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202 ノヴァルト 冬華
しおりを挟むーー ノヴァルト ーー
レクラス王国からゲートでリアザイアに戻る。
父上の元へ向かう。
「ノヴァルト殿下、いつお戻りになられたのですか!?」
廊下で会ったメイドに驚かれてしまった。
「私だけ先に帰って来たのだよ、それよりも母上とノクトとオリバーを父上のところへ呼んでくれないかな」
曖昧に答えて頼みごとをする。
「そうだったのですね、かしこまりました。すぐにお呼びいたします」
そう言って驚きながらもすぐに彼らの元へ向かってくれた。
父上の執務室のドアをノックする。
「ノヴァルト殿下!? 戻られていたのですか」
ドアを開けて私をみた宰相が驚いている。
「はい、先に戻ってまいりましたので父上にご挨拶を」
何かあったとは思われないよう微笑みながらそう言うと
「ノヴァルト、戻ったか。少し休憩にしようか」
父上は驚いた様子もなく人払いをしてくれた。
母上とノクトとオリバーも呼んでいると伝えるとノックがして三人が入って来た。
三人を呼ぶよう頼んだメイドが人数分のお茶を用意してくれた。
メイドが部屋から出ていき皆が一口お茶を飲むと
「何があった」
父上が切り出す。
「トウカがいなくなりました」
皆がハッとする。
「あれが起こったのね。すぐに探すわよ」
母上が察する。
ノクトとオリバーは説明を待っている。
「レクラスの王城の敷地内にフロラの大きな木があり、トウカはミケネコサンとその木を見に行ってそれから……」
と説明をする。
「兄上……元の世界に戻ってしまったということはないのですか」
不安そうなノクトとオリバー。
「それはないよ。微かにトウカの存在を感じるからね」
そう伝えたがトウカが無事に戻ってくるまでは不安だ。
オリバーがテーブルに地図を広げる。
「どこにいるのかは……見当がついているのですよね」
私と母上が頷く。
「トーカさんはおそらく東へ……ベゼドラ王国にいるわ」
私も同じ答えだ。
「ベゼドラ……なぜ……ベゼドラのどこに……」
オリバーが視線を彷徨わせる。
「どうやって探せば……」
ノクトが私を見る。
「それは……」
父上と母上を見て以前話したことを思い出す。
「トーカさんから聞いた話だと、最初はお城の屋根、次に森の中、そして湖の上、だったかしら」
この現象が起きた時のことを。
そう、そしてトウカはベゼドラ王国にも行ってみたいと言っていた。
「ベゼドラの王城の敷地内にそれらが揃っている場所がある。もちろん他の場所にも森や湖がありそことは限らないが……」
そう言って父上は皆の顔をみてから
「これから話すことは公にはならない……王家の秘密として他言はしないで欲しい」
ノクトとオリバーは一瞬戸惑いを見せたがすぐに誓います、と言い頷いた。
「ベゼドラ王国は双子の出生率が高いことは知っているな」
皆が頷く。
「ベゼドラの王子も双子ですね、幼い頃にしか会ったことはありませんが……どちらか区別がつかずからかわれたのを覚えています」
ノクトが思い出したように話す。
「そうだ。ベゼドラ王国では双子は縁起がいいとされている。しかしそれ以上は縁起が悪いとされているのだ」
そう……平民にまで浸透してしまっているこの考え……
「三つ子が生まれたらどうなるか……末の子をいないものとするのだ。養子に出すか……殺してしまうか」
ここまでは皆も知っている話だ。
「ベゼドラ王国の王子は三つ子だったのよ」
母上が話を引き継ぐ。
「!?」
ノクトとオリバーが驚く。
私は以前、父上と母上にトウカにはコントロールが出来ない力がある、と話した時に聞いている。
「他国の王族も知らないことよ。私は三つ子を出産して動揺していたシャーロット王妃から相談されたの。知恵を貸して欲しい、末の子を殺したくないと」
他国の決まりごとには口を出しにくいのだがよほど動揺していたのか相談されてしまったのだとか。
「私はその(バカげた)迷信を変えることができるのは誰かわかるでしょう、と。貴方の代から変えたらいい、そこから流れは変わる、と」
三つ子を出産している民も少なからずいるはずだから、たくさんの子供達も救われると思ってそう言ったのだけれど……彼女には難しいことだったみたい、と。
「結局彼女は末の子を隠すことにしたようね。おそらく国王には二人の王子に何かあった時の代わりになる、とでも言ったのでしょう」
力になれず末の子には可哀想なことをしたわ……と目を伏せる母上。
「母上、その事とトーカの居場所とどの様な関係が……」
ノクトが……オリバーも戸惑っている。
母上は少し言いにくそうに
「これまでの様子をみているとトーカさんは……面倒事に巻き込まれやすいし、無意識だと思うけれども自ら向かっているようなところもあるわ」
それは……私も同感だ。だから
「だからおそらくトーカさんはベゼドラ王国の第三王子の近くにいるわ」
あの国……ベゼドラ王国で一番触れて欲しくはないところだ。
誰も我が子を手放したり殺したりはしたくないだろう。
平民の間では養子に出すよりも孤児院に置き去りにするか殺されてしまっている……あるいは売られてしまっている子の方が多いだろう。
遠い昔の迷信など…………いや……トウカの無事を確認するまでは余計なことは考えないでおこう。
トウカに関しての予測は難しいが一番可能性の高いところはここだろう。
おおよその居場所も絞れたところで父上が私とノクトとオリバーをベゼドラ王国へ向かわせるための先触れを出す。
私はトウカがかけてくれたこの力で先に向かいたかったがおそらくあと数時間か数日かで使えなくなってしまうだろう。
すぐに戻って来られないということは……トウカは身動きが取れない状況なのだ。
後でゲートがまだ使えるか確認してみよう。
王族が他国へ訪問する際は先方の準備や都合もあるので一月前までには先触れが届くようにしていたが今回は……先触れを出してから遅くとも二、三日中にはここを出たい。
しかし父上に一週間は待てと言われるだろう。
急いで向かえばあちらも警戒してしまう……
仕方がない。我々の他に騎士達の準備もあるのだからあまり無理は言えない。
セオドア殿のように変装をして……とも思ったがトウカが王城の敷地内にいるのならやはり王族として訪問した方がトウカへの近道になるだろう。
トウカの事となると心がかき乱される。
落ち着いて出発までに必要なものを揃えておこう……
※※※※※※※※※※※※
ーー 冬華 ーー
お腹が空いた…………
ぼんやりと天井を見つめながら思う……
かつ丼が食べたい、と。
今は……お昼頃かな、隣にイシュマさんはいない。
いつからだろう……いつからこんな…………
病み上がりにガッツリしたものが食べたくなったのだろう。
お粥は美味しかった。あの時はまだ体調が悪かったからか……いや、今はそんなことを考えている場合ではない。
ヒール……クリーン…………どちらも使えない。
しばらくしたら戻るのかそれともこのまま使えなくなるのか……空を飛べたら三毛猫さんも探しやすいからその力だけでも戻って欲しい。
無いものは仕方がないので今度はちゃんと体調を確認してイシュマさんにも挨拶をしてから三毛猫さんを探しに行こう。
起き上がり水を飲む。
「ふぅ、よしっ」
かつ丼! ……と思ったけれど注文したら出てくるわけでもなく都合よく肉があるわけでもなく。
仕方がない、お腹が空きすぎて身体が重く感じるけれどあるもので作れるものを作ろう。
こんな時に感じる家族の有り難さよ。
きっと病み上がりでもかつ丼が食べたいと言えば用意してくれるだろう……たぶん。
イシュマさんには……迷惑をかけてしまったしさすがにこれ以上面倒をかけるわけにはいかない……
きちんと挨拶をして話をして出ていこう。ちゃんとしたお礼は後日、ということで。
そう考えたところでふと思った。
三毛猫さんはもしかしたら木に登っているのかもしれない。……降りられなくなっているとか……?
そうなるともう少しイシュマさんにお世話になることになる。
梯子とか借りないと三毛猫さんを救出できない。
そんなことを考えながらリビングへ向かう。
やっぱりイシュマさんはいない。
キッチンで手を洗っていると……
ガチャリ、とドアが開く音が聞こえた。
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