異世界転移の……説明なし!

サイカ

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 ノバルトのお陰で冷静でいられる。


マーサにあんなことをした男達なんてどうなってもいいけれど全員生きたまま捕らえて、売られていった人達を探さないと……そして買った人達にも裁きを……

治すのは血が止まる程度に留めて痛みはしっかりと感じてもらおう。こんな人達にヒールを使いたくはないけれど死んでしまっては困るのだ。

どこの国も人身売買は違法だと聞いた。

もっと早く国が動いていればマーサがこんな目にあうことも……とも思ったけれど……私だって街でたくさん行方不明者の張り紙を見ていた……
見ていたのにどこか他人事だったのだ……自分の大切な人がいなくなるまでは…………

過ぎたことはどうしようもないけれど、そんな自分にも腹が立つ……
男にも死なないようにヒールをかけたとはいえ怒っていない訳ではない。

部屋には二十人程の男達……入り口を塞がれてしまった。

「おい、何があった? 何だぁお前達は?」

リーダーらしき男が前へ出てくる。ノバルトの事がわからないみたい……

「どっちも高く売れそうじゃねえか」

「男の方は売るには年がいき過ぎてないか?」

「バーカ、金持ちの未亡人や男色のじじぃがペットとして飼うんだよ、それにこれだけの美形なら売れる先はいくらでもあるだろ」

ノバルトをチラリ…………無表情……

「女の方は若いな。何で男の格好をしてるんだ?」

ここにいる女性達の中なら……たぶん私が一番年上……

「綺麗な顔をしてるじゃねぇか、俺の側に置いておくか。飽きたらお前らに回してやるよ」

ピクリ、とノバルトが動いたような……
手を切られた男と一緒に入ってきた男達もあっ、と反応する。

「彼女の側にいるのは私だ。諦めるのだな」

いつの間にかノバルトが男の目の前に移動して向かい合う…………

ダンッ と音がして一瞬間があり

「ギィヤァァァァッッ!!」

ノバルトと向かい合ったまま男が叫ぶ……男の足にノバルトが剣を突き立てている。

それに……とノバルトが微笑み私をみる。

「私が彼女に飽きることはない。彼女が私に飽きない限り私は側にいられるのかな?」

そう言いながらグリッと刺したままの剣を回す。

「イデェェェェッッ!!」

リーダーがやられているのを見て男達が扉の方へ下がっていく…………けれど逃がさない。
風魔法で扉を閉めて木の板で鍵をかける。

さて、どうしようか。

数人の男達が鎖で繋がれている女性達の方へ走っていく。
人質にでもする気なのか……もうここに閉じ込められている人達には触れさせない。

男達の足の腱を切る。突然足がもつれ床に転がり立ち上がることも出来なくなった男達を見てリーダーの近くに立っていた男の一人が喋りだす。

「な、なぁ、まずは話し合おうぜ」

それを聞いた瞬間、私は土魔法で拳くらいの塊を作り風魔法で男達全員にぶつけ始める。

訳のわからない現象に驚きながらも

「イテェッ!」

「やめてくれぇっ!」

「助けてぇっ!」

と叫んでいる。

「痛い、と彼女達に言われてやめましたか」

「やめて、と言われてやめましたか」

「助けて、と言われてやめましたか」

「ここに連れて来られた人達の話を聞きましたか」

そう問いながらぶつけ続ける。

この人達はわかっているのかな……これまで拐われてきた人達が、売られてしまった人達が、もしかしたら殺されてしまった人達がされたことと同じ事をされても文句は言えないと言うことを。

男達の顔が腫れてくる。扉が開かないから鉄格子の方へ走っていく。中の人達を盾にする気なのか……

ならば、とノバルトがしたように全員の手を風魔法で切り落とす。
これで鍵も開けられないしもう誰も捕まえることはできないね。
腕の方にはすぐにうっすらとヒールをかける。

それから足の腱も切ると男達は床に崩れパニックになる。
切り落とされた自分達の手を見ながら一斉に喚きだすから……何を言っているのかわからない。

痛みと恐怖からかいろいろなところからバケモノッとかもう殺してくれっ、と聞こえてくる。

バケモノ……ねぇ……自分達がしてきた事を覚えていないのだろうか。

そんなに簡単に終われる訳がないでしょう。
マーサにした仕打ちはこんなものではないのだから。
再び怒りがフツフツと湧いてくる。

ノア…………またマーサに呼ばれた気がした。

近づくとマーサは目を閉じたまま泣いていた……
けれど意識はあるみたいで……傷が治っていることに気がついていないような様子だ……

「ノア……本当にそこにいるの? あなたの香りがするわ。とても落ち着く……懐かしい香り……」

微笑んでいるけれど涙が溢れていて……何だか悲しくなってしまう……

「ノア、お願い。私を殺して……」

マーサ……? 何であの男達と同じ事を言うの……

「こんなこと頼んでしまってごめんなさい。でも自分でするのは……どうしても怖くて……それに……もう自分では……」

違う……

「私は……助けに来たんだよ?」

マーサが首を振る。

「ごめんなさい、帰れない……私……こんなになってしまって……家族にも……ウィルにも会えない……っこんな……帰りたいっ……でも生きていけない……っ」

マーサは誰よりも抵抗して帰ることを諦めなかった……と言っていた……けれど……身体を治しても……マーサの心は折れてしまっていたのかもしれない……

あんな目にあったのだから……

それでもごめん。

マーサの結界から三毛猫さんを出してユキツクミ草のお香をポケットから出して焚く。今はゆっくり眠って……

それから床に転がってわめいている男達を避けながら鎖で繋がれている女性達の元へ行く。
足枷はノバルトが鍵を見つけて外してくれていた。

クリーンとヒールをかけユキツクミ草の液を混ぜた水を飲んでもらいリライのアメ玉を口に入れる。

鉄格子も開いていて、捕まっていた人達にも同じ水を飲んでもらい、クリーンとヒールをかけてリライのアメ玉を舐めてもらう。

捕まっていた人達が眠りにつく頃、扉の外の板が外される音がした。

ノバルトと三毛猫さんとマーサの近くに行き結界を張る。

部屋に入ってきたのはレクラス王国の騎士団だった。

騎士の皆さんは中の様子に戸惑っていたけれど、床で転がっている男達を縛り上げて捕まっていた人達の救護をしている。

「ロイク殿に頼んでおいたのだよ、騎士団をここへ向かわせるように」

そうだったんだ。

「ここにいる者達は全員城へ連れていくように頼んであるから私達も城へ戻ろうか」

マーサだけは私が連れて帰りたい、と言うとノバルトは頷いてくれた。

帰ろう……マーサ。

マーサにもフライをかけて一緒にお城へ帰る。

お城へ戻るとノバルトはロイク殿下の執務室のバルコニーへ降り立ち、三毛猫さんとマーサと私はローズ様のお部屋のバルコニーから中へ入れてもらった。

ローズ様がロイク殿下から話を聞いて、隣の部屋を整えておいてくれた。
マーサに私がついていられるように私が寝られるベッドも入れてくれている。

「お兄様からはトーカが戻って来たらこのお部屋に案内するように言われているわ。ここには誰も入らないようにと伝えてあるけれど……あの、マーサは……無事よね……?」

と……有難い。マーサをフライでベッドへ運び

「ありがとうございます」

そう言って結界を解くと突然現れたマーサにローズ様は驚いていたけれど

「マーサッ……良かった……」

帰ってきてくれたのね……とポロポロと涙を溢す。

「トーカ、無事に連れ戻してくれてありがとうっ」

と抱き締められた。

今は眠っているマーサ…………
目を覚ましたらまた同じ事を私に頼むのだろうか……


他にも同じように思っている人達が……いるのだろうか……


 
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