恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編

夏目奈緖

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 店を出てきたところだ。来月末頃の予定を母と話し合い、食事の約束をした。ここに着いた時には目を合わせてくれなかった朝陽が、俺の目の前に立っている。笑顔もある。良かったと思った。 

「あの、黒崎さんっ」
「どうした?」
「あの……。ずっと会いたかったんだ。中学に入った時に、お兄ちゃんがいることを聞かされて、どんな人だろうって思っていたんだ。今日、お母さんが楽しそうに喋っていたから、安心したよ。えっと……、お、おにいちゃ……」  
「無理に呼ばなくても構わない。会ったばかりだ。戸惑うのは、何もおかしくない」 
「どうやって呼ぼうかな……」 
「名前でいい。圭一だ。俺の方も朝陽君と呼ばせて貰う」 
「圭一君って呼ぶよ」 

 俺も拓海兄さんに会ったとき、兄と呼べずに、名前で呼んだことがあった。朝陽の呼び方が懐かしいと思った。そう思えるのは、拓海兄さんの死を受け入れることが出来たからだろうか。いや、心の余裕が出来たからだろうか。 最愛の思い出を振り返ることができた。

 夏樹が母達3人と連絡先を交換していた。人付き合いが苦手な不器用な子だったが、こうして前に進んでいる。俺はその手伝いができたのだろうか。それとも、夏樹は無理をしているだろうか。彼の肩に手を置くと、自然な笑顔が返ってきたから安心できた。

「今日は良かったね。楽しかったよ。黒崎さんはどう?」
「俺も楽しかった」
「良かった。帰ろうよーー」 
「そうしよう」

 笑顔を向けてきた夏樹の手を握って、レストランを後にした。後ろを振り返ると、母達が手を振ってくれていた。 
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