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ここは大きな公園だ。俺達のように散歩をしている人達がいる。しばらく公園に来ていなかった。黒崎の笑顔を見て、来て良かったと思った。そして、黒崎の方も俺をここに連れてきて良かったと言った。
「こんなに喜ぶとは思っていなかった。どこへ連れて来ても喜んでくれるが。本当に自然が好きだな」
「植物に囲まれたら気持ちいいだろ?俺の名前には”樹”がついているんだよ。仲間だもん」
「上手いことを言ったな」
「この白い花は何か知ってる?」
「いいや?」
「ユーカリだよ。コスモスもユーカリも、好きな花なんだ。黒崎さんって、コスモスが好きだって言ってたよね。花言葉は知っている?」
「……harmony、peace、modesty、beautiful。特に好きな言葉が、the joys that love and life can bring……、愛や人生がもたらす喜びだ」
英語を話せないが、淀みなく出てきた言葉が心地よくて、聞き入ってしまった。 そして、その花言葉に吹き出してしまった。
「調和、平和。えーっと、謙虚だっけ。美しい。あんたに似合わないよ」
「そうか?」
「愛や人生がもたらす喜び、か。俺のことも喜びに入ってる?」
「当たり前だ。ユーカリの花言葉は?」
「……再生、新生、思い出、記憶、慰め、追憶だよ。あんたに、ピッタリだよ」
「……」
黒崎が目を見開いたから、我に返った。 言わない方が良かった。 記憶の中の家庭環境。 いつも過去を思い出しているから、”追憶”。 兄との思い出。俺に求めている、慰め。再生や、新生という未来を迎えて欲しいと願っている。 しかし、触れられたくない事があるだろう。
「言われたくなかったよね。ごめん……」
「夏樹……」
謝った後で俯いた。こういう時には、最後まで相手の目を見るべきなのに。 もう一度見上げようとした時、強い力で引き寄せられた。いきなりことだから、両腕は下げたままだ。 背中に手を回そうとしても、腕の中に閉じ込めらたから動けない。
「黒崎さん……。どうしたの?」
「そばにいてほしい」
苦しそうな声で言われた。ここに居るよ。そう答えようとする前に、唇を塞がれて、言葉を奪われてしまった。悲しそうな表情を和らげたくて、呼吸の合間に微笑みかけた。スーツの胸に両手を置いて、少しでも多く触れた。ここに居ることを伝えたい。手から伝わる体温で、もっと温かくなってもらいたい。
「俺は居なくならないよ?」
「夏樹……」
何度も唇を重ね合い、お互いの唇を啄んだ。 頭の後ろには手を回されている。優しく撫でるように触れられている。 何て愛おしいのだろう。
角度を変えつつ、お互いの存在を確かめ合い、想いを交換し合った。 愛している。照れくさくて、普段は口にできない。しかし、今夜は言えそうだ。そっと唇が離れた後、至近距離で見つめ合い、勇気を出して囁きかけた。
「黒崎さん。愛しているよ」
「夏樹……」
愛しい人の名前を呼んだ。 黒崎からはキスで返事をされた。どのくらい時間が経ったのだろう。頬へ唇を押し当てた後で囁かれた。
「こんな罰なら当たってよかった」
「何のことだよ?……”神様は乗り越えられる人にしか、試練を与えない”。あんたが好きな言葉だよね?あんたと一緒なら、乗り越えられるよ。一人でじゃないところは、ツッコむなよ?」
「十分だ。愛している」
黒崎が優しく笑った。彼の体をぎゅっと抱き返した。夏の盛りを過ぎて、涼しさが訪れた公園内の月明かりの下で、黒崎と俺の影が重なっていた。
「こんなに喜ぶとは思っていなかった。どこへ連れて来ても喜んでくれるが。本当に自然が好きだな」
「植物に囲まれたら気持ちいいだろ?俺の名前には”樹”がついているんだよ。仲間だもん」
「上手いことを言ったな」
「この白い花は何か知ってる?」
「いいや?」
「ユーカリだよ。コスモスもユーカリも、好きな花なんだ。黒崎さんって、コスモスが好きだって言ってたよね。花言葉は知っている?」
「……harmony、peace、modesty、beautiful。特に好きな言葉が、the joys that love and life can bring……、愛や人生がもたらす喜びだ」
英語を話せないが、淀みなく出てきた言葉が心地よくて、聞き入ってしまった。 そして、その花言葉に吹き出してしまった。
「調和、平和。えーっと、謙虚だっけ。美しい。あんたに似合わないよ」
「そうか?」
「愛や人生がもたらす喜び、か。俺のことも喜びに入ってる?」
「当たり前だ。ユーカリの花言葉は?」
「……再生、新生、思い出、記憶、慰め、追憶だよ。あんたに、ピッタリだよ」
「……」
黒崎が目を見開いたから、我に返った。 言わない方が良かった。 記憶の中の家庭環境。 いつも過去を思い出しているから、”追憶”。 兄との思い出。俺に求めている、慰め。再生や、新生という未来を迎えて欲しいと願っている。 しかし、触れられたくない事があるだろう。
「言われたくなかったよね。ごめん……」
「夏樹……」
謝った後で俯いた。こういう時には、最後まで相手の目を見るべきなのに。 もう一度見上げようとした時、強い力で引き寄せられた。いきなりことだから、両腕は下げたままだ。 背中に手を回そうとしても、腕の中に閉じ込めらたから動けない。
「黒崎さん……。どうしたの?」
「そばにいてほしい」
苦しそうな声で言われた。ここに居るよ。そう答えようとする前に、唇を塞がれて、言葉を奪われてしまった。悲しそうな表情を和らげたくて、呼吸の合間に微笑みかけた。スーツの胸に両手を置いて、少しでも多く触れた。ここに居ることを伝えたい。手から伝わる体温で、もっと温かくなってもらいたい。
「俺は居なくならないよ?」
「夏樹……」
何度も唇を重ね合い、お互いの唇を啄んだ。 頭の後ろには手を回されている。優しく撫でるように触れられている。 何て愛おしいのだろう。
角度を変えつつ、お互いの存在を確かめ合い、想いを交換し合った。 愛している。照れくさくて、普段は口にできない。しかし、今夜は言えそうだ。そっと唇が離れた後、至近距離で見つめ合い、勇気を出して囁きかけた。
「黒崎さん。愛しているよ」
「夏樹……」
愛しい人の名前を呼んだ。 黒崎からはキスで返事をされた。どのくらい時間が経ったのだろう。頬へ唇を押し当てた後で囁かれた。
「こんな罰なら当たってよかった」
「何のことだよ?……”神様は乗り越えられる人にしか、試練を与えない”。あんたが好きな言葉だよね?あんたと一緒なら、乗り越えられるよ。一人でじゃないところは、ツッコむなよ?」
「十分だ。愛している」
黒崎が優しく笑った。彼の体をぎゅっと抱き返した。夏の盛りを過ぎて、涼しさが訪れた公園内の月明かりの下で、黒崎と俺の影が重なっていた。
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