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第一章 十数年前
処女作
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当時のおれたち三人の会合ではSFといっても宇宙物より歴史物が多かった。
あるとき新聞の特集に、我が国が多数のミサイルで攻撃されたらどうなる、という仮定の記事があった。
それを見ておれは元寇が現代に再来したという設定で短いSFを創作した。
その物語を読んでもらったら二人とも批判した。
一時期タイムマシンに興味を持っていた堯助が聞いた。
「タイムスリップする科学的根拠はなんだ?」
「考えてない。だって有名作家でもそこは説明していないじゃあないか」
舜助が言った。
「現代の自衛隊と戦わせるなんて十三世紀の蒙古軍が可哀そうだ」
堯助が口を挟んだ。
「いや舜助。蒙古船は木造だから自衛隊のレーダーに映りにくい。刀と弓矢は音がしない。近代軍とのそういう戦いという設定は興味深い。近未来のステルス戦争にも似ている」
「それは書いたおれも気付かなかった。確かに原始的な軍隊に向けたミサイルが外れっぱなしというのは興味ある。だが書きたかったことは、珍しい花を恋人に捧げようと思い攻め入った敵地で運よく見つけた直後に戦死してしまう若者なんだよ」
「悲恋の小説? どこにそんなこと書いていた?」
「該当箇所は二カ所で、合計半ページ分書いた」
「そんなに少ないのか。うっかり読み飛ばすぜ。それから登場人物が男だらけだ。むさくるしい。語り手を女にしてはどうだ? その方が読みやすい」
「女と付き合ったことが無くて女の気持ちが判らないのだよ」
「じゃあ、妹の美詩亜を貸してやろうか? まだ青くて固いが」
「じゃあ、おれの母はどうだ? 熟しすぎているが」
「おれの希望は七緒先生だ。でも相手にしてくれないかな」
戦記物を好む舜助がタイムスリップではなくて現代の戦争に変えてはどうか、といった。
その方が良い、皆賛成した。
それからおれは小説を書き変えようとした。
両国の真剣な戦いの最中に突然宇宙怪獣が現れて大岡裁き……バカバカしくなって完成しなかったような気がする。
その後また小説を書いた。
高校三年生の始め頃だった。
これも、その半年前の新聞の小さな記事がヒントになった。
どこかの大きな病院で院長選挙をしている最中に候補者の一人が不適切な治療行為をし、それを闇に葬ろうとしたという告発会見の記事だった。
新聞は訴える側にもチトおかしな点がある、と書いていて興味をそそったが続報は無かった。
それに前後のエピソードを追加して最初におれが書いたときは今から思えばあらすじのような短編だった。
意外にも二人とも微笑みながら面白い小説になる可能性が有ると褒めた。
リアルにするため君は医者になれ、とも言われた。
彼等なら医学部進学など朝飯前だがおれには絶対無理だ。
ところが二人はあることにすぐ気づいた。
主人公が重要な事実を知っていたか否かという点に矛盾があったのだ。
これは致命的だ。
うまい直し方が思いつかない。
どうすりゃあいい、と言ったが彼等は出来上がったらまた読ませてくれ、とだけ言った。
当時はとうとう書きなおすことが出来なかった。
はるか後に寝床でふと思い出した時あっさり解決方法に気づき執筆意欲が復活した。
社会人になってからの体験も入れた。
その後も手を加え続け短編は中編になり、いつか長編になった。
一般には発表せず二人にコピーを送った。
素人にとって批判も無視も怖い。
称賛だけが欲しい。
二人とも忙しかったのか、読んだかどうかも含めて感想は来なかった。
あるとき新聞の特集に、我が国が多数のミサイルで攻撃されたらどうなる、という仮定の記事があった。
それを見ておれは元寇が現代に再来したという設定で短いSFを創作した。
その物語を読んでもらったら二人とも批判した。
一時期タイムマシンに興味を持っていた堯助が聞いた。
「タイムスリップする科学的根拠はなんだ?」
「考えてない。だって有名作家でもそこは説明していないじゃあないか」
舜助が言った。
「現代の自衛隊と戦わせるなんて十三世紀の蒙古軍が可哀そうだ」
堯助が口を挟んだ。
「いや舜助。蒙古船は木造だから自衛隊のレーダーに映りにくい。刀と弓矢は音がしない。近代軍とのそういう戦いという設定は興味深い。近未来のステルス戦争にも似ている」
「それは書いたおれも気付かなかった。確かに原始的な軍隊に向けたミサイルが外れっぱなしというのは興味ある。だが書きたかったことは、珍しい花を恋人に捧げようと思い攻め入った敵地で運よく見つけた直後に戦死してしまう若者なんだよ」
「悲恋の小説? どこにそんなこと書いていた?」
「該当箇所は二カ所で、合計半ページ分書いた」
「そんなに少ないのか。うっかり読み飛ばすぜ。それから登場人物が男だらけだ。むさくるしい。語り手を女にしてはどうだ? その方が読みやすい」
「女と付き合ったことが無くて女の気持ちが判らないのだよ」
「じゃあ、妹の美詩亜を貸してやろうか? まだ青くて固いが」
「じゃあ、おれの母はどうだ? 熟しすぎているが」
「おれの希望は七緒先生だ。でも相手にしてくれないかな」
戦記物を好む舜助がタイムスリップではなくて現代の戦争に変えてはどうか、といった。
その方が良い、皆賛成した。
それからおれは小説を書き変えようとした。
両国の真剣な戦いの最中に突然宇宙怪獣が現れて大岡裁き……バカバカしくなって完成しなかったような気がする。
その後また小説を書いた。
高校三年生の始め頃だった。
これも、その半年前の新聞の小さな記事がヒントになった。
どこかの大きな病院で院長選挙をしている最中に候補者の一人が不適切な治療行為をし、それを闇に葬ろうとしたという告発会見の記事だった。
新聞は訴える側にもチトおかしな点がある、と書いていて興味をそそったが続報は無かった。
それに前後のエピソードを追加して最初におれが書いたときは今から思えばあらすじのような短編だった。
意外にも二人とも微笑みながら面白い小説になる可能性が有ると褒めた。
リアルにするため君は医者になれ、とも言われた。
彼等なら医学部進学など朝飯前だがおれには絶対無理だ。
ところが二人はあることにすぐ気づいた。
主人公が重要な事実を知っていたか否かという点に矛盾があったのだ。
これは致命的だ。
うまい直し方が思いつかない。
どうすりゃあいい、と言ったが彼等は出来上がったらまた読ませてくれ、とだけ言った。
当時はとうとう書きなおすことが出来なかった。
はるか後に寝床でふと思い出した時あっさり解決方法に気づき執筆意欲が復活した。
社会人になってからの体験も入れた。
その後も手を加え続け短編は中編になり、いつか長編になった。
一般には発表せず二人にコピーを送った。
素人にとって批判も無視も怖い。
称賛だけが欲しい。
二人とも忙しかったのか、読んだかどうかも含めて感想は来なかった。
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