んでしまったんだが、そうか居候なのか」

 コムギさんと俺が岩山の部屋で暮らしてることは周知の事実。

 だが、猫はともかく人間の子供がいきなり出てきたら、漁村の人間が警戒するのは仕方がない話かもしれない。

 ここの漁村は外からの訪問者に目を光らせているし、無理もない話だ。

「お~お~、コムギさんは相変わらず可愛い美人さんだな。抱っこされて出てくるなんて、本当に可愛い猫だな!」
「ありがとうございます。コムギさんは本当に美人さんなんですよ~」
「ニャ~」
「おぅおぅ……猫はいい! 実にいい!」

 などなど、この漁村の人は猫に優しくしてくれる。村の中心にある宿屋に猫さんを置いているだけあって、守り神かなにかだと思っているせいもあるかもしれない。

「……ここは猫を歓迎する村なのか~?」
「そうだ。冷たい対応をしておいて悪いが、ここは猫神のおかげで栄えた漁村。無論、人間の少年よりもな!」
「そ、そうだったのか……おいら、そうと知ってたら人間に化けることなんてなかったのに……」

 人間に化ける能力で打ち解けようとしていたっぽいが、猫のままで良かったんだな。

「ん? ……なんだって? お前さん、人間じゃないんじゃあるまいな?」
「どうした、どうした? まさか魔物か?」

 やばいな、クウが疑われ始めている。

「しょうがないニャ……」
「え?」

 いつもの言葉を話したと思ったら、コムギさんが俺の胸元から飛び跳ねて囲まれているクウのところに近づいた。

「ニャニャニャニャ! ニャニャ!!」

 ……などと、クウを守る感じで漁村の人々を威嚇し始めた。

「お、お前……何でその姿でおいらを?」
「ニャニャ!! フゥゥ……!」

 クウが動揺を見せる中、コムギさんは一歩も引かずにクウを守ろうとしている。

「お、おい、トージ……どうしてこの子は怒ってるんだ?」
「なぜコムギさんがわしたちに牙を向ける?」
「えっと、その少年からは悪い気配は感じられない……だから、取り囲むのは許せない――と言ってると思います」
「なんだ、そうなのか」
「それはすまなかったな。トージとコムギさんがそう言うなら間違いないんだろ。悪かったな、少年」

 コムギさんの威圧と俺の言葉で、漁村の人々はすぐにこの場から引いて宿屋の中や、酒場へと入っていく。

 この場に残ったのは俺とコムギさん、クウだけになったのでクウの手を引いて部屋へと連れ帰ることにした。

「ごめんよ、コムギ、トージ。おいら、人間の姿なら簡単だと思ってたんだ。だけど、おいらはまだまだ未熟だった」

 クウはそう言ってすっかり落ち込んでいる。

 そんな彼の言葉を聞いて、コムギさんはなぜか俺を見つめながら――

「トージはどう思ってるのニャ?」
「え? どうって、人間の姿に化けること?」

 コムギさんは無言で頷いている。

「それはどうだろうね、人間だからって警戒を持たれないかというとそうじゃない時があるし、クウくんがしたことが間違っていたとも言えないし……ただ、メルバ漁村は外から来た人間に警戒してたから今回は仕方なかったんじゃないかな」

 俺とコムギさんが初めてメルバ漁村に来たときも俺に警戒してたし、辺境なりのルールがあったというかなんというか。

「だから、クウくんは悪くないよ」
「本当か? おいら、人間に化けても怒られないか?」
「そうだね、今度は俺と一緒に外に出て村を歩けば、すぐに馴染むと思うよ」
「分かった。そうする! トージと一緒に歩く!」
「うんうん」

 素直に返事をしてくれたので、人間姿のクウの頭を軽く撫でてあげた。

「よ、よせやい。そういうのは猫の時に撫でておくれよ!」

 そう言ってクウは照れてみせた。

「……ところでトージ」
「何かな、コムギさん」
「私も人間になれるって言ったら、トージはどっちがいいのニャ?」
「え?」

 まさかのコムギさんも人になれる?

 いや、力のある猫さんなんだからなれない方がおかしい話だ。しかし獣人の姿にすらなったことがないコムギさんが人間の、それも女性の姿になるとすると俺はどっちを選ぶ?

 そんなのは決まっている。

「もちろん、俺は……」

 ここで選択肢を間違えばコムギさんが家出するかもしれない。でも俺の答えは決まってる。

 俺が選ぶのは――

「――私は誇り高き猫なのニャ! 一時的にご主人様を喜ばす真似をするつもりがないニャ。だからトージにはこれからも今の私をたくさん可愛がってほしいニャ~」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

元・神獣の世話係 ~神獣さえいればいいと解雇されたけど、心優しいもふもふ神獣は私についてくるようです!~

草乃葉オウル ◆ 書籍発売中
ファンタジー
黒き狼の神獣ガルーと契約を交わし、魔人との戦争を勝利に導いた勇者が天寿をまっとうした。 勇者の養女セフィラは悲しみに暮れつつも、婚約者である王国の王子と幸せに生きていくことを誓う。 だが、王子にとってセフィラは勇者に取り入るための道具でしかなかった。 勇者亡き今、王子はセフィラとの婚約を破棄し、新たな神獣の契約者となって力による国民の支配を目論む。 しかし、ガルーと契約を交わしていたのは最初から勇者ではなくセフィラだったのだ! 真実を知って今さら媚びてくる王子に別れを告げ、セフィラはガルーの背に乗ってお城を飛び出す。 これは少女と世話焼き神獣の癒しとグルメに満ちた気ままな旅の物語!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

処理中です...