162 / 251
162※
しおりを挟むノバルトのお陰で冷静でいられる。
マーサにあんなことをした男達なんてどうなってもいいけれど全員生きたまま捕らえて、売られていった人達を探さないと……そして買った人達にも裁きを……
治すのは血が止まる程度に留めて痛みはしっかりと感じてもらおう。こんな人達にヒールを使いたくはないけれど死んでしまっては困るのだ。
どこの国も人身売買は違法だと聞いた。
もっと早く国が動いていればマーサがこんな目にあうことも……とも思ったけれど……私だって街でたくさん行方不明者の張り紙を見ていた……
見ていたのにどこか他人事だったのだ……自分の大切な人がいなくなるまでは…………
過ぎたことはどうしようもないけれど、そんな自分にも腹が立つ……
男にも死なないようにヒールをかけたとはいえ怒っていない訳ではない。
部屋には二十人程の男達……入り口を塞がれてしまった。
「おい、何があった? 何だぁお前達は?」
リーダーらしき男が前へ出てくる。ノバルトの事がわからないみたい……
「どっちも高く売れそうじゃねえか」
「男の方は売るには年がいき過ぎてないか?」
「バーカ、金持ちの未亡人や男色のじじぃがペットとして飼うんだよ、それにこれだけの美形なら売れる先はいくらでもあるだろ」
ノバルトをチラリ…………無表情……
「女の方は若いな。何で男の格好をしてるんだ?」
ここにいる女性達の中なら……たぶん私が一番年上……
「綺麗な顔をしてるじゃねぇか、俺の側に置いておくか。飽きたらお前らに回してやるよ」
ピクリ、とノバルトが動いたような……
手を切られた男と一緒に入ってきた男達もあっ、と反応する。
「彼女の側にいるのは私だ。諦めるのだな」
いつの間にかノバルトが男の目の前に移動して向かい合う…………
ダンッ と音がして一瞬間があり
「ギィヤァァァァッッ!!」
ノバルトと向かい合ったまま男が叫ぶ……男の足にノバルトが剣を突き立てている。
それに……とノバルトが微笑み私をみる。
「私が彼女に飽きることはない。彼女が私に飽きない限り私は側にいられるのかな?」
そう言いながらグリッと刺したままの剣を回す。
「イデェェェェッッ!!」
リーダーがやられているのを見て男達が扉の方へ下がっていく…………けれど逃がさない。
風魔法で扉を閉めて木の板で鍵をかける。
さて、どうしようか。
数人の男達が鎖で繋がれている女性達の方へ走っていく。
人質にでもする気なのか……もうここに閉じ込められている人達には触れさせない。
男達の足の腱を切る。突然足がもつれ床に転がり立ち上がることも出来なくなった男達を見てリーダーの近くに立っていた男の一人が喋りだす。
「な、なぁ、まずは話し合おうぜ」
それを聞いた瞬間、私は土魔法で拳くらいの塊を作り風魔法で男達全員にぶつけ始める。
訳のわからない現象に驚きながらも
「イテェッ!」
「やめてくれぇっ!」
「助けてぇっ!」
と叫んでいる。
「痛い、と彼女達に言われてやめましたか」
「やめて、と言われてやめましたか」
「助けて、と言われてやめましたか」
「ここに連れて来られた人達の話を聞きましたか」
そう問いながらぶつけ続ける。
この人達はわかっているのかな……これまで拐われてきた人達が、売られてしまった人達が、もしかしたら殺されてしまった人達がされたことと同じ事をされても文句は言えないと言うことを。
男達の顔が腫れてくる。扉が開かないから鉄格子の方へ走っていく。中の人達を盾にする気なのか……
ならば、とノバルトがしたように全員の手を風魔法で切り落とす。
これで鍵も開けられないしもう誰も捕まえることはできないね。
腕の方にはすぐにうっすらとヒールをかける。
それから足の腱も切ると男達は床に崩れパニックになる。
切り落とされた自分達の手を見ながら一斉に喚きだすから……何を言っているのかわからない。
痛みと恐怖からかいろいろなところからバケモノッとかもう殺してくれっ、と聞こえてくる。
バケモノ……ねぇ……自分達がしてきた事を覚えていないのだろうか。
そんなに簡単に終われる訳がないでしょう。
マーサにした仕打ちはこんなものではないのだから。
再び怒りがフツフツと湧いてくる。
ノア…………またマーサに呼ばれた気がした。
近づくとマーサは目を閉じたまま泣いていた……
けれど意識はあるみたいで……傷が治っていることに気がついていないような様子だ……
「ノア……本当にそこにいるの? あなたの香りがするわ。とても落ち着く……懐かしい香り……」
微笑んでいるけれど涙が溢れていて……何だか悲しくなってしまう……
「ノア、お願い。私を殺して……」
マーサ……? 何であの男達と同じ事を言うの……
「こんなこと頼んでしまってごめんなさい。でも自分でするのは……どうしても怖くて……それに……もう自分では……」
違う……
「私は……助けに来たんだよ?」
マーサが首を振る。
「ごめんなさい、帰れない……私……こんなになってしまって……家族にも……ウィルにも会えない……っこんな……帰りたいっ……でも生きていけない……っ」
マーサは誰よりも抵抗して帰ることを諦めなかった……と言っていた……けれど……身体を治しても……マーサの心は折れてしまっていたのかもしれない……
あんな目にあったのだから……
それでもごめん。
マーサの結界から三毛猫さんを出してユキツクミ草のお香をポケットから出して焚く。今はゆっくり眠って……
それから床に転がってわめいている男達を避けながら鎖で繋がれている女性達の元へ行く。
足枷はノバルトが鍵を見つけて外してくれていた。
クリーンとヒールをかけユキツクミ草の液を混ぜた水を飲んでもらいリライのアメ玉を口に入れる。
鉄格子も開いていて、捕まっていた人達にも同じ水を飲んでもらい、クリーンとヒールをかけてリライのアメ玉を舐めてもらう。
捕まっていた人達が眠りにつく頃、扉の外の板が外される音がした。
ノバルトと三毛猫さんとマーサの近くに行き結界を張る。
部屋に入ってきたのはレクラス王国の騎士団だった。
騎士の皆さんは中の様子に戸惑っていたけれど、床で転がっている男達を縛り上げて捕まっていた人達の救護をしている。
「ロイク殿に頼んでおいたのだよ、騎士団をここへ向かわせるように」
そうだったんだ。
「ここにいる者達は全員城へ連れていくように頼んであるから私達も城へ戻ろうか」
マーサだけは私が連れて帰りたい、と言うとノバルトは頷いてくれた。
帰ろう……マーサ。
マーサにもフライをかけて一緒にお城へ帰る。
お城へ戻るとノバルトはロイク殿下の執務室のバルコニーへ降り立ち、三毛猫さんとマーサと私はローズ様のお部屋のバルコニーから中へ入れてもらった。
ローズ様がロイク殿下から話を聞いて、隣の部屋を整えておいてくれた。
マーサに私がついていられるように私が寝られるベッドも入れてくれている。
「お兄様からはトーカが戻って来たらこのお部屋に案内するように言われているわ。ここには誰も入らないようにと伝えてあるけれど……あの、マーサは……無事よね……?」
と……有難い。マーサをフライでベッドへ運び
「ありがとうございます」
そう言って結界を解くと突然現れたマーサにローズ様は驚いていたけれど
「マーサッ……良かった……」
帰ってきてくれたのね……とポロポロと涙を溢す。
「トーカ、無事に連れ戻してくれてありがとうっ」
と抱き締められた。
今は眠っているマーサ…………
目を覚ましたらまた同じ事を私に頼むのだろうか……
他にも同じように思っている人達が……いるのだろうか……
5
あなたにおすすめの小説
【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~
双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。
なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。
※小説家になろうでも掲載中。
※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる