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しおりを挟むクルクスさんをリアム様にお返しする。
「初日だから疲れただろう、今日はもう休んでいいぞ」
リアム様……優しい……照れているのか言い方は素っ気ないけれどそれが何だか可愛く思えて私よりも少しだけ身長の低いリアム様の頭に思わず手が伸びて頭を撫でてしまう。
「なっ」
リアム様の顔が赤くなり……私もハッとする。
「ノアッ」
アルとイーサンも慌てている。
「も、申し訳ありません! ずっとクルクスさんを撫でていたのでつい……」
「僕は犬じゃないぞっ…………もういい、下がれっ」
顔を赤くして頭を押さえながらそう言われてしまった。
本当にすみません……失礼致します、と言いアルと一緒に使用人の寮へと向かった。
やってしまった……落ち込んでいると
「ノア、大丈夫だよ。リアム様もあれくらいの事すぐに忘れるさ」
「ニャン」
そうかなぁ……アルがそう言うならそうなの……かも?
三毛猫さんもニャンと言っているし……
よしっ! 切り替えていこう、顔を上げるとアルも微笑む。
「寮の説明はイーサンから聞いているよな、案内するから付いてこい」
うん、とアルに付いていき寮の一階を案内してもらう。
玄関を入りエントランスの左右にドアがあり、正面に二階へ続く階段がある。
左のドアは開けると廊下がありドアが五つある。
一階の使用人部屋だ。
右のドアを開けるとこちらも廊下がありドアが五つ。
一つ目のドアは談話室。
ダイニングとキッチンとも仕切りなしで繋がっているけれどキッチンにもドアがあり、これが二つ目のドアだ。
三つ目のドアは脱衣所と浴室で一番奥の四つ目と五つ目のドアがトイレだった。
浴室は少し広くて男性でも三人くらいなら浴槽に入れそう。
「風呂は入る時間が重なったりするからな、ノアが入っている時に誰か入ってくるかもしれないが男同士だ気にするな」
気にします。女なので。お風呂はなるべく山の家か温泉で済ませよう……入れなくてもクリーンがあるし。
「洗濯は制服はお屋敷の方で洗ってもらえるし、私服は自分で洗うか週末にまとめて実家に持って帰る人もいるな。自分で洗うなら洗い場もあるから後で案内する」
洗い場と干すところは寮の裏手にあるらしい。
みんな仕事が終わる時間がバラバラだけれど新人が入ることは伝えてあるから誰かにあったら挨拶をしておけよ、と言われた。
「夕食はもう少ししたら使用人用の食堂の準備も出来るだろうから行って見るといい」
自分の部屋で食べてもいいみたい。
アルはイーサンともう少し仕事をしてくる、と言いお屋敷へ戻って行った。
三毛猫さんと一緒に自分の部屋へ行き荷解きをする。といっても服をハンガーにかけるくらいですぐに終わってしまった。
三毛猫さんと窓から外を眺める。お屋敷はぐるりと綺麗に手入れされた庭に囲まれている。
「三毛猫さん、今日はありがとう」
毛繕いをしている三毛猫さんに
「明日はクルクスさんに伏せと待てを覚えてもらおうか」
そう言うとシッポをパタリと揺らす。
庭の方から誰かが寮に歩いてくる。誰か帰って来たのかも。
「一階に行ってみようか」
三毛猫さんは毛繕いを続けているので行ってくるね、と言って一階に降りるとちょうど玄関のドアが開いた。
入って来たのは使用人用の制服ではなく作業着のような感じの服を着た小柄な男性だった。
「………………」
「あの、今日からお世話になります、ノアと申します。よろしくお願いします」
「…………テオだ」
「テオさんは……」
というとテオでいいと言ってくれたので私もノアと呼んでください、と言った。
「テオ……は庭師ですか?」
確か二人庭師がいると言っていた。服装からしてそうだと思うのだけれど……
「…………そうだ」
……テオは私よりも少し身長が高くて目線も合わせやすく話しやすい印象だけれど……無口なのかな……
それになぜか目の下の隈がすごい……庭師って寝不足になったりするものなのかな……
えーと、
「仕事終わりでしたら一緒に食堂に行きませんか?」
そう言うと玄関のドアが開きもう一人の庭師が帰って来た。
「お? 君が新人さんかぁ、よろしくね」
背の高い彼はテオの肩に腕を回しながら俺はトマスだよ、と自己紹介をされたので私も挨拶をする。
「なになに? 一緒に食堂に行くの? 行こう行こう」
テオとは反対にトマスは明るくて話し好きみたい。
「俺達は先に風呂に入ってくるけど待っていてくれる?」
「……俺は後で入る」
何だよぉーまたかよぉーとトマスがテオに絡んでいる。
「それじゃぁテオ、待っている間一緒にお茶でも飲みませんか」
と言うとコクリと頷いてくれた。
テオが着替えをしている間に私も部屋へ戻りゲートで山の家に行って作り置きをしておいたアンミルの茶葉を持って戻って来た。
キッチンでお湯を沸かしお茶をいれてカップに注いでいるとテオが着替えて戻って来た。
どうぞ、とテオの前にカップを置く。
……ありがとう、と言い一口飲むと……美味しい、と言ってくれた。
私もダイニングの椅子に座りお茶を飲む。ふぅ、アンミルはカモミールに似ていて落ち着く。
それから特に話したりはしなかったけれど不思議と気まずい感じもなく……しばらくするとキッチンのドアが開いた。
トマスがタオル一枚腰に巻いた姿で入って来た。
なるほど。
男性ばかりだとこういう事もあるのか……
「待たせちゃってごめんね」
そう言いながら蛇口をひねりコップに水を注ぎ飲むトマス。目のやり場に困る。庭仕事をしているからかたくましい身体に日焼けもしていて健康的。
テオは反対に本当に庭師かな、と思うほど色白で目の下に隈もあり何か少し不健康そう……細身だけれどそれでもやっぱり私よりは全体的にたくましい。
改めて私が男性だと言い張るのは無理があったかな……と思ったけれどきっと皆さんこういうヤツもいる、と思ってくれるよね……と思い直した。
プハァーーとコップの水を飲み干してから服を着てくる、とトマスは自分の部屋に向かった。
ホッとしながらお茶を飲んだカップを洗おうと立ち上がり、トマスが使ったコップとテオも飲み終わっていたらついでに一緒に洗うよと言うと
「……使ったものはそれぞれ自分で片付ける。でないと皆だらしなくなっていく。ノアも自分が使ったものだけ片付ければいい」
そうなのか……ここではここのやり方に従った方が良さそうだからそうさせてもらおう。
テオもカップを、トマスも服を着て戻ってきてコップを片付ける。
食堂へ行くとトマスがそこにいる使用人を紹介してくれた。
それから食堂では夜だけお酒も飲めると教えてくれたけれど飲み過ぎには気を付けるよう言われた。
もし翌日の仕事に響くような飲み方や騒ぎを起こしたらお屋敷ではお酒が飲めなくなってしまうらしい。
たくさん飲みたいなら休みの前日に自室で……ということらしいけれどそういうときは大抵街へいってみんなと楽しく騒ぎながら飲むそうなのでお屋敷ではほどほどにね、と言われた。
そんな細かいルールを教えてもらいながら初日の夜を過ごした。
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