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第九章 聖地イエルザム
強く
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村に到着したのは、その日の夕方だった。
ウリックが村長宅にて説明を行っている。
全員が押しかけても相手方に迷惑になってしまうため、勇者一行は馬車で待機だ。
そのウリックが顔を出した。
「確認が取れました。話も了承を頂いています。ですが、すでに夕方ですし、明日朝にしてほしい、との事です。できるだけ早い時間に、とは伝えましたが、いかがでしょうか」
ウリックの表情はあまり優れない。
本当であれば、本日中にパムからの、斧をお墓に納めるという遺言を果たして、明日朝早くには出発したかったのだ。
「それでお願いします」
こういうやり取りは、アレクがいれば大体アレクが行うが、それより先に頷いたのは暁斗だった。リィカも首を縦に振っている。
夕方、これから暗くなるという時間帯にお墓になんか行きたくない。
二人の意見は、それで一致していた。
※ ※ ※
夜。
村にある唯一の宿に泊まることになった。
「明日、明るくなってすぐでいいんですね?」
アレクが、ウリックに確認した。
明日、お墓に向かう時間だ。
「ええ。そういう話になりました。斧をお墓に納めたら、そのまま聖地の中心に戻ります。皆様方には強行軍になってしまいますが……」
「俺たちは大丈夫です。とても助かっていますよ」
アレクがそう言って、頷く。
「わたしの我が儘で、本当にすいません。……あの、ウリック様は大丈夫なのですか? わたし達は馬車に乗っているだけなのに、大変ではないですか?」
リィカが心から申し訳なさそうに、ウリックに謝った。
首をすくめて、体を縮込ませている。
だが、ウリックは何てことなさそうに答えた。
「私に様を付けて頂くことはありませんよ。私だってただ乗っているだけですよ。イグナシオ様がいい馬を用意してくれましたから」
そこまで言って、少し楽しそうに笑った。
「それに、役得ですしね。皆様方の、これまで見たことのない魔法を見せて頂けて。戻ったらイグナシオ様に自慢してやりますよ。ああ、もし良ければ、帰りの道中でも何か他に見せて下さい」
いたずらっぽい表情を見せつつ、サラッと要求してくる。
その要求に、リィカは笑った。
「そうですね。……そういえば、まだ《砂塵嵐》使ってみてないなぁ」
デトナ王国の王都テルフレイラで、ユーリが戦ったアルテミが使っていた魔法を思い出す。
使ってみよう、やってみよう、と思いつつ、まだやっていなかった。
「よし! ユーリ、明日対戦してみよう?」
リィカの誘いに、ユーリはあからさまに顔をしかめた。
「……本気でやるんですか?」
「やろうって約束したよね?」
「リィカが一方的に言っただけじゃないですか」
「……そうだっけ?」
ユーリとアルテミの戦いが終わった後、自分も《砂塵嵐》を使ってみよう、と言った。そして、ユーリの混成魔法と対決したいと言った。
(……それでどうなったっけ?)
思い出そうとしたが、記憶が曖昧だ。
何でだろう、と考えたが、すぐに分かる。あの頃の自分の精神状態は、お世辞にもまともじゃなかった。
多少、記憶が飛ぶくらいするだろう。
思い出すと、まだ辛い。まだ怖い。でも。
(強く、ならなきゃね)
自分を守ってくれようとする、アレクや暁斗の為にも。
二人だって、完全無欠じゃない。守られっぱなしは嫌だ。自分も、皆のことを守りたいから。
リィカは、自分の気持ちを、再確認していた。
※ ※ ※
次の日の朝。
斧をお墓に納めるのは、簡単に終わった。
百年前のお墓がすぐに分かるのか、と思ったが、魔物のその事件は村では有名らしく、村長も自分の親から聞かされた話らしい。
リィカは、手を合わせて目を瞑る。
一行がそれに習った。
※ ※ ※
そして、帰り道。
「《砂塵嵐》!」
「《太陽柱》! 続けて、《幻影の顕現》!」
リィカとユーリが向かい合っていた。
最初は、対戦を嫌がっていたユーリだが、結局リィカのお願いに逆らえずに対戦していた。
そして、始めてしまえば、リィカ以上にユーリがムキになる。
結局、二人で魔法合戦を始めてしまった。
それをウリックがウキウキして観戦している。
二人に触発されたのか、アレクとバル、暁斗まで手合わせを始めた。
(――何で、俺一人でメシ作ってんのかな)
泰基は、大きくため息をついていた。
※ ※ ※
その日の夜遅く、闇の教会へと戻ってきた。
イグナシオに、無事遺言を果たせた事を伝えて、挨拶を済ませる。
イグナシオは、一度頷いて、一行を見回した。
「今晩はお休み下さい。そして、良ければ明日はゆっくりされて、明後日に出発としてはいかがですか? よろしければ、聖地の街をご覧下さいませ」
村に出発する前にも言われた事だ。
アレクが頷いた。
「そうさせて頂きます。ご厚意、感謝致します」
ここに来るまで、観光などほとんどしていない。
たまには、そういう時間があってもいいだろう。
そしてそうなれば、アレクの思う事は一つだった。
「リィカ、明日、デートしよう」
「……………………………はい?」
唐突なアレクのお誘いに、リィカは目を丸くしたのだった。
ウリックが村長宅にて説明を行っている。
全員が押しかけても相手方に迷惑になってしまうため、勇者一行は馬車で待機だ。
そのウリックが顔を出した。
「確認が取れました。話も了承を頂いています。ですが、すでに夕方ですし、明日朝にしてほしい、との事です。できるだけ早い時間に、とは伝えましたが、いかがでしょうか」
ウリックの表情はあまり優れない。
本当であれば、本日中にパムからの、斧をお墓に納めるという遺言を果たして、明日朝早くには出発したかったのだ。
「それでお願いします」
こういうやり取りは、アレクがいれば大体アレクが行うが、それより先に頷いたのは暁斗だった。リィカも首を縦に振っている。
夕方、これから暗くなるという時間帯にお墓になんか行きたくない。
二人の意見は、それで一致していた。
※ ※ ※
夜。
村にある唯一の宿に泊まることになった。
「明日、明るくなってすぐでいいんですね?」
アレクが、ウリックに確認した。
明日、お墓に向かう時間だ。
「ええ。そういう話になりました。斧をお墓に納めたら、そのまま聖地の中心に戻ります。皆様方には強行軍になってしまいますが……」
「俺たちは大丈夫です。とても助かっていますよ」
アレクがそう言って、頷く。
「わたしの我が儘で、本当にすいません。……あの、ウリック様は大丈夫なのですか? わたし達は馬車に乗っているだけなのに、大変ではないですか?」
リィカが心から申し訳なさそうに、ウリックに謝った。
首をすくめて、体を縮込ませている。
だが、ウリックは何てことなさそうに答えた。
「私に様を付けて頂くことはありませんよ。私だってただ乗っているだけですよ。イグナシオ様がいい馬を用意してくれましたから」
そこまで言って、少し楽しそうに笑った。
「それに、役得ですしね。皆様方の、これまで見たことのない魔法を見せて頂けて。戻ったらイグナシオ様に自慢してやりますよ。ああ、もし良ければ、帰りの道中でも何か他に見せて下さい」
いたずらっぽい表情を見せつつ、サラッと要求してくる。
その要求に、リィカは笑った。
「そうですね。……そういえば、まだ《砂塵嵐》使ってみてないなぁ」
デトナ王国の王都テルフレイラで、ユーリが戦ったアルテミが使っていた魔法を思い出す。
使ってみよう、やってみよう、と思いつつ、まだやっていなかった。
「よし! ユーリ、明日対戦してみよう?」
リィカの誘いに、ユーリはあからさまに顔をしかめた。
「……本気でやるんですか?」
「やろうって約束したよね?」
「リィカが一方的に言っただけじゃないですか」
「……そうだっけ?」
ユーリとアルテミの戦いが終わった後、自分も《砂塵嵐》を使ってみよう、と言った。そして、ユーリの混成魔法と対決したいと言った。
(……それでどうなったっけ?)
思い出そうとしたが、記憶が曖昧だ。
何でだろう、と考えたが、すぐに分かる。あの頃の自分の精神状態は、お世辞にもまともじゃなかった。
多少、記憶が飛ぶくらいするだろう。
思い出すと、まだ辛い。まだ怖い。でも。
(強く、ならなきゃね)
自分を守ってくれようとする、アレクや暁斗の為にも。
二人だって、完全無欠じゃない。守られっぱなしは嫌だ。自分も、皆のことを守りたいから。
リィカは、自分の気持ちを、再確認していた。
※ ※ ※
次の日の朝。
斧をお墓に納めるのは、簡単に終わった。
百年前のお墓がすぐに分かるのか、と思ったが、魔物のその事件は村では有名らしく、村長も自分の親から聞かされた話らしい。
リィカは、手を合わせて目を瞑る。
一行がそれに習った。
※ ※ ※
そして、帰り道。
「《砂塵嵐》!」
「《太陽柱》! 続けて、《幻影の顕現》!」
リィカとユーリが向かい合っていた。
最初は、対戦を嫌がっていたユーリだが、結局リィカのお願いに逆らえずに対戦していた。
そして、始めてしまえば、リィカ以上にユーリがムキになる。
結局、二人で魔法合戦を始めてしまった。
それをウリックがウキウキして観戦している。
二人に触発されたのか、アレクとバル、暁斗まで手合わせを始めた。
(――何で、俺一人でメシ作ってんのかな)
泰基は、大きくため息をついていた。
※ ※ ※
その日の夜遅く、闇の教会へと戻ってきた。
イグナシオに、無事遺言を果たせた事を伝えて、挨拶を済ませる。
イグナシオは、一度頷いて、一行を見回した。
「今晩はお休み下さい。そして、良ければ明日はゆっくりされて、明後日に出発としてはいかがですか? よろしければ、聖地の街をご覧下さいませ」
村に出発する前にも言われた事だ。
アレクが頷いた。
「そうさせて頂きます。ご厚意、感謝致します」
ここに来るまで、観光などほとんどしていない。
たまには、そういう時間があってもいいだろう。
そしてそうなれば、アレクの思う事は一つだった。
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