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黒崎の方は気後れすることなく会話を楽しんでいる。パートナーとして相応しい振る舞いを見につけることが、今の自分に課せられたミッションだと思った。やるしかない。黒崎さんのために頑張る。まずはパーティーを乗り切ろうと思った。
今、黒崎の同級生達に話しかけられた。俺のことは男だと分かっているそうだ。黒崎から促されて、自己紹介した。すると、同級生達から微笑みかけられた。
「遠くからでも目立っていたよ」
「黒崎。こんな若い子と、どこで知り合ったんだ?悪いことを考えていたんじゃないのか?大丈夫?黒崎は悪い男だよ」
「それはない」
「……どうだかな?」
黒崎が首を振った。すると、同級生達達から囲まれるように話しかけられた。俺は笑顔を浮かべるのに必死で、顔が引きつっていたらどうしようかと思った。でも、その心配はなかったようで、彼らから自己紹介された。
「この先、お会いする機会があるでしょう。僕は高田と申します。黒崎君とは大学時代の友人です」
「僕は近見です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
この場を乗り切ろうと思い、勇気を出して、笑顔を浮かべた。俺に話題を振られる度に、黒崎が代わりに答えてくれた。その繰り返しをするうちに、今居る輪の中に笑い声が立ち始めた。そして、やっと、楽しいと思えるようになった。
すると今度は女性達のグループから声をかけられた。同級生達のグループが自然とバラけて、彼女達の輪の中に入った。俺の着物姿を褒めてくれた。みんな笑顔だ。黒崎が笑顔で質問に答えている中、俺も笑顔でいるようにした。
「お式は、いつ挙げられるんですか?」
「計画中です。結婚の誓いは済ませましたよ」
「そうなんですね。おふたりのお子さんなら、きっと可愛らしいでしょうね?」
俺が女の子だと思っていたことが分かった。今の格好から判断すれば、勘違いしても仕方がないことだ。身長が175センチあるが、ここで話している人からは、モデルをしていると思われている。男女のカップルだと思い込み、二人が誓いを済ませたから、子供の話題を出した。そういうことだと思う。何気なく言ったことだと理解しているが、胸が締め付けられそうになった。
(黒崎さんのことを、お父さんにしてあげることが出来ないんだ。お母さんや兄弟、実家の家族、アン。家族を増やすことは出来ても、子供は無理なんだ……)
男女のカップルでも、そうなれないことがある。でも、俺達の場合は最初から無理だということが、心に重くのし掛かった。緊張感が続いて疲れを感じて来た時、黒崎から肩を抱かれた。
「少し外へ出よう。疲れただろう」
「うん……」
タイミングよく、人の輪から連れ出してくれた。中庭へ続くテラスへ出て、外の空気を吸ったことで、締め付けられた帯の苦しさが和らいだ。どうして疲れていることが分かったのだろうか。それを聞いてみると、黒崎が軽く頷いた。
「視線を一瞬だけ落としたからだ。見ていないわけがないだろう」
「ああやって話していて、よく俺のことが見えるよね?」
「気をつけているからだ。今は着物で帯が苦しいはずだから、余計にそうしている」
その苦しい帯を締めさせたのは、誰だよ?そう言い返したかったが、喧嘩をするわけにはいかない。今も立ち方に気をつけて、内股気味に立っている。こういう自分の性格が悲しい。
「慣れてきたのか?」
「腹をくくったんだよ。こんな格好で出るなんて思わなかったけど。男女で出るものじゃないの?」
「パートナー同士が男女とは限らない。指輪もしている。招待される機会が増えるはずだ。プレッシャーに感じたか?」
「少し疲れただけだよ……」
「その椅子へ座ろう」
「うん……」
黒崎のことを見つめた。 スーツを着こなした経営者で、いずれは大きな企業のトップに就く存在だろう。こういう場で、慣れていない相手をエスコートすることも容易いことだ。遊園地のデートは、子供の遊びに付き合っただけだ。それに満足していた俺は、年相応だと思う。住む世界が遠くにあることを実感して、切なくなった。
「プレッシャーに感じ無い方が嘘だろ?そろそろ行こうよ」
「本当にそう思ってるのか?」
「そうだよ?明日は我儘を聞いてもらうよー」
気を取り直してそう答えると、軽く抱きしめるられた。部屋へ連れ戻されかけたから踏み留まり、困らせてしまった。じゃあスイーツを取りに行こう。その後で戻らせる。その譲歩案に頷くと、やっと腕の力を緩めてもらえた。
今、黒崎の同級生達に話しかけられた。俺のことは男だと分かっているそうだ。黒崎から促されて、自己紹介した。すると、同級生達から微笑みかけられた。
「遠くからでも目立っていたよ」
「黒崎。こんな若い子と、どこで知り合ったんだ?悪いことを考えていたんじゃないのか?大丈夫?黒崎は悪い男だよ」
「それはない」
「……どうだかな?」
黒崎が首を振った。すると、同級生達達から囲まれるように話しかけられた。俺は笑顔を浮かべるのに必死で、顔が引きつっていたらどうしようかと思った。でも、その心配はなかったようで、彼らから自己紹介された。
「この先、お会いする機会があるでしょう。僕は高田と申します。黒崎君とは大学時代の友人です」
「僕は近見です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
この場を乗り切ろうと思い、勇気を出して、笑顔を浮かべた。俺に話題を振られる度に、黒崎が代わりに答えてくれた。その繰り返しをするうちに、今居る輪の中に笑い声が立ち始めた。そして、やっと、楽しいと思えるようになった。
すると今度は女性達のグループから声をかけられた。同級生達のグループが自然とバラけて、彼女達の輪の中に入った。俺の着物姿を褒めてくれた。みんな笑顔だ。黒崎が笑顔で質問に答えている中、俺も笑顔でいるようにした。
「お式は、いつ挙げられるんですか?」
「計画中です。結婚の誓いは済ませましたよ」
「そうなんですね。おふたりのお子さんなら、きっと可愛らしいでしょうね?」
俺が女の子だと思っていたことが分かった。今の格好から判断すれば、勘違いしても仕方がないことだ。身長が175センチあるが、ここで話している人からは、モデルをしていると思われている。男女のカップルだと思い込み、二人が誓いを済ませたから、子供の話題を出した。そういうことだと思う。何気なく言ったことだと理解しているが、胸が締め付けられそうになった。
(黒崎さんのことを、お父さんにしてあげることが出来ないんだ。お母さんや兄弟、実家の家族、アン。家族を増やすことは出来ても、子供は無理なんだ……)
男女のカップルでも、そうなれないことがある。でも、俺達の場合は最初から無理だということが、心に重くのし掛かった。緊張感が続いて疲れを感じて来た時、黒崎から肩を抱かれた。
「少し外へ出よう。疲れただろう」
「うん……」
タイミングよく、人の輪から連れ出してくれた。中庭へ続くテラスへ出て、外の空気を吸ったことで、締め付けられた帯の苦しさが和らいだ。どうして疲れていることが分かったのだろうか。それを聞いてみると、黒崎が軽く頷いた。
「視線を一瞬だけ落としたからだ。見ていないわけがないだろう」
「ああやって話していて、よく俺のことが見えるよね?」
「気をつけているからだ。今は着物で帯が苦しいはずだから、余計にそうしている」
その苦しい帯を締めさせたのは、誰だよ?そう言い返したかったが、喧嘩をするわけにはいかない。今も立ち方に気をつけて、内股気味に立っている。こういう自分の性格が悲しい。
「慣れてきたのか?」
「腹をくくったんだよ。こんな格好で出るなんて思わなかったけど。男女で出るものじゃないの?」
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「その椅子へ座ろう」
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