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アフターストーリー 2
コムギさんと悠久の魔導師
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奥へと先導するクウと共にいくつかの部屋を抜けていく最中、俺の視界に映ったのは、日本での生活が懐かしく思えるような家具や道具、家電といったものが部屋の中央に置かれている光景だった。
クウを救った時のキャットホイールも薄々感じていたが、やはりこのダンジョンは誰かが意図的に作ったものではないだろうか。
思い当たるのはただの人間ではなく、向こうの世界を知る――何度か日本へ行ったことがある魔導師の存在だ。それこそかつてコムギさんの主人だった魔導師であれば、ふんだんな魔力を使ってダンジョンを作るのはそう難しくない。
……だが、あの人がこのダンジョンに関わっているとは考えにくい。宝石を採掘出来るとはいえ、不確定要素が強いし儲けになる場所でもないから彼女ではないと考える方が無難だ。
「トージ~! ぼさっとするな~! この部屋を抜ければ別の部屋だぞ~」
「ごめんごめん。すぐ行くよ」
身軽なクウについていっているが、彼はコムギさんと同様に俺を待ってくれながら次の部屋へと走っている。
とはいえ、やはり自由奔放な猫さんでもあるので、俺が気づいた時には見失いがちだ。
「トージ、疲れてないか?」
「うん? 大丈夫だよ」
「そうなのか~? コムギが言ってたぞ。トージは人間ではおじさんと呼ばれていて、あまり無理はさせられないタイプだって。だからおいらもトージにはあまり疲れてほしくないって思うぞ~」
……まさかのコムギさん情報。
クウが言うように確かにおじさんではあるけど、こっちの世界に転移してから気のせいか少しだけ体が軽くなった気がするんだよな。特にコムギさんと一緒に動いてる時なんかは身軽に思えてしまうほど。
「そっか。でも大丈夫! まだ疲れてないよ」
「じゃあ走るのを早くしていいんだな~?」
「えっ?」
クウは一度止まって俺を見るが。
「よぉし、行くぞ~! トージ、走れ~」
そうかと思えば、急に走る速度を上げる。
「うわわっ、待って待って!」
そうか、やはり加減して走ってくれていたんだ。俺が平気だよと言ったせいですっかり置いていかれてしまった。
部屋と部屋を繋ぐ通路は全て真っ直ぐだから迷いようがないが、このままでは完全にクウを見失ってしまう。
そう思いながら、俺は自分なりに走るスピードを上げて彼を追いかけていた。
――のだが、いくつ続いているか分からない部屋を通り抜けて行くうちに、膝はがくがく、酸素が足りないと言わんばかりの息切れが俺の身に生じてしまった。
お、おかしい。こんなに体力がなかったっけ?
登山をするでもなくて、地下深くの部屋を何度も通り抜けているだけなのに。
クウを完全に見失ったこともあって、俺はどことも分からない部屋で両膝に手を置き、とにかく呼吸を整えるので精一杯になった。
「…………はぁっ、はぁっ、はぁっ……ふぅっ、ふぅぅ~……ま、まいったな」
魔導の世界でこんなにも全力疾走をすることなんてなかっただけに、自分の体力がここまで衰えているとは思ってもみなかった。
「ふぅっ……まいった、本当に……」
疲れ果てたせいか、目の前は真っ暗でここが部屋なのか通路なのか分からなくなった。
「ふむ。ではこの水を飲め」
「あ、ありがたい……んっ、んっぐ……」
少しだけ意識が危なくなっていたこともあってか、暗闇から目の前に差し出された水を特に何の警戒もしないで思い切り飲み干していた。
「ふぅぅ……はぁ~……生き返った~」
渇ききった喉に流し込んだ水がここまで有難いものだったとは。
「ふふ。あの子が言ってたとおりだったな。大丈夫か、おぬし」
「はい、もう大丈夫――へ? あ、あなたは?」
俺に水をくれたうえ優しく話しかけてくれていた人が俺を覗き込んでいたので、落ち着いて見てみると、銀色の長い髪で耳が長く、それでいて長身の女性のように見えている。
着ている服は魔導師のローブではなく、向こうの世界の白いパーカーを着ていてフードはかぶっていない。
……格好はともかく、特徴的にエルフ?
エルフといえばアズリゼの魔導師姉妹を思い出しそうになるが、目の前に見える女性はその姉妹とは別な感じを受ける。
「おぬし、日本からこの世界に来た猫好きのトージだろう?」
「はい、その通りですが……え?」
「やはりそうか! トージだぞ、コムギ!」
言葉遣いだけ聞いていれば何となく古老っぽさを感じるが、長命のエルフなら何の不思議もない――ん? というかコムギ?
「ニャァァァ~!!! トージニャ~!」
おお、この喜びを露わにする声はコムギさんだ!
「トージトージトージニャ~!!」
周りが暗くて見えない中、俺の胸に飛び込んできたのはモフっとしたコムギさんだった。
「うんうん、俺だよコムギさん!」
「ニャゥ~」
感動の再会的な勢いのままに、お決まりのモフモフタイム突入である。
「ニャ~良かったニャ~!」
俺以上にコムギさんが喜んでいるが、そういえばクウはどこに行ったのか。
「待っていれば必ず会えると言ったが、そのとおりだったな、コムギ」
「ニャゥ」
「あ、あの、あなたは? それとその、キジ三毛の猫を見かけませんでしたか?」
「三毛?」
「クウのことを言ってるのニャ」
コムギさんがクウのことを教えているということは、彼もここにいるのか。
「あぁ、クウか。彼は食事をしているから、心配はいらない。おっと、電気をつけねばな」
エルフの彼女がそう言った直後、真っ暗だったのが一瞬で明るくなり、俺は少しだけ眩しさを感じて目を閉じてしまった。
閉じた目の上にモフモフを感じるが、多分気のせい。
「トージ。彼女はエルフの魔導師なのニャ」
「そうみたいだね」
明るくなったので周りを見回すと、そこは今まで通り抜けていた部屋とは比べ物にならないほどの広さだ。
「水を頂き、本当に助かりました。俺はトージ。ムギヤマ・トージです」
「うむ」
「トージ。焦らずに待つのニャ」
ううむ、俺より落ち着いた感じだな。とりあえずコムギさんが言うように、彼女からの名乗りを待つか。
「我は悠久の魔導師、ココア・レイモン。ここにおぬしが来るのをずっと待っていた」
クウを救った時のキャットホイールも薄々感じていたが、やはりこのダンジョンは誰かが意図的に作ったものではないだろうか。
思い当たるのはただの人間ではなく、向こうの世界を知る――何度か日本へ行ったことがある魔導師の存在だ。それこそかつてコムギさんの主人だった魔導師であれば、ふんだんな魔力を使ってダンジョンを作るのはそう難しくない。
……だが、あの人がこのダンジョンに関わっているとは考えにくい。宝石を採掘出来るとはいえ、不確定要素が強いし儲けになる場所でもないから彼女ではないと考える方が無難だ。
「トージ~! ぼさっとするな~! この部屋を抜ければ別の部屋だぞ~」
「ごめんごめん。すぐ行くよ」
身軽なクウについていっているが、彼はコムギさんと同様に俺を待ってくれながら次の部屋へと走っている。
とはいえ、やはり自由奔放な猫さんでもあるので、俺が気づいた時には見失いがちだ。
「トージ、疲れてないか?」
「うん? 大丈夫だよ」
「そうなのか~? コムギが言ってたぞ。トージは人間ではおじさんと呼ばれていて、あまり無理はさせられないタイプだって。だからおいらもトージにはあまり疲れてほしくないって思うぞ~」
……まさかのコムギさん情報。
クウが言うように確かにおじさんではあるけど、こっちの世界に転移してから気のせいか少しだけ体が軽くなった気がするんだよな。特にコムギさんと一緒に動いてる時なんかは身軽に思えてしまうほど。
「そっか。でも大丈夫! まだ疲れてないよ」
「じゃあ走るのを早くしていいんだな~?」
「えっ?」
クウは一度止まって俺を見るが。
「よぉし、行くぞ~! トージ、走れ~」
そうかと思えば、急に走る速度を上げる。
「うわわっ、待って待って!」
そうか、やはり加減して走ってくれていたんだ。俺が平気だよと言ったせいですっかり置いていかれてしまった。
部屋と部屋を繋ぐ通路は全て真っ直ぐだから迷いようがないが、このままでは完全にクウを見失ってしまう。
そう思いながら、俺は自分なりに走るスピードを上げて彼を追いかけていた。
――のだが、いくつ続いているか分からない部屋を通り抜けて行くうちに、膝はがくがく、酸素が足りないと言わんばかりの息切れが俺の身に生じてしまった。
お、おかしい。こんなに体力がなかったっけ?
登山をするでもなくて、地下深くの部屋を何度も通り抜けているだけなのに。
クウを完全に見失ったこともあって、俺はどことも分からない部屋で両膝に手を置き、とにかく呼吸を整えるので精一杯になった。
「…………はぁっ、はぁっ、はぁっ……ふぅっ、ふぅぅ~……ま、まいったな」
魔導の世界でこんなにも全力疾走をすることなんてなかっただけに、自分の体力がここまで衰えているとは思ってもみなかった。
「ふぅっ……まいった、本当に……」
疲れ果てたせいか、目の前は真っ暗でここが部屋なのか通路なのか分からなくなった。
「ふむ。ではこの水を飲め」
「あ、ありがたい……んっ、んっぐ……」
少しだけ意識が危なくなっていたこともあってか、暗闇から目の前に差し出された水を特に何の警戒もしないで思い切り飲み干していた。
「ふぅぅ……はぁ~……生き返った~」
渇ききった喉に流し込んだ水がここまで有難いものだったとは。
「ふふ。あの子が言ってたとおりだったな。大丈夫か、おぬし」
「はい、もう大丈夫――へ? あ、あなたは?」
俺に水をくれたうえ優しく話しかけてくれていた人が俺を覗き込んでいたので、落ち着いて見てみると、銀色の長い髪で耳が長く、それでいて長身の女性のように見えている。
着ている服は魔導師のローブではなく、向こうの世界の白いパーカーを着ていてフードはかぶっていない。
……格好はともかく、特徴的にエルフ?
エルフといえばアズリゼの魔導師姉妹を思い出しそうになるが、目の前に見える女性はその姉妹とは別な感じを受ける。
「おぬし、日本からこの世界に来た猫好きのトージだろう?」
「はい、その通りですが……え?」
「やはりそうか! トージだぞ、コムギ!」
言葉遣いだけ聞いていれば何となく古老っぽさを感じるが、長命のエルフなら何の不思議もない――ん? というかコムギ?
「ニャァァァ~!!! トージニャ~!」
おお、この喜びを露わにする声はコムギさんだ!
「トージトージトージニャ~!!」
周りが暗くて見えない中、俺の胸に飛び込んできたのはモフっとしたコムギさんだった。
「うんうん、俺だよコムギさん!」
「ニャゥ~」
感動の再会的な勢いのままに、お決まりのモフモフタイム突入である。
「ニャ~良かったニャ~!」
俺以上にコムギさんが喜んでいるが、そういえばクウはどこに行ったのか。
「待っていれば必ず会えると言ったが、そのとおりだったな、コムギ」
「ニャゥ」
「あ、あの、あなたは? それとその、キジ三毛の猫を見かけませんでしたか?」
「三毛?」
「クウのことを言ってるのニャ」
コムギさんがクウのことを教えているということは、彼もここにいるのか。
「あぁ、クウか。彼は食事をしているから、心配はいらない。おっと、電気をつけねばな」
エルフの彼女がそう言った直後、真っ暗だったのが一瞬で明るくなり、俺は少しだけ眩しさを感じて目を閉じてしまった。
閉じた目の上にモフモフを感じるが、多分気のせい。
「トージ。彼女はエルフの魔導師なのニャ」
「そうみたいだね」
明るくなったので周りを見回すと、そこは今まで通り抜けていた部屋とは比べ物にならないほどの広さだ。
「水を頂き、本当に助かりました。俺はトージ。ムギヤマ・トージです」
「うむ」
「トージ。焦らずに待つのニャ」
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