眠れる森の星空少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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6-13 (早瀬視点)

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 悠人のことを寮まで送り届けた帰りだ。すぐに帰る気持ちになれず、寮の近くで停車している。傾けたシートへ体を預け、フロントガラス越しに夜空の星を眺めた。
 
 悠人。ぽつりと名前を呼んだが、返事があるわけがない。あの子は自分の家へ帰ってしまったのだから。砦のように大きな寮の3階の部屋にいる。 

「降りて来てくれないかな……」 

 往生際が悪い自覚はしている。やっと見つけたのに。無理にでも連れ帰れば良かったのか? いいや、それは出来ない。今まで散々、無理に引き止めて来たからだ。

 立てかけてあるスマホへ視線を向けた。 電話を掛けたくて画面をタップした後、手を止めた。待ち受け画面の悠人の顔を曇らせたくない。遊びに行った箱根の温泉施設で、ひまわりのような満開の笑顔を浮かべているものだ。出来ることなら、今も隣で笑っていてほしいのに。 

 どうして追い詰めたのか?もっとよく話を聞くべきだった。あの子はまだ大学1年生で、恋愛経験もないと言っていた。自分は何人も付き合ってきた。あの子よりも12歳も上だ。それなのに、同じ目線どころか困らせている。いつもの自分なら、容易く恋人を作ることが出来たのに。

「俺のこと、好きになってくれないかな……」

 この声は届かないだろう。ふと、後部座席に目をやった。足元には、悠人の黒いリュックが残っていた。外が暗いから、置いてあるのが分からなかった。今日の教室で使ったものが入っているはずだ。探しているかもしれない。

「ラインだけでも……、電話をかけよう」

 用件だけ伝えればいい。何度目かの呼び出し音の後、向こうの音声が聴こえて来た。それは悠人の悲鳴だった。一瞬で体中が冷たくなる感覚が起きた。 

「わーーー!ぎゃーーー!」 
「悠人?どうした?」
「あ……、裕理さん!怖いよー!」 
「今から行く!寮に居るんだな?」 
「この時間は、寮生以外は入れないよ。わあああーっ」
「すぐに走って出てこい!まだ寮のそばにいる!一階に行く!」
「うん!」

 すぐに車を発進させて、学生寮へ向かった。
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