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14時。
13時からの開発部門との打ち合わせが終わった。引き続き来訪者の予定が入っている。A8会議室に入ると、広告会社・R&W側の社員が到着していた。黒崎グループのひとつだ。今日は販促物の商談に同席する。
R&W社の担当者は高野だ。26歳ながらも力を発揮している。若い世代が伸びているのが分かる。3月の黒崎製菓の役員入れ替え、人事異動の顔ぶれを見ると、組織内が変化しているのが目に見えた。R&W社の役員も入れ替えがある。
商談がまとまり、黒崎製菓の深川副社長と合流した。これからグループ内の話し合いをするためだ。室長という役職では参加しないものだが、部長代理に就く事が内定している為、今回から出席した。今回の席には、久田弁護士も同席している。R&W社の役員に、問題が起きたからだ。
「この件では……」
「ではこうしましょう」
「この方向で……」
一通りのやり取りが終わり、決定がされた。すでに青写真は出来ていたからだ。社員たちが退出する中、自分と深川副社長、久田弁護士が残った。悠人には詳しく話していないが、久田さんとは仕事でなに度も顔を合わせている。プライベートを封印しているため、悠人の話題を出したことはなかった。
R&W社の役員が、社員数人から訴えられている。その役員は、黒崎晴海という。黒崎の数人いる兄の一人だ。とても実力が無いとは言えないが、全てを諦めたかのように投げやりで、卑屈な人物だと言われている。名ばかりの役員だと、陰口を叩かれてさえいる。
なぜ役員にすえたのか理解できない。8年間に渡ってのことだ。今回の出来事を機会に、役員を退いてもらう。期間満了後、再任されることはない。事実上の解任だ。深川副社長が黒崎と、晴海氏の教師役をやっていた。同じ生徒でも大違いだと、幹部連中が余計な話をしているのを耳にしたことがある。
「晴海君が、社内で暴れる可能性がある。受付と警備へ話しを通しておく。常務には僕の方から伝えるよ。久田さん、事の次第では……」
「承知しています。対応の準備は出来ています」
深川副社長が会議室から出て行った。久田さんとの2人で残った。何か話があるのだろう。息子のことが気になるのは、普通の親だ。まさか高校一年生の子を、自分勝手な理由で一人にしていたとは想像できない。変わったということか。
「早瀬さん。悠人がお世話になっています。元気にしていますか?」
「元気にしていますよ」
「学業の方は……」
「問題ないと思います、先月の試験の結果は良好です。9月に成績表が出るのでお知らせします。悠人君に直接連絡をしてあげてください。本人からは出来ないでしょうから。拒むなと言って聞かせてあります」
「ありがとうございます」
久田さんが穏やかな顔に変わった。それでも心配そうにしているのは同じだ。こういう姿を見せていれば、別の未来が待っていたのだろう。そのかわり、俺と悠人は赤の他人同士だった可能性がある。冷たい目をしたままの自分がいただろう。
「久田さん。宮田さんの御加減はいかがですか?」
「お陰様で退院しました。妻とは今月中に離婚します。18日のコンテストに、2人で行こうと話しているところです。その後で、2人で悠人に会いに行きます。普段の日なら、悠人の気分が乗らないでしょうから。楽しいことがあった後なら、気持ちの切り替えができるはずです。勝手なことですが」
「そうでしたか……」
「悠人のことで考え直しました……。もっと自由にさせようと思っています」
久田さんからある話を聞かされた。夏樹が聖加世病院へ入院した時のことだ。彼の両親が病院へ来た際、久田さんに会いに来たそうだ。その際に、久田さんは夏樹と黒崎社長との養子縁組を知ったそうだ。
13時からの開発部門との打ち合わせが終わった。引き続き来訪者の予定が入っている。A8会議室に入ると、広告会社・R&W側の社員が到着していた。黒崎グループのひとつだ。今日は販促物の商談に同席する。
R&W社の担当者は高野だ。26歳ながらも力を発揮している。若い世代が伸びているのが分かる。3月の黒崎製菓の役員入れ替え、人事異動の顔ぶれを見ると、組織内が変化しているのが目に見えた。R&W社の役員も入れ替えがある。
商談がまとまり、黒崎製菓の深川副社長と合流した。これからグループ内の話し合いをするためだ。室長という役職では参加しないものだが、部長代理に就く事が内定している為、今回から出席した。今回の席には、久田弁護士も同席している。R&W社の役員に、問題が起きたからだ。
「この件では……」
「ではこうしましょう」
「この方向で……」
一通りのやり取りが終わり、決定がされた。すでに青写真は出来ていたからだ。社員たちが退出する中、自分と深川副社長、久田弁護士が残った。悠人には詳しく話していないが、久田さんとは仕事でなに度も顔を合わせている。プライベートを封印しているため、悠人の話題を出したことはなかった。
R&W社の役員が、社員数人から訴えられている。その役員は、黒崎晴海という。黒崎の数人いる兄の一人だ。とても実力が無いとは言えないが、全てを諦めたかのように投げやりで、卑屈な人物だと言われている。名ばかりの役員だと、陰口を叩かれてさえいる。
なぜ役員にすえたのか理解できない。8年間に渡ってのことだ。今回の出来事を機会に、役員を退いてもらう。期間満了後、再任されることはない。事実上の解任だ。深川副社長が黒崎と、晴海氏の教師役をやっていた。同じ生徒でも大違いだと、幹部連中が余計な話をしているのを耳にしたことがある。
「晴海君が、社内で暴れる可能性がある。受付と警備へ話しを通しておく。常務には僕の方から伝えるよ。久田さん、事の次第では……」
「承知しています。対応の準備は出来ています」
深川副社長が会議室から出て行った。久田さんとの2人で残った。何か話があるのだろう。息子のことが気になるのは、普通の親だ。まさか高校一年生の子を、自分勝手な理由で一人にしていたとは想像できない。変わったということか。
「早瀬さん。悠人がお世話になっています。元気にしていますか?」
「元気にしていますよ」
「学業の方は……」
「問題ないと思います、先月の試験の結果は良好です。9月に成績表が出るのでお知らせします。悠人君に直接連絡をしてあげてください。本人からは出来ないでしょうから。拒むなと言って聞かせてあります」
「ありがとうございます」
久田さんが穏やかな顔に変わった。それでも心配そうにしているのは同じだ。こういう姿を見せていれば、別の未来が待っていたのだろう。そのかわり、俺と悠人は赤の他人同士だった可能性がある。冷たい目をしたままの自分がいただろう。
「久田さん。宮田さんの御加減はいかがですか?」
「お陰様で退院しました。妻とは今月中に離婚します。18日のコンテストに、2人で行こうと話しているところです。その後で、2人で悠人に会いに行きます。普段の日なら、悠人の気分が乗らないでしょうから。楽しいことがあった後なら、気持ちの切り替えができるはずです。勝手なことですが」
「そうでしたか……」
「悠人のことで考え直しました……。もっと自由にさせようと思っています」
久田さんからある話を聞かされた。夏樹が聖加世病院へ入院した時のことだ。彼の両親が病院へ来た際、久田さんに会いに来たそうだ。その際に、久田さんは夏樹と黒崎社長との養子縁組を知ったそうだ。
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