猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら

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アフターストーリー 1

新スキルとコムギさんの関係

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 新スキル――もしかして、グラール・プレートで空白だったやつだろうか。だとしても、亜空間スキルと全く異なる感じなのに何がきっかけで発動に?

 思わず自分の手を眺めるも、特に変わった様子は見られない。

「ニャゥゥ……トージが触れたところは新しくなったというより、元の状態に戻ったといったほうが正しい気がするニャ」

 コムギさんが扉回りの壁を見つめている。

「新築のように見えたけど直した感じなのかな?」
「まだ何とも言えないニャ。とりあえず、トージは自分のスキルを確かめた方がいいニャ」
「あ、それもそうだね」

 何で壁が綺麗に直ったのかを確かめるにはそれしかないか。俺は手提げ袋に入れていたお皿を手にして、眺めてみた。

 すると、見えた文字は意外なものだった。

 【スキル:レストア 生物は不可。聖猫依存】

 レストア?

 確かレストアって修復も含むけど、復元の意味合いが強かった気がする。日本にいた時に使っていたキッチンカーもレストア車だった。

 生物は不可ってなってるけど、物とか機械とかに限った話だし当然かな。それよりも気になるのは、聖猫依存の文字だ。

 聖猫はもちろんコムギさんのことだと思うけど、依存って何だろうか。コムギさんが聖属性の猫なのと関係が?

「どうだったかニャ~?」

 あれ、コムギさんには見えてないのか。依存する対象になってるのにコムギさんには見えないなんて。

 とりあえずお皿を見せれば何か反応してくれるかも。

「コムギさん。このお皿なんだけど……」
「ふんふん?」

 コムギさんは興味ありげにお皿を覗き込む。

 すると、少しだけお皿がぼやけて見えた――かに思えたが、すぐに元に戻っていた。コムギさん自体に何かが起きたでもなく彼女はお皿をじっと見つめてるだけだ。

 ただ、さっきまで見えていたステータスがまるで見えなくなっていた。お皿に手を触れて確かめるも、お皿からは何も反応が無い。

「ニャゥゥ~普通のピカピカなお皿ニャ」

 お皿に触れてるつもりが、気づいたらコムギさんの頭に手が!

「そっか。俺にしか見えなかったみたいだね」
「トージには見えてるニャ?」
「見えてたんだけど、見えなくなったよ」
「不思議なお皿だったんだニャ~」

 お皿に近づいたコムギさんに何かが起きるといったことは起きなかった。だけどコムギさんに依存するお皿というかスキルだとしたら、俺がレストアを使うとコムギさんの身に何らかの変化が生じてしまうのではないだろうか。

 あれ、というかお皿を使えば亜空間ネット注文が出来る?

「……う~ん?」

 試しにお皿に金貨を触れさせるも、ただのお皿なので何も起きない。だからといってコムギさんの背中に金貨を――とかしたくないし。

「トージ。小屋の中に入らないのニャ?」

 考え事をしていたら、コムギさんが扉を体で開けて小屋の中に入ろうとしている。

 俺は慌てて扉を開けようと取っ手を握ると、扉回りの木の壁が綺麗になっているおかげで木製の取っ手から錆で飛び出ていた釘や木片がすっかりと無くなり、素手で握りやすくなっていた。

 ……なるほど、復元されて元通りの状態になったんだ。

 とはいえ、小屋の壁はまだ朽ちかけが大部分を占めていて、完全復元には遠い。小屋の中も同じようにやらないと直らない可能性がある。

「ごめんごめん、今開けるね」

 グラール・プレートから見えていた俺のスキルは確認が出来なくなり、単なる綺麗なお皿になった。

 俺のスキルが使えなくなったわけじゃなく、物を介して見る必要がなくなっただけだと思うがどうだろうか。

「中は変わってないニャ~」
「うん。誰かが来た感じは全くなさそうだね」
「見えるのはクウの足跡くらいだニャ」

 結局、一日が経ってもクウは戻って来なかった。彼は元々探検猫だからそれが自然ではあるけど、キャットホイールに引っ掛かっていたのを見ただけに少し心配になる。

「どこまで行ったんだろうね」
「分かんないニャ。でも、そのうち戻ってくるだろうから気にしなくていいと思うニャ」

 流石は同じ猫だけあって、コムギさんの反応は簡単だった。

 ダンジョンに行こうと思えば行けるけど、今は小屋の中の掃除と使いそうもない古い農機具を片付けることにする。

「ウニャニャニャニャ!! もう嫌ニャ!」
「え?」
「小屋の外でお昼寝してくるニャ!」

 コムギさんは室内を歩くだけで手足に埃がつくのを嫌がって外に出てしまった。小屋の外なら日向ぼっこが出来るはずなので、そのまま外に行かせた。
 
 自由に外に出かける猫さんだけど、俺と一緒に暮らすようになってからいつも毛づくろいをして体を清潔に保つことを日課とするようになった。

 それもあってか、埃だらけの小屋に耐えられなくなったかもしれない。

 彼女がこの場にいなくなったので試しに倒れかけているテーブルに手をかざして、レストア出来るか試すことにする。

 ……少し光った後、テーブルは瞬く間に復元していた。俺自身に魔力の類いはなく、スキルを使ったからと疲れる兆候はない。

 そのせいか、調子に乗って錆びた鍬やつるはしに触れまくり、それら全てを元通りの状態に戻しまくった。

 この勢いで小屋の内装を綺麗にしてみるか。

 などと安易に考えていると――

「――おい、トージ!! 大変だぞ。コムギがぐったりしてるぞ!」

 明らかに慌てたようなクウの声が外から聞こえる。慌てて外に出ると、そこには土で汚れた猫姿のクウと、すぐそばで寝ていたコムギさんの姿があった。

「あれ、クウくん? コムギさんがなに?」
「疲れてぐったりしてるぞ。何かしたのか~?」
「えぇっ!? コムギさん! コムギさん~?」
「ウウニャ……眠いニャ」

 コムギさんの状態が心配で声をかけると、彼女はとても眠そうにしているが、起き上がれないといった状態ではないように見える。

 しかし、外で寝ていただけなのに何でこんな状態になっているのか。

 ……いや、待てよ?

 まさか、レストアスキルを使ったことでコムギさんに影響が出たのでは?

「トージ。おいら、拾ってきた物を中に運ぶぞ~」
「あ、うん」

 クウはコムギさんの状態を気にしつつも、小屋の中へと入る。ダンジョンに入ってたはずなのに何で外にいたんだろうか。

「ニャニャニャニャ!? どこだ~ここ!! 小屋が小屋じゃなくなってるぞ~」

 数秒後、小屋の中に入っていったクウの驚く声が外まで響いていた。
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