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第十九章 婚約者として過ごす日々
魔封じの検証
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「え? リィカ、アレクの隣の部屋なんですか?」
「なるほど。それで妙にアレクがご機嫌なわけだ」
「恥ずかしいから、あんまり言わないで~」
「俺はちっとも恥ずかしくないぞ」
翌日。
例によって、魔封じの枷作成のためにユーリとバルが王城を訪れた。そうしたら、リィカが王家の私的な場所から来たことで部屋の話になり、それにリィカの顔が赤くなる。
アレクの顔はどこか緩んでいて、その笑顔に昨日のことを思い出してリィカは睨むのだが、全く効果はなかった。
まあ色々あったんだろう、とバルもユーリも悟った気分でそれ以上のツッコミはせず、肝心の魔封じ作成に取りかかる。
「体から魔力を出せないようにする……ってことだよね」
「そうですね。魔封じの枷は、込められた凝縮した魔力が干渉して、外に出るのを抑え込んでいたのでしょう。ただの魔力でできるのは、声とともに出る魔力を押さえるのが精一杯だったということでしょうか」
リィカも頷く。この辺りの考察は、昨日実際に作ってみたからこそ、分かることだ。
「属性をつけてみればいいのかな?」
「そういうことだと思いますが……なぜ最初からそれをやらなかったのかが、気になります」
うーん、とリィカは唸る。いくつか仮説は立てられなくもないが。
「そもそも完全な無詠唱をする人がいなかったか……」
「作れない理由があったか、ですかね」
そして、今度はユーリもうーんと唸る。ちなみに、アレクとバルはその場にいるだけで、何も言わない。最初からこの点に関して協力できることはないと、諦めている。
リィカとユーリを密室に二人きりにはできない。させてたまるか、とアレクは思っているし、貴族的事情から言ってもそれはできない。とは言っても、そう簡単に他者に事情を言うこともできないので、立ち会える人が限られてしまっているのだ。
「ちなみに、属性をつけるとするなら、何になりますか?」
「水か風、かなぁ? 水は体に干渉しやすいし、風は周囲の空気を押さえることができる、かもしれないから」
ユーリの質問にリィカが答える。そこは、四属性を扱うリィカの方が分かるのだろう。疑問形ながらも即答したリィカは、ある程度の目星をつけていたのだろう。
「作ってみましょうか」
「……それしかないよね」
リィカはアイテムボックスから魔石を取り出した。昨日と同じCランクの魔石だ。魔力を流す前に、ユーリを見た。
「もし何か起こりそうになったら、速攻で《結界》張ってね」
「もちろんですよ。安心して下さい」
なぜ過去に作っていなかったのか。
その理由がはっきりしない以上、"作れなかった"何かしらの理由が存在している可能性もある。それが、周囲を巻き込むような何かである可能性もあるので、注意が必要だ。
リィカは頷いて、魔力を流し始めた。属性は水だ。こちらの方ができる可能性が高いと踏んでいるのだが、果たしてどうなるか。
やはり、時間がかかる。というか、今までと同じではあるのだが、昨日の魔力だけを流したときの作成の早さが気持ちいいくらいに早かったので、遅いと感じてしまう。
時間はかかるが、それでも円形の首輪が出来上がる。ただの輪っかだが、今のところはこれでいいだろう。
(……っていうか、これで鍵をつけるとか、どうやったらいいんだろう)
ただの輪っか状態の魔封じの枷は、使える人が限られる。鍵をつけて開け閉めできるようにしなければならないのだが、それをどう作っていいのか分からない。……が、とりあえずその疑問は置いておく。
出来上がった輪っかに、さらに水の魔力を付与していく。魔力を体の内側に押しとどめるイメージをしながら付与していって……リィカはハッと目を見開いた。
「あっ……!」
魔石がボロッと崩れた。魔力の限界を超えたのだ。
「うそ、だって昨日はあんなにできたのに」
「ただの魔力と、属性魔力の違いですかね。昨日のように魔力が凝縮していきませんでしたから」
「でもじゃあ、どうするの?」
昨日作った魔封じは、魔力が凝縮していったからこそ、リィカの魔力を空にするまでの魔力量を込められたのだ。凝縮していかなかったら、おそらくはAランクの魔石でも無理なのではないだろうか。
「作れなかった理由、これですかね」
ユーリは苦笑した。魔力は凝縮できても、属性がついてしまうと無理だった、という理由であれば、作られなかった理由に納得がいく。
「リィカ、お試しなんですが、昨日作った魔封じに水の魔力を付与してみて下さい」
「……それができるんなら、作れないってこともない気がするけど」
言いながらも、魔封じを取り出す。思いついたことを何でも試してみるしかないのだ。失敗は成功のもとだと言うのだから……と考えて、それは凪沙の記憶だっけと思う。だが間違ってはいない。
ユーリを見て頷いたのを確認してから、リィカは水の魔力付与を行っていく。
(できる、けど……)
できるが、難しい。元々ある魔力に、水の魔力を乗せて、混ぜていく。その作業が、どうしようもなく難しい。一歩間違うと、魔封じの機能が損なわれる。ものすごく繊細な作業だ。
――そうやってどのくらい時間がたったのか。
リィカは集中し続けて、やがて力を抜いた。昨日のように魔力が空になったわけではないのだが、ひどく疲れた。
「できた、と思う、けど……」
「そうですね。試してみましょうか」
ユーリが輪っかに手を伸ばしたところで、リィカはハッとして奪い取った。
「……わたしに付ける気?」
「今回は、完全な無詠唱を封じられるかどうかを見なければなりませんから。アレクやバルでは試せないでしょう?」
「ユーリがつけてよ」
「リィカは以前にもつけてますし、別にいいじゃないですか」
「ユーリだって、一度くらい経験してもいいと思う」
「いえいえ、魔法といえばやはりリィカですから。僕以上に魔法を使いこなせるリィカが、試すべきです」
「やだ。こんなときだけ謙遜するってズルい」
リィカとユーリのにらみ合いが始まった。それを見ているアレクとバルは、視線をこっそり交わす。「どうする?」という無言のやり取りは、やはり無言のまま決着した。
「悪いな、リィカ」
「え? え、なんで……っ!」
アレクがリィカの肩を押さえて、抱え持っていた魔封じの輪は、バルに奪い取られた。そしてそれはユーリに渡される。
ユーリは少し驚いた顔をしたが、すぐにニンマリと笑った。リィカは逃げたくなるが、アレクに押さえられているせいで、それもできない。
――輪が首に当てられた。
「なるほど。それで妙にアレクがご機嫌なわけだ」
「恥ずかしいから、あんまり言わないで~」
「俺はちっとも恥ずかしくないぞ」
翌日。
例によって、魔封じの枷作成のためにユーリとバルが王城を訪れた。そうしたら、リィカが王家の私的な場所から来たことで部屋の話になり、それにリィカの顔が赤くなる。
アレクの顔はどこか緩んでいて、その笑顔に昨日のことを思い出してリィカは睨むのだが、全く効果はなかった。
まあ色々あったんだろう、とバルもユーリも悟った気分でそれ以上のツッコミはせず、肝心の魔封じ作成に取りかかる。
「体から魔力を出せないようにする……ってことだよね」
「そうですね。魔封じの枷は、込められた凝縮した魔力が干渉して、外に出るのを抑え込んでいたのでしょう。ただの魔力でできるのは、声とともに出る魔力を押さえるのが精一杯だったということでしょうか」
リィカも頷く。この辺りの考察は、昨日実際に作ってみたからこそ、分かることだ。
「属性をつけてみればいいのかな?」
「そういうことだと思いますが……なぜ最初からそれをやらなかったのかが、気になります」
うーん、とリィカは唸る。いくつか仮説は立てられなくもないが。
「そもそも完全な無詠唱をする人がいなかったか……」
「作れない理由があったか、ですかね」
そして、今度はユーリもうーんと唸る。ちなみに、アレクとバルはその場にいるだけで、何も言わない。最初からこの点に関して協力できることはないと、諦めている。
リィカとユーリを密室に二人きりにはできない。させてたまるか、とアレクは思っているし、貴族的事情から言ってもそれはできない。とは言っても、そう簡単に他者に事情を言うこともできないので、立ち会える人が限られてしまっているのだ。
「ちなみに、属性をつけるとするなら、何になりますか?」
「水か風、かなぁ? 水は体に干渉しやすいし、風は周囲の空気を押さえることができる、かもしれないから」
ユーリの質問にリィカが答える。そこは、四属性を扱うリィカの方が分かるのだろう。疑問形ながらも即答したリィカは、ある程度の目星をつけていたのだろう。
「作ってみましょうか」
「……それしかないよね」
リィカはアイテムボックスから魔石を取り出した。昨日と同じCランクの魔石だ。魔力を流す前に、ユーリを見た。
「もし何か起こりそうになったら、速攻で《結界》張ってね」
「もちろんですよ。安心して下さい」
なぜ過去に作っていなかったのか。
その理由がはっきりしない以上、"作れなかった"何かしらの理由が存在している可能性もある。それが、周囲を巻き込むような何かである可能性もあるので、注意が必要だ。
リィカは頷いて、魔力を流し始めた。属性は水だ。こちらの方ができる可能性が高いと踏んでいるのだが、果たしてどうなるか。
やはり、時間がかかる。というか、今までと同じではあるのだが、昨日の魔力だけを流したときの作成の早さが気持ちいいくらいに早かったので、遅いと感じてしまう。
時間はかかるが、それでも円形の首輪が出来上がる。ただの輪っかだが、今のところはこれでいいだろう。
(……っていうか、これで鍵をつけるとか、どうやったらいいんだろう)
ただの輪っか状態の魔封じの枷は、使える人が限られる。鍵をつけて開け閉めできるようにしなければならないのだが、それをどう作っていいのか分からない。……が、とりあえずその疑問は置いておく。
出来上がった輪っかに、さらに水の魔力を付与していく。魔力を体の内側に押しとどめるイメージをしながら付与していって……リィカはハッと目を見開いた。
「あっ……!」
魔石がボロッと崩れた。魔力の限界を超えたのだ。
「うそ、だって昨日はあんなにできたのに」
「ただの魔力と、属性魔力の違いですかね。昨日のように魔力が凝縮していきませんでしたから」
「でもじゃあ、どうするの?」
昨日作った魔封じは、魔力が凝縮していったからこそ、リィカの魔力を空にするまでの魔力量を込められたのだ。凝縮していかなかったら、おそらくはAランクの魔石でも無理なのではないだろうか。
「作れなかった理由、これですかね」
ユーリは苦笑した。魔力は凝縮できても、属性がついてしまうと無理だった、という理由であれば、作られなかった理由に納得がいく。
「リィカ、お試しなんですが、昨日作った魔封じに水の魔力を付与してみて下さい」
「……それができるんなら、作れないってこともない気がするけど」
言いながらも、魔封じを取り出す。思いついたことを何でも試してみるしかないのだ。失敗は成功のもとだと言うのだから……と考えて、それは凪沙の記憶だっけと思う。だが間違ってはいない。
ユーリを見て頷いたのを確認してから、リィカは水の魔力付与を行っていく。
(できる、けど……)
できるが、難しい。元々ある魔力に、水の魔力を乗せて、混ぜていく。その作業が、どうしようもなく難しい。一歩間違うと、魔封じの機能が損なわれる。ものすごく繊細な作業だ。
――そうやってどのくらい時間がたったのか。
リィカは集中し続けて、やがて力を抜いた。昨日のように魔力が空になったわけではないのだが、ひどく疲れた。
「できた、と思う、けど……」
「そうですね。試してみましょうか」
ユーリが輪っかに手を伸ばしたところで、リィカはハッとして奪い取った。
「……わたしに付ける気?」
「今回は、完全な無詠唱を封じられるかどうかを見なければなりませんから。アレクやバルでは試せないでしょう?」
「ユーリがつけてよ」
「リィカは以前にもつけてますし、別にいいじゃないですか」
「ユーリだって、一度くらい経験してもいいと思う」
「いえいえ、魔法といえばやはりリィカですから。僕以上に魔法を使いこなせるリィカが、試すべきです」
「やだ。こんなときだけ謙遜するってズルい」
リィカとユーリのにらみ合いが始まった。それを見ているアレクとバルは、視線をこっそり交わす。「どうする?」という無言のやり取りは、やはり無言のまま決着した。
「悪いな、リィカ」
「え? え、なんで……っ!」
アレクがリィカの肩を押さえて、抱え持っていた魔封じの輪は、バルに奪い取られた。そしてそれはユーリに渡される。
ユーリは少し驚いた顔をしたが、すぐにニンマリと笑った。リィカは逃げたくなるが、アレクに押さえられているせいで、それもできない。
――輪が首に当てられた。
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