【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~

田尾風香

文字の大きさ
49 / 687
第二章 旅の始まりと、初めての戦闘

旅の始まり(後)

しおりを挟む
次の日、国境であるクバント川を越えて、モントルビア王国に入っていた。

しばらく、川沿いに北上していくのだが、周りは木々が多い。
そのせいで、今襲ってきている洗熊ラクーンの対応が、少し面倒だった。

普通に地面から攻撃してくるのもいれば、木登りをして、上から攻撃をしてくるのもいる。
ランクはEランクだが、面倒くさい状況が出来上がっていた。


泰基と暁斗が背中合わせに戦っている。
二人にとって、この上下から来る攻撃に対応するのは結構キツい。
リィカとユーリも魔法で援護に入っていた。

一方で、アレクとバルは、まだまだ余裕だ。
そう時間を掛けず、倒しきることに成功した。

「父さん、大丈夫?」
暁斗が心配そうに父に問いかける。

少し旅に慣れてきた、というか、このままじゃ埒があかないと考えた泰基は、自分で自分に《回復ヒール》をかけて剣の練習を行うようになった。

元々、暁斗と同じく、日本で剣道をやっていた泰基だ。基礎はしっかりできているし、やり出せば勘を取り戻すのも早かった。

「タイキさん、後衛でも良いと思うんですけど。回復魔法も使えるわけですし」
そう言ったのはユーリだ。

回復だけではなく、攻撃魔法も中級魔法は完全に扱えるようになっている。
わざわざ前にでなくても、とユーリは思う。

「せっかくできるのに、やらないのはもったいないだろ。正直、後衛は三人もいらないだろうし」
リィカとユーリは剣を使えない。完全な後衛だ。
だったら、状況に応じて前衛もできる自分がいてもいいんじゃないか、と泰基は考えていた。

「あえていうなら、リィカが回復魔法を覚えてくれると良いんだけどな」
「……う……。がんばります……」

泰基の言葉に、リィカの声は小さかった。
毎日のように練習しているが、なかなか上手くいかない。

「……ちょっと思ったんだけど、リィカ、俺の《回復ヒール》使うときの魔力の動き、見てみるか? それが分かれば、もしかしたら使えるかも」

「あ、そうだね。そしたらできるかも。お願いしていい?」
ふと思い付いて泰基がそう提案すれば、リィカが食い付いた。

「おーい、良いから解体しろよ」
アレクから声が飛んだが、

「ごめん、一回だけ。泰基、一回だけ《回復ヒール》やってみて」
そう言って、泰基の左手を掴んできた。――と、アレクから思い切り睨まれた。

(なんでこんなあからさまで、リィカは気付かないかな)
凪沙もその辺鈍かったな、と思いながら、泰基は《回復ヒール》を発動させた。


泰基の、リィカに対する思いは複雑だ。
とにかく、凪沙に似ている。それは間違いない。

でも、平気で解体をやっていたり、料理が上手なところ(凪沙は下手だった)を見ていると、やはり凪沙とは違う。

自分が追っているのは、凪沙の面影でしかない。
リィカ個人に対して、特別な感情は抱いていない。だから、アレクがリィカに向ける感情も、別に気にならない。

それでも、凪沙によく似た表情を、仕草を見せられると、どうしても心が揺らいでしまうのを、止めることができなかった。


※ ※ ※


「もう少し行くと、村があるって話だったよね。今日はベッドで休めるかなぁ」
体を上に伸ばしながら、暁斗が嬉しそうに言った。

「そうだな。これだけ野宿続きだと、やはりきついよな」
アレクもそれに続く。

途中で出会った商人からの情報だった。
一緒に野営をしたときに、食材を分けてもらったのを引き換えに、夜間の見張りを引き受けた。その時に聞いた話だ。

そんなに大きな村ではないが、国境に一番近い村と言うことで寄っていく人も多いことから、宿もあるらしい。
久しぶりにゆっくりできるかと、楽しみにしていた。



村の近くまで来て、異変に気付いた。
――建物や門が壊れている。

警戒しながら中に入ると、バルが剣を抜いた。
体当たりしてきたキャトルを受け止め、弾き飛ばす。態勢を崩したところで、前足二本を切り飛ばす。

「――ちっ! もしかして村にいた動物が、魔物化しちまったのか」
見れば、他にも魔物の姿が見られた。

「みんな! 倒すぞ!」
アレクが声をかけて、動き出そうとしたところで、

「あーらら、またお客さんだよぉ? ポール」

「今度は六人……って、ヒューゥ! 女の子、めっちゃ可愛いじゃん。オレっち、もらっていいだろ、パール?」

「えー、ホンキ? 男五人に囲まれた女なんて、どれだけビッチなの、って感じじゃーん」
突然、目の前に男女の二人組が現れた。


旅に出る前、リィカはどうしても一つ調べておきたいことがあった。
それが、魔族の外見だ。
どういった姿をしているのか。

でも、分かったのは、細く尖った長い耳を持ち、髪も肌も白い色をした化け物。
それだけだ。

そして、目の前に現れた二人は。
細く尖った長い耳、髪も肌も白い。――でも、それ以外は人と変わらない。


「――まさか、魔族!!?」


そう叫んだのは誰だったのか。
たどり着いた村で出会ったのは、まだここにいるはずのない、魔族だった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

召喚失敗から始まる異世界生活

思惟岳
ファンタジー
庭付き一戸建て住宅ごと召喚されたせいで、召喚に失敗。いったん、天界に転送されたジュンは、これからどうしたいかと神に問われた。 「なろう」さまにも、以前、投稿させていただいたお話です。 ペンネームもタイトルも違うし、かなり書き直したので、別のお話のようなものですけれど。

異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。

蛇崩 通
ファンタジー
 ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。  三千円で。  二枚入り。  手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。  ガイドブックには、異世界会話集も収録。  出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。  おもしろそうなので、買ってみた。  使ってみた。  帰れなくなった。日本に。  魔力切れのようだ。  しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。  それなのに……  気がついたら、魔王軍と戦うことに。  はたして、日本に無事戻れるのか?  <第1章の主な内容>  王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。  魔王軍が、王都まで迫ったからだ。  同じクラスは、女生徒ばかり。  毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。  ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。  しかたがない。ぼくが戦うか。  <第2章の主な内容>  救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。  さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。  どう救出する?  <第3章の主な内容>  南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。  そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。  交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。  驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……  <第4章の主な内容>  リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。  明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。  なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。  三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……

処理中です...