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64.未来の奥様
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執務室でアツリュウが、領主関係の書類と格闘していると、扉を叩く音がしてスオウ隊長がセウヤ殿下からの命令があると報告に来た。
『姫様をエイヘッドに留め置くように』との命令を告げられた。
アツリュウが「いつまで?」と問うと「セウヤ殿下が姫様をモーリヒルドに帰すと決めるまで」と返された。
期限は決まっていないのだと分かった時、強烈な不安と姫に会える喜びが同時に込み上げた。
相反する2つの感情が体を2つに割くようで苦しい。自分がどんな顔を彼に晒してしまうか怖かったが、平静を必死に装って「どうして?」と問うた。
「理由はリエリー姫君の安全に関わること。詳しい理由を私には知らせてきましたが、セウヤ殿下は代行には詳細を伝えなくともよいとのご命令です」
ああそうだよな。あなたはセウヤ殿下の命で私を見張っているのだ。
彼がここに派遣されてきた時から分かっていたこととはいえ、あからさまにそれを明らかにされ、傷ついたことを自覚した。
セウヤ殿下も自分ではなく、スオウ隊長に知らせてくるとは、相変わらず嫌なやり口だと怒りが湧いた。
『私はあなたの部下ですと言ったその口で、おまえには理由は話せないというんですね』
心の中でスオウ隊長に嫌味を言ってみる。
「私が姫様を妊娠させたことも、セウヤ殿下に報告するんですか?」
スオウ隊長は何も答えない、いつもの無表情ではあるが、高い位置から観察されているような視線がひどく居心地悪い。
あの姫様の妊娠騒動から2日過ぎた。彼女は変わらずエイドドアドのムネゴトウ家に居る。姫様本人は妊娠を否定したが、昨日あちらの館で医師の診察をうけたと聞いた。
姫の妊娠について、誰も何もアツリュウに触れてこない。それが自分を苛立たせる、まるで腫れ物に触るようにという言葉があるがまさにそれだ、誰も聞いてくれないから否定もできない。
「何か言ったら……どう……なんです」
この人と話すと、どうしても敬語になってしまう。苛立ちをぶつけようとしてもこの情けなさ。
「私に何を言って欲しいのですか?」
ちくしょう! なんだこの返しは、まるで俺があなたにかまって欲しいみたいじゃないか。
「皆に妊娠させていないと否定しないのですか?」
落ち着いた声で彼にそう聞かれて「え?」と返した。
「俺が姫様を妊娠させていないと、あなたは信じてくれるのか?」
こちらの問いに彼は返事をしない替わりに、呆れた感じで「お前何を言っているんだ?」という顔をした。
この人は始めから俺が姫様に手を出していないことを知っているんだ。
信じてもらえて安心した気持ちは、何故か一瞬で消え、逆に猛烈な悔しさが込み上げてきた。
『あんたは知ってるんだ、俺が姫様に手を出す度胸なんてないことを』
この年上で経験豊富そうな、いかにも落ち着いた大人の余裕をかました男に、上から見下ろされて「知ってるお前には無理だってことを」と笑われている気がした。
「男の俺が否定したって、誰も信じないでしょうが」
苛立ちを隠さずに言うと、「まあそうですね」と簡単に返された。
「私は今回の件を、セウヤ殿下に報告するつもりはありません」
スオウ隊長はどういう意図でそう言ったのか分からなかったが、それを聞いても空しいだけだった。
「別にあなたが報告しなかったところで、俺を見張って逐一セウヤ殿下に報告している人間は何人もいる。俺と姫様の関係をセウヤ殿下は正確に把握している。今までも、これからも」
スオウ隊長は返事をしなかった。代わりに「話は終わりでよろしいか」と聞かれた。
ひどく冷たい感じがした。優しくされたい訳ではないと思う、けれどやはり傷ついた気がした。
「この城の侵入者の件が解決しないうちは、ここでは安全を保障できません。姫様は今後もムネゴトウ家で預ってもらいます。ムネゴトウ家の警備体制については、もう行方不明になられるのは御免ですから、練り直してください。ムネゴトウ家の警備と姫の護衛について再検討し配備をしてくれ」
始めからこれだけ伝えればよかったのだと後悔しながら、姫の今後について告げた。いつになったらこの人に命令するのに慣れるのか…… 最後だけ命令口調にして指示を出した。
「了解しました」
いつもの低い声で言うと、スオウ隊長は執務室を出て行った。
◇◇◇ ◇◇◇
昼になり、軽食を侍従が持ってきた。いつもはキボネが来ていたのでどうしたのかと聞くと、領主館の方で忙しくしているという。
エイヘッドに赴任してから2カ月、使用人や領地経営のための事務官も新しく雇い、領主城の人間はずいぶん増えた。
商工ギルドとまあまあ良い関係を今のところ築けているので、現地の人間を雇うのに彼らの口利きがあることでとても助かっている。
ソバ執行官の協力もあり、セウヤ殿下からの前借資金の件も順調に進んで、来たばかりの頃の混乱に比べると、エイヘッド領の秩序が取り戻されつつある。
近衛兵だったときは厩長として馬が仕事相手だったのだから、領主としての知識など自分にあろうはずもない、オルゴンに教えてもらいたくても彼は多忙を極めている。
そんな中、ソバ執行官が時間を見つけては財務管理について教えてくれるようになった。
意外な人が教師になってくれて降ってわいた幸運だと感謝しながら教えを受けている。
ソバ執行官は「セウヤ殿下に前借する男」として自分のことを気に入ってくれたらしい。
領地経営についてはオルゴンが、領主城の使用人の采配についてはキボネが働いてくれるので、自分は領地経営の為の勉強と『黒ずくめの集団』の対応に時間を割くことができている。
それでも避けられない領主代行の決済は波のように押し寄せてはくるのだが……キボネの配慮のお陰でなんとか仕事をこなすことができている。彼は若いのに側近として優秀だと思う。
執務室で昼食をとりながら、キボネにあれやこれやと領主代行の仕事で困っていることを聞いてもらうのが常だったので、今日はどうしたのかな?と不思議だった。
夜眠るためにしか戻らない領主館だが、キボネが何を忙しくしているのか興味が湧いて、昼休憩に覗いてみることにした。
キボネの姿を見つけて、まず口を出たのが「ふざけるな! 今すぐやめろ」だった。
自分が寝室として使っている領主居室の隣部屋にキボネはいた。その部屋に何人もの使用人達がいて、絨毯を運び込もうとしているところだった。
「何やってんだよ」
「何をやっているかですか? 奥様のお部屋を整えております」
キボネはいたって落ち着いた様子で、次々と運び込まれる調度の置き位置を男たちに指示している。
「奥様の部屋なんて必要ない、今すぐやめろ」
怒鳴っているのに、キボネは全く動じない、こちらに顔を向けると目を細くして「へー、必要ないですか」と馬鹿にした口調で言った。
「この部屋は、俺が領主でいるかぎり一生使わない、だから空にしておけ」
「リエリー様を妊娠させた男が何を言っている」
いつものへらへらーっと頼りないキボネは影を潜めて、凍るような冷たさの返事が返ってきた。
「姫様は妊娠などしていない、おまえだって知っているだろう?」
キボネの細められた目がさらに細くなった。
「知りませんよ。私が知っているのは、リエリー様はアツリュウ様の未来の奥様だということです。多分近い将来のです。ですから筆頭侍従を任されている私の責務を果たしているだけです」
俺はそんなこと許可しないと詰め寄ったが、キボネは領主の承認がある書類を目の前に広げた。領主代行としての決済業務が多すぎて、領主城の購入品についてはキボネに信頼を置いていたので確認もしなかった。
「ちゃんと領主代行様の許可を得ています」
涼しい顔でキボネが言った。
書類の日付は5日も前だった、姫様が帰ると分かっていた時点ですでに部屋を造るつもりだったのだと分かった。
「卑怯だぞキボネ。お前のこと信頼してるのに、なんで俺のこと騙すんだ」
「アツリュウ、よく聞け。お前に言っておくことがある」
いきなりキボネに呼び捨てられた。びっくりして彼の顔をまじまじと見る。声音は落ち着いているが、今までに見たことのない勢いで怒っている。
「僕は何時だってアツリュウの味方だ、絶対に裏切らない。だけれども、お前と、お前の未来の奥様との間に立った時、僕は奥様の味方だ。そのことを覚えておくんだ」
いつにないキボネの勢いにちょっとひるんだ。
「なんだよ、それは……。未来の奥様って誰だよ」
「これ以上ふざけるつもりかアツリュウ。リエリー様に決まってるだろ。僕はリエリー様の味方だ、お前があの方をこれからも傷つけるなら、許さないからな。僕はリエリー様とハンカチを交換した仲だ、今の時点でお前より僕の方がリエリー様と親しい」
ふふんとキボネは勝ち誇ったように笑った。
「な……ハンカチを交換した仲って何だよ、姫様と話したのか?」
「知りたかったら、リエリー様に直接聞くといい。アツリュウにはそんなことできないと思うけど」
そう馬鹿にして言うと、キボネは使用人達に指示を出すので忙しいと言って部屋に戻ろうとする。
「さっきから、なにアツリュウって呼び捨ててるんだよ、代行様にどういう口きいてるんだ」
キボネはまた目を細めて睨んできた。この男はけして声を荒げたり、あからさまに怒った顔をしないが、本気で怒ると怖いし長引くことを今までの付き合いから知っていた。
「アツリュウ様と呼ぶなと言って、様を付ける度に殴ってきたのはそっちだ」
キボネが子供時代のことを持ち出してきた、貴族みたいで嫌だと駄々をこねて、確かにミタツルギ家に居る時、ずっと彼にはアツリュウと呼んでもらっていた。
「そんな子供の時のこと、いまさら持ち出してくるなよ」
キボネが盛大なため息をわざとらしくついた。
「お前は大人の男なのか? 違うだろ、自分がリエリー様に何をやっているのか分かっていないのか? どう見たって今のお前は子供だろアツリュウ」
『姫様をエイヘッドに留め置くように』との命令を告げられた。
アツリュウが「いつまで?」と問うと「セウヤ殿下が姫様をモーリヒルドに帰すと決めるまで」と返された。
期限は決まっていないのだと分かった時、強烈な不安と姫に会える喜びが同時に込み上げた。
相反する2つの感情が体を2つに割くようで苦しい。自分がどんな顔を彼に晒してしまうか怖かったが、平静を必死に装って「どうして?」と問うた。
「理由はリエリー姫君の安全に関わること。詳しい理由を私には知らせてきましたが、セウヤ殿下は代行には詳細を伝えなくともよいとのご命令です」
ああそうだよな。あなたはセウヤ殿下の命で私を見張っているのだ。
彼がここに派遣されてきた時から分かっていたこととはいえ、あからさまにそれを明らかにされ、傷ついたことを自覚した。
セウヤ殿下も自分ではなく、スオウ隊長に知らせてくるとは、相変わらず嫌なやり口だと怒りが湧いた。
『私はあなたの部下ですと言ったその口で、おまえには理由は話せないというんですね』
心の中でスオウ隊長に嫌味を言ってみる。
「私が姫様を妊娠させたことも、セウヤ殿下に報告するんですか?」
スオウ隊長は何も答えない、いつもの無表情ではあるが、高い位置から観察されているような視線がひどく居心地悪い。
あの姫様の妊娠騒動から2日過ぎた。彼女は変わらずエイドドアドのムネゴトウ家に居る。姫様本人は妊娠を否定したが、昨日あちらの館で医師の診察をうけたと聞いた。
姫の妊娠について、誰も何もアツリュウに触れてこない。それが自分を苛立たせる、まるで腫れ物に触るようにという言葉があるがまさにそれだ、誰も聞いてくれないから否定もできない。
「何か言ったら……どう……なんです」
この人と話すと、どうしても敬語になってしまう。苛立ちをぶつけようとしてもこの情けなさ。
「私に何を言って欲しいのですか?」
ちくしょう! なんだこの返しは、まるで俺があなたにかまって欲しいみたいじゃないか。
「皆に妊娠させていないと否定しないのですか?」
落ち着いた声で彼にそう聞かれて「え?」と返した。
「俺が姫様を妊娠させていないと、あなたは信じてくれるのか?」
こちらの問いに彼は返事をしない替わりに、呆れた感じで「お前何を言っているんだ?」という顔をした。
この人は始めから俺が姫様に手を出していないことを知っているんだ。
信じてもらえて安心した気持ちは、何故か一瞬で消え、逆に猛烈な悔しさが込み上げてきた。
『あんたは知ってるんだ、俺が姫様に手を出す度胸なんてないことを』
この年上で経験豊富そうな、いかにも落ち着いた大人の余裕をかました男に、上から見下ろされて「知ってるお前には無理だってことを」と笑われている気がした。
「男の俺が否定したって、誰も信じないでしょうが」
苛立ちを隠さずに言うと、「まあそうですね」と簡単に返された。
「私は今回の件を、セウヤ殿下に報告するつもりはありません」
スオウ隊長はどういう意図でそう言ったのか分からなかったが、それを聞いても空しいだけだった。
「別にあなたが報告しなかったところで、俺を見張って逐一セウヤ殿下に報告している人間は何人もいる。俺と姫様の関係をセウヤ殿下は正確に把握している。今までも、これからも」
スオウ隊長は返事をしなかった。代わりに「話は終わりでよろしいか」と聞かれた。
ひどく冷たい感じがした。優しくされたい訳ではないと思う、けれどやはり傷ついた気がした。
「この城の侵入者の件が解決しないうちは、ここでは安全を保障できません。姫様は今後もムネゴトウ家で預ってもらいます。ムネゴトウ家の警備体制については、もう行方不明になられるのは御免ですから、練り直してください。ムネゴトウ家の警備と姫の護衛について再検討し配備をしてくれ」
始めからこれだけ伝えればよかったのだと後悔しながら、姫の今後について告げた。いつになったらこの人に命令するのに慣れるのか…… 最後だけ命令口調にして指示を出した。
「了解しました」
いつもの低い声で言うと、スオウ隊長は執務室を出て行った。
◇◇◇ ◇◇◇
昼になり、軽食を侍従が持ってきた。いつもはキボネが来ていたのでどうしたのかと聞くと、領主館の方で忙しくしているという。
エイヘッドに赴任してから2カ月、使用人や領地経営のための事務官も新しく雇い、領主城の人間はずいぶん増えた。
商工ギルドとまあまあ良い関係を今のところ築けているので、現地の人間を雇うのに彼らの口利きがあることでとても助かっている。
ソバ執行官の協力もあり、セウヤ殿下からの前借資金の件も順調に進んで、来たばかりの頃の混乱に比べると、エイヘッド領の秩序が取り戻されつつある。
近衛兵だったときは厩長として馬が仕事相手だったのだから、領主としての知識など自分にあろうはずもない、オルゴンに教えてもらいたくても彼は多忙を極めている。
そんな中、ソバ執行官が時間を見つけては財務管理について教えてくれるようになった。
意外な人が教師になってくれて降ってわいた幸運だと感謝しながら教えを受けている。
ソバ執行官は「セウヤ殿下に前借する男」として自分のことを気に入ってくれたらしい。
領地経営についてはオルゴンが、領主城の使用人の采配についてはキボネが働いてくれるので、自分は領地経営の為の勉強と『黒ずくめの集団』の対応に時間を割くことができている。
それでも避けられない領主代行の決済は波のように押し寄せてはくるのだが……キボネの配慮のお陰でなんとか仕事をこなすことができている。彼は若いのに側近として優秀だと思う。
執務室で昼食をとりながら、キボネにあれやこれやと領主代行の仕事で困っていることを聞いてもらうのが常だったので、今日はどうしたのかな?と不思議だった。
夜眠るためにしか戻らない領主館だが、キボネが何を忙しくしているのか興味が湧いて、昼休憩に覗いてみることにした。
キボネの姿を見つけて、まず口を出たのが「ふざけるな! 今すぐやめろ」だった。
自分が寝室として使っている領主居室の隣部屋にキボネはいた。その部屋に何人もの使用人達がいて、絨毯を運び込もうとしているところだった。
「何やってんだよ」
「何をやっているかですか? 奥様のお部屋を整えております」
キボネはいたって落ち着いた様子で、次々と運び込まれる調度の置き位置を男たちに指示している。
「奥様の部屋なんて必要ない、今すぐやめろ」
怒鳴っているのに、キボネは全く動じない、こちらに顔を向けると目を細くして「へー、必要ないですか」と馬鹿にした口調で言った。
「この部屋は、俺が領主でいるかぎり一生使わない、だから空にしておけ」
「リエリー様を妊娠させた男が何を言っている」
いつものへらへらーっと頼りないキボネは影を潜めて、凍るような冷たさの返事が返ってきた。
「姫様は妊娠などしていない、おまえだって知っているだろう?」
キボネの細められた目がさらに細くなった。
「知りませんよ。私が知っているのは、リエリー様はアツリュウ様の未来の奥様だということです。多分近い将来のです。ですから筆頭侍従を任されている私の責務を果たしているだけです」
俺はそんなこと許可しないと詰め寄ったが、キボネは領主の承認がある書類を目の前に広げた。領主代行としての決済業務が多すぎて、領主城の購入品についてはキボネに信頼を置いていたので確認もしなかった。
「ちゃんと領主代行様の許可を得ています」
涼しい顔でキボネが言った。
書類の日付は5日も前だった、姫様が帰ると分かっていた時点ですでに部屋を造るつもりだったのだと分かった。
「卑怯だぞキボネ。お前のこと信頼してるのに、なんで俺のこと騙すんだ」
「アツリュウ、よく聞け。お前に言っておくことがある」
いきなりキボネに呼び捨てられた。びっくりして彼の顔をまじまじと見る。声音は落ち着いているが、今までに見たことのない勢いで怒っている。
「僕は何時だってアツリュウの味方だ、絶対に裏切らない。だけれども、お前と、お前の未来の奥様との間に立った時、僕は奥様の味方だ。そのことを覚えておくんだ」
いつにないキボネの勢いにちょっとひるんだ。
「なんだよ、それは……。未来の奥様って誰だよ」
「これ以上ふざけるつもりかアツリュウ。リエリー様に決まってるだろ。僕はリエリー様の味方だ、お前があの方をこれからも傷つけるなら、許さないからな。僕はリエリー様とハンカチを交換した仲だ、今の時点でお前より僕の方がリエリー様と親しい」
ふふんとキボネは勝ち誇ったように笑った。
「な……ハンカチを交換した仲って何だよ、姫様と話したのか?」
「知りたかったら、リエリー様に直接聞くといい。アツリュウにはそんなことできないと思うけど」
そう馬鹿にして言うと、キボネは使用人達に指示を出すので忙しいと言って部屋に戻ろうとする。
「さっきから、なにアツリュウって呼び捨ててるんだよ、代行様にどういう口きいてるんだ」
キボネはまた目を細めて睨んできた。この男はけして声を荒げたり、あからさまに怒った顔をしないが、本気で怒ると怖いし長引くことを今までの付き合いから知っていた。
「アツリュウ様と呼ぶなと言って、様を付ける度に殴ってきたのはそっちだ」
キボネが子供時代のことを持ち出してきた、貴族みたいで嫌だと駄々をこねて、確かにミタツルギ家に居る時、ずっと彼にはアツリュウと呼んでもらっていた。
「そんな子供の時のこと、いまさら持ち出してくるなよ」
キボネが盛大なため息をわざとらしくついた。
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