眠れる森の星空少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 3か月前にも同じことがあった。相手は大学3年生だった。いつもと同じタイプの子だ。年下の、落ち着きのある子だ。言い返されるよりも、大人しく従って欲しい。そういう相手が言い返してくる時は、別れる直前だ。どの相手とも長く続いていない分だけ、傷は浅いと思う。 

 ふと、出会ったばかりの大学生のことが思い浮かんだ。 悠人のことだ。出会った時は、モップを突き付けられた。誤解だと分かった後も、変質者とまで言われた。落ち着きがなくて、そそっかしい。今まで付き合ってきた子のタイプとは違うのに、どういうわけか惹かれてしまった。

 家と会社との往復で、物足りなさを感じていた。そう思うようになると、次の恋愛の相手が現れる。相手からのアプローチでデートをして、気に入れば付き合っていた。浮気はしない。恋愛に貪欲ではからだ。

(だからフラれるのか。悠人君は今頃どうしているだろう?2限目から授業だと言っていた。通学途中かな?)

 仕事中でも悠人のことが気になっている。こういう経験は初めてだ。思い切り睨みつられた時には、胸の鼓動が高鳴った。『NO』だと言い返してきた時の目が忘れられない。今まで付き合ってきた相手には感じられないものだった。

(もう少し落ち着きがあればいいのに……)

 大学では法学部枠で受験したそうだ。そそっかしいことが理由だという。本当は理系の学部を志望していたが、実験で事故を起こす恐れから、父親から別の学部へ行けと諭されたらしい。その話を聞いただけでも、自分の好みではない。それなのに、何かやらかしていないか気になっている。

(苛めたくなってきた。連絡を取ってみよう……)

 さっそくカフェスペースへ向かった。伊藤から視線を向けられたが、気づかないふりをした。

(桜木がいたのか。ちょうど良かった。悠人のことを聞いてみよう……)

 カフェスペースに来てみると、先客がいた。桜木聡太郎という。インターンシップ生であり、悠人と同じ大学の院生だ。好みのタイプだから誘いをかけた事がある。恋人がいることは知らなかった。お互いに気が合うからと、今では友人関係になった。黒崎のパートナーである夏樹の兄が恋人だと知ったのは、知り合った直後だった。すると、桜木の方から声を掛けられた。

「室長、おはようございます」 
「おはよう。業務には慣れたかな?」 
「ええ。しつこく教えて頂いていますので」 
「ハードロックか、ヘヴィメタルのライブ情報が知りたい」
「それなら……、ベテルギウスはどうですか?ソールドアウトかも知れませんけど。悠人君が好きなバンドです」
「どうして悠人君を誘うと分かった?」
「女性達からの誘いを断り始めたでしょう?」
「いつも断っているよ」 
「女性社員と食事に行ったでしょう?ここにいる間も見られていますよ」

 桜木の視線の先には女性社員がいた。経営企画部の子だ。確かに一度だけ食事に行った。話が面白い子だったから、友人になりたくてだった。だが、個人的な付き合いをしない方が良かったと思っている。 このオフィスで噂になったからだ。
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