海のそばの音楽少年～あの日のキミ

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　午前10時。

　マーケティング推進室では、チームの数人が情報収集を行っている。それらを視界に入れつつ、２人の社員に業務内容の説明をした。７月末の定期の人事異動者だ。

「そのチームがやっているのは、業界や競合他社などについてのものだ。ネットや関係者などから情報収集をしている。午前中のルーティンだよ。他部門の社員と情報交換も兼ねている。一日の流れは、広告代理店との打ち合わせ、開発部門との試作品のチェック、情報分析と資料作成だ。本日13時からの開発部との打ち合わせに同席してもらう」
「はい」

　２人は入社３年目であり、総務部と企画部に所属していた。この営業企画部への異動希望者だった。それでも、前の部署とは畑違いだ。フォローが必要だろう。説明を終えた後、チーム内での打ち合わせに入った。担当案件の進捗状況等の共有だ。

「広告代理店との販促物の商談が……」
「これはね。販促物がターゲットの特性に合っているか、予算で賄えるかなどをチェックしている」
「はい」
「新商品の試作品チェックがあります。今週の……」
「コンセプトから外れていないかを確認している」
「はい」

　細かく仕事内容を話すと、２人が手早くメモを取り始めた。俺の仕事は細かいと言われている。こういうタイプは、この営業企画部内には少数だ。秘書時代に培ったというより性格だろう。面倒見のいい人だと言われているおかげで、厄介な案件も持ち込まれることが多い。そばにいる黒崎からだ。また何か起きたらしい。彼がそばにやって来た。そして、用件を聞いた後、それを解決するべく、仕事に取りかかった。