恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編

夏目奈緖

文字の大きさ
133 / 164

15-4

しおりを挟む
 それなのに、新しい胸の痛みが起きた。黒崎が困った顔になった。俺が緊張しているのを感じ取ったようだ。また腫れ物に触るかのようになってしまった。俺のことを守るために考えてくれているのに、肝心の俺がネガティブに受け取って、後ずさりをしている状況だと思う。しっかりしなければならないと思った。

「黒崎さん。今日からネックレスをやめて、指輪をつけるよ。あんたと結婚したんだ。しっかりしたいからだよ」
「無理をするな」
「だってさー。初めての煌びやかなパーティーは、不安に思わないわけがないだろ。あんただって、同じじゃないの?……小学校へ入る時、怖くなかった?引っ込み思案な性格をしていたんだよね?俺みたいに、正門の前で立ち止まっただろ?」
「そうだった記憶がある。昨夜、伊吹君に電話をしていたんだろう。パーティーの振る舞い方のことで聞いたのか?」
「うん。お兄ちゃんと話すと落ち着くんだ。騒がしい人だから、かえってホッとするんだ」
「妬いても良いか?伊吹君なら初めての小学校にも戸惑わなかったんだろう」
「……うん。そうだったみたいだけど、半分は違うそうだよ。不安もあったみたいだよ。俺と万理から初日の感想を聞かれるからね。かっこ悪い話ができないし、不安にさせたくないから、面白かった部分だけを覚えて来たそうだよ。……あんたは末っ子だったもんね。俺にどう教えたらいいのか、戸惑っているだろ?これからも教えてよ。中間子はバランス感覚がいいけど、俺は不器用なタイプみたいなんだ。あんたに苦労させているから申し訳ない気分だよ」
「抱いてもいいか?」
「嬉しそうに笑うなよー」

 お互いに茶化した。こういう時は温もりが欲しいから、黒崎の肩周りに両腕を回した。熱い息遣いが頬や耳元に感じて、勝手に身体が震えた。てっきり笑われるかと思ったのに、優しい微笑みを向けられた。困ったような嬉しいような感じだ。それに対して胸の鼓動が高鳴り、一気に顔が熱くなった。すると今度は、普段通りに笑われた。

「子供扱いするなよ……」
「何のことだ?……入浴剤の香りが好みのはずだ。ゆっくり入って落ち着こう」
「あんたと入ると、落ち着かないよ……」

 着ているものが脱がされ、床へ落とされていった。お湯が溜まっていないのにと言い返すと、笑い声を立てながら、首筋へ吸いつかれた。そして、そばのソファーへ押し倒された後、黒崎が上半身を脱ぎ始めた。緩めたネクタイを外し、シャツも脱いだ。じっと見ていると、微笑まれた。

「……見たら悪いの?」
「やっと見てくれたから嬉しい。慣れたのか?」
「結婚したからだよ……。あの……」
「我慢できない。禁欲命令を解いてくれ」
「うん……」

 裸の上半身を抱きしめて頷くと、肌同士が熱くなった。何度も角度を変えてキスをした。長く続くから息が苦しくなり、黒崎の肩を叩いた。すると、練習が必要だなと笑われて、胸元を押して離れてやった。

「すまない。可愛いからだ。もっと見せてくれ」
「やだ。向こうへ行く。こっちに……っ、やめろよ」
「やめても構わないのか?」
「ばかやろう……。んん……」
「愛している。強引なことはしない。家に帰った後なら、抱いてもいいか?」
「そういうことを言われると……」
「そうか」

 優しい触れ合いが熱のこもったものに変わり、噛みつくようなキスをされた。肌を辿る指先までが熱くなり、何度も身体が震えて声を上げた。

 両手や枕で口元を押さえて声を我慢していると、強引に外された。触れていない場所がないぐらいに全身にキスをされて、すっかり息が乱れた。恥ずかしい顔をしていると思う。それを見たいと囁かれて、ますます恥ずかしくなった。

「もっと聞かせてくれ。誰もいない部屋だぞ」
「この間みたいに……、喉が痛くなるよ。これは恥ずかしいって……」
「どういうものだ?」
「腰を……、知らないよ……っ」

 よく分からないままに言い返すと、高く腰を持ち上げられた。両手でシーツを掴んで恥ずかしさを紛らわせていると、ゆっくりと抱き上げられた。どうしたのかと思っていると、黒崎の膝の上に座らされて、向かい合わせになった。

 今朝から苛められた仕返しだと笑われた。頬をつねられたから、耳たぶを引っ張ってやった。今度は下唇を引っ張られたから、肩に噛みついた。エスカレートした結果、くすぐり合いに発展した。

 空港で喧嘩をしたのが嘘だと思える。優しくて甘い時間を過ごした後、遅めの昼ご飯を食べに行くために、手を繋いで部屋を出た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】少年王が望むは…

綾雅(りょうが)今年は7冊!
BL
 シュミレ国―――北の山脈に背を守られ、南の海が恵みを運ぶ国。  15歳の少年王エリヤは即位したばかりだった。両親を暗殺された彼を支えるは、執政ウィリアム一人。他の誰も信頼しない少年王は、彼に心を寄せていく。  恋ほど薄情ではなく、愛と呼ぶには尊敬や崇拝の感情が強すぎる―――小さな我侭すら戸惑うエリヤを、ウィリアムは幸せに出来るのか? 【注意事項】BL、R15、キスシーンあり、性的描写なし 【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう、カクヨム

猫カフェの溺愛契約〜獣人の甘い約束〜

なの
BL
人見知りの悠月――ゆづきにとって、叔父が営む保護猫カフェ「ニャンコの隠れ家」だけが心の居場所だった。 そんな悠月には昔から猫の言葉がわかる――という特殊な能力があった。 しかし経営難で閉店の危機に……
愛する猫たちとの別れが迫る中、運命を変える男が現れた。 猫のような美しい瞳を持つ謎の客・玲音――れお。 
彼が差し出したのは「店を救う代わりに、お前と契約したい」という甘い誘惑。 契約のはずが、いつしか年の差を超えた溺愛に包まれて――
甘々すぎる生活に、だんだんと心が溶けていく悠月。 だけど玲音には秘密があった。
満月の夜に現れる獣の姿。猫たちだけが知る彼の正体、そして命をかけた契約の真実 「君を守るためなら、俺は何でもする」 これは愛なのか契約だけなのか……
すべてを賭けた禁断の恋の行方は? 猫たちが見守る小さなカフェで紡がれる、奇跡のハッピーエンド。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

雪解けを待つ森で ―スヴェル森の鎮魂歌(レクイエム)―

なの
BL
百年に一度、森の魔物へ生贄を捧げる村。 その年の供物に選ばれたのは、誰にも必要とされなかった孤児のアシェルだった。 死を覚悟して踏み入れた森の奥で、彼は古の守護者である獣人・ヴァルと出会う。 かつて人に裏切られ、心を閉ざしたヴァル。 そして、孤独だったアシェル。 凍てつく森での暮らしは、二人の運命を少しずつ溶かしていく。 だが、古い呪いは再び動き出し、燃え盛る炎が森と二人を飲み込もうとしていた。 生贄の少年と孤独な獣が紡ぐ、絶望の果てにある再生と愛のファンタジー

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

新緑の少年

東城
BL
大雨の中、車で帰宅中の主人公は道に倒れている少年を発見する。 家に連れて帰り事情を聞くと、少年は母親を刺したと言う。 警察に連絡し同伴で県警に行くが、少年の身の上話に同情し主人公は少年を一時的に引き取ることに。 悪い子ではなく複雑な家庭環境で追い詰められての犯行だった。 日々の生活の中で交流を深める二人だが、ちょっとしたトラブルに見舞われてしまう。 少年と関わるうちに恋心のような慈愛のような不思議な感情に戸惑う主人公。 少年は主人公に対して、保護者のような気持ちを抱いていた。 ハッピーエンドの物語。

海のそばの音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖
BL
☆久田悠人(18)は大学1年生。そそかっしい自分の性格が前向きになれればと思い、ロックバンドのギタリストをしている。会社員の早瀬裕理(30)と恋人同士になり、同棲生活をスタートさせた。別居生活の長い両親が巻き起こす出来事に心が揺さぶられ、早瀬から優しく包み込まれる。 次第に悠人は早瀬が無理に自分のことを笑わせてくれているのではないかと気づき始める。子供の頃から『いい子』であろうとした早瀬に寄り添い、彼の心を開く。また、早瀬の幼馴染み兼元恋人でミュージシャンの佐久弥に会い、心が揺れる。そして、バンドコンテストに参加する。甘々な二人が永遠の誓いを立てるストーリー。眠れる森の星空少年~あの日のキミの続編です。 <作品時系列>「眠れる森の星空少年~あの日のキミ」→本作「海のそばの音楽少年~あの日のキミ」

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

処理中です...