眠れる森の星空少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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8-1 初めてのヤキモチ

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 6月7日、金曜日。午前8時。

 今、早瀬と二人で駅までやって来た。それぞれの出勤と通学のためだ。マンションの最寄り駅まで来るのは何度目だろう。昨日から早瀬のマンションで暮らしている。しばらく寮を留守にする書類を寮監さんへ出した後だから、父から横やりが入るのは想定済みだ。今はまだ父から仕送りを受けている身だからだ。

(もう改札口だ……)

 話しながら来たから、時間が経つのが早い。改札口の近くで立ち止まった。ここを過ぎれば、それぞれのホームに行くために別れることになる。電車に乗るためだ。いつの間にか日常光景になっている。俺達が向かい合い、いってきますという言葉を掛け合うのも日常だ。

「いってくるよ」 
「いってらっしゃい」
「いいね、こういうの」
「何が?」
「新婚みたいだ」 
「ええ?」
「冗談だよ」

 早瀬が笑った。そして、いつも持ってくれる荷物を受け取って肩に掛けた後、彼の手が伸びてきた。

「Tシャツの襟が食いこんでいるぞ」
「ありがとう」 
「気を付けて行くんだよ。知らない人についていくなよ?お菓子をあげる。車で送ってあげる。家族が事故に遭った。知らんぷりして逃げるんだぞ?」 
「分かっているよ」
「迷子になっても、親切な人から案内してあげるって言われても、信用するなよ」
「うん!」 
「俺のことが好き?」 
「うん!」
「へえー?」 
「え、ええ!?さ、さっきのは誘導……っ」
「今日も頑張れる。俺も好きだよ」  

 小さな音を立てて頬にキスをされた。そして、早瀬が硬直している俺の頭を撫でた後、改札口へ消えて行った。 
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