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月夜の湖畔
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「フィーナは⋯⋯いや、ルルはどこまでいくつもりなんだ」
夜道をフィーナがルルを尾行し、俺がフィーナを尾行するというおかしなことになっていた。
さすがにそう遠くまでは行かないと思うけど⋯⋯
数分程歩くと、小川が見えてきた。そしてルルは小川に沿って歩いていく。
もしかしてルルが行こうとしている所は⋯⋯
道を進んで行くと、突然景色が広くなり、大きな湖が目に入った。
そしてルルは湖に到着すると大きな石の上に腰を掛けた。
もしかしたらこの村の観光地でもある湖を見たかっただけなのか? それとも一人になりたかったのか⋯⋯でもやっぱり夜に一人で歩くのは危険だ。
フィーナもいるから大丈夫だと思うけど、一応周囲を警戒しつつ、ルルとフィーナの様子を見守るとしよう。
「ルル」
ここまでルルを尾行していたフィーナだが、湖畔に到着すると躊躇いもなく声をかけた。
「フィーナさん⋯⋯どうしてここへ」
「あなたが外に行くのが見えたから。それと⋯⋯一昨日辺りから特に元気がないように感じたけど気のせいかしら」
えっ? そうなの? 以前悩みを聞いてから、特におかしなようには見えなかった。だけどフィーナには何か感じることがあったということか。
「⋯⋯どうして⋯⋯そう思われるのですか?」
「う~ん⋯⋯それはあなたが何となく私に似ているから」
「私と⋯⋯フィーナさんが? そんなことないです。ユートさんから聞いてますよ。フィーナさんは弓の名手だって⋯⋯落ちこぼれの私とは違います。船で魔物に襲われた時も、私は何も出来ないどころか捕まってしまい、ユートさんに怪我をさせて⋯⋯」
どうやらクラーケンとの戦いは、ルルの負の感情を呼び起こすことに十分だったようだ。だからフィーナはルルが元気がないと言ったのか。
そしてフィーナはルルの言葉を聞いて、複雑な表情をする。何故ならフィーナは⋯⋯
「あのね。少し前までの私の呼び方って知ってる?」
「えっ? 聞いたことないです」
ルルはもしかして素晴らしいあだ名を思い浮かべているかもしれない。だけど現実はその真逆のものだ。
「傾国の姫よ」
「け、傾国の姫⋯⋯ですか⋯⋯」
「そうよ。国家を崩壊させるって意味で、酷くない?」
「それは⋯⋯はい⋯⋯」
「それに⋯⋯思い出したくないけど、クラーケンに襲われた時の私を見たでしょ? 凄く取り乱して⋯⋯忘れたい記憶だわ」
「ふふ⋯⋯確かにあの時のフィーナさんとマシロさんは⋯⋯ご、ごめんなさい笑ったりして」
「いいのよ。笑われて当然だもの。でも、ルルが笑ってくれたならあの時の行動も無駄ではなかったわね」
フィーナが船で取り乱していたことを認めた! でもあの時のことは一生口にするつもりはなかったんじゃないかな。おそらくルルを元気づけるために話したんだ。
前々からわかっていたけど、フィーナは一見ツンケンしているように見えるけど、本当は優しい子なんだよな。
その優しさはおそらくルルにも伝わっているはずだ。
「私誤解していました⋯⋯本の中ではエルフと人族はとても仲が悪かったから」
「そ、それは間違ってないわ。実際人族が嫌いなエルフはいっぱいいるもの」
「そうなると⋯⋯フィーナさんが特別ってことですか?」
「べ、別にそんなことないわよ。でも⋯⋯ルルがそう思うなら、それはユートとリズのおかげね」
「ユートさんとリズさんの⋯⋯」
「ほら、あの二人は凄くお人好しじゃない。だから自然と素直になれるというか⋯⋯私、何を言ってるのかしら。今のは忘れて!」
「いえ、忘れません」
おそらく今のフィーナの顔は真っ赤になっていることだろう。ルルも楽しそうだし、少しは元気になったのかな?
「わ、私のことなんかどうでもいいのよ。それより⋯⋯ルル、あなたいつもと雰囲気が違うように見えるけど。いつもは騒がしい⋯⋯賑やかな性格だけど今は大人しい感じがするわ。悩みがあるにしても別人見たいよ」
確かにフィーナの言う通りだ。この感じは⋯⋯そう、まるで初めて会った時のルルのようだ。視線は下を向き自信がなさげで、控え目な雰囲気を出していた。
「フィーナさん⋯⋯鋭いですね」
「そんなことないわ。余計なお世話かもしれないけど何か事情でもあるの?」
それは俺も気になる。何故こうも最初に会った時とイメージが違うのか。
「え~とそれは⋯⋯」
ルルが口を開こうとしたその時、突如背後から気配を感じた。
俺は後ろを振り向くと、そこにいたのはマシロだった。
なんでマシロがここに? 俺と同じように二人をつけて来たのか?
マシロは顎をクイッと九十度横に曲げる。
たぶん二人にバレないように、静かにこの場を離れろと言っているのだろう。
二人の会話はとても気になるが、盗み聞きということもあって、俺はその命令に従い、この場を離れる。
前を歩くマシロについて行く。そして宿屋の近くに来た時、マシロがこちらを振り向いた。
「ストーカーとは最低ですね」
「いや、違うから。夜遅くに女の子が二人で外に出るなんて危ないだろ? だから俺は二人の後をつけて⋯⋯」
「ストーカーをしたと。それなら二人に話しかければ良かったのでは? 尾行して盗み聞きをするなんて、これをストーカーと言わないで何をストーカーと言いますか」
うっ! マシロの言葉が正論過ぎて何も言えない。
「あなたはセレスティア様の使徒として恥ずかしくないのですか? トラブルがあるとすぐに首を突っ込み、私に迷惑をかけていますし」
「それはその⋯⋯ごめんなさい」
セレスティア様の使徒になった訳じゃないけど、ここで反論したらマシロがうるさそうなので黙ることにする。
「これからは私の忠告に従いなさい。いいですね?」
「はい」
「よろしい。では明日から新鮮な魚は一日三匹にしなさい。一匹では足りません」
えっ? いきなり自分の要求に変わったぞ。
まさかこれが言いたいがために説教してきたのか? それならこの答えの返答は勿論⋯⋯
「嫌だよ。ね⋯⋯白虎が魚を毎日食べるのは身体に良くないんだぞ」
「今猫と言いかけましたね? あのようなただ可愛らしいだけの生物と同じにするなんて⋯⋯許せません」
「可愛らしいだけの猫と一緒にされるなんて嬉しいだろ?」
俺は言葉を話しつつ、この場から離脱する。
すると案の定マシロが追いかけてきた。
「白虎は崇高な一族です。猫と一緒にしないで下さい!」
俺は直ぐ様近くにあった宿屋に逃げ込み、自分の部屋へ向かう。そして急ぎ自室の部屋のドアに鍵をかけるのであった。
夜道をフィーナがルルを尾行し、俺がフィーナを尾行するというおかしなことになっていた。
さすがにそう遠くまでは行かないと思うけど⋯⋯
数分程歩くと、小川が見えてきた。そしてルルは小川に沿って歩いていく。
もしかしてルルが行こうとしている所は⋯⋯
道を進んで行くと、突然景色が広くなり、大きな湖が目に入った。
そしてルルは湖に到着すると大きな石の上に腰を掛けた。
もしかしたらこの村の観光地でもある湖を見たかっただけなのか? それとも一人になりたかったのか⋯⋯でもやっぱり夜に一人で歩くのは危険だ。
フィーナもいるから大丈夫だと思うけど、一応周囲を警戒しつつ、ルルとフィーナの様子を見守るとしよう。
「ルル」
ここまでルルを尾行していたフィーナだが、湖畔に到着すると躊躇いもなく声をかけた。
「フィーナさん⋯⋯どうしてここへ」
「あなたが外に行くのが見えたから。それと⋯⋯一昨日辺りから特に元気がないように感じたけど気のせいかしら」
えっ? そうなの? 以前悩みを聞いてから、特におかしなようには見えなかった。だけどフィーナには何か感じることがあったということか。
「⋯⋯どうして⋯⋯そう思われるのですか?」
「う~ん⋯⋯それはあなたが何となく私に似ているから」
「私と⋯⋯フィーナさんが? そんなことないです。ユートさんから聞いてますよ。フィーナさんは弓の名手だって⋯⋯落ちこぼれの私とは違います。船で魔物に襲われた時も、私は何も出来ないどころか捕まってしまい、ユートさんに怪我をさせて⋯⋯」
どうやらクラーケンとの戦いは、ルルの負の感情を呼び起こすことに十分だったようだ。だからフィーナはルルが元気がないと言ったのか。
そしてフィーナはルルの言葉を聞いて、複雑な表情をする。何故ならフィーナは⋯⋯
「あのね。少し前までの私の呼び方って知ってる?」
「えっ? 聞いたことないです」
ルルはもしかして素晴らしいあだ名を思い浮かべているかもしれない。だけど現実はその真逆のものだ。
「傾国の姫よ」
「け、傾国の姫⋯⋯ですか⋯⋯」
「そうよ。国家を崩壊させるって意味で、酷くない?」
「それは⋯⋯はい⋯⋯」
「それに⋯⋯思い出したくないけど、クラーケンに襲われた時の私を見たでしょ? 凄く取り乱して⋯⋯忘れたい記憶だわ」
「ふふ⋯⋯確かにあの時のフィーナさんとマシロさんは⋯⋯ご、ごめんなさい笑ったりして」
「いいのよ。笑われて当然だもの。でも、ルルが笑ってくれたならあの時の行動も無駄ではなかったわね」
フィーナが船で取り乱していたことを認めた! でもあの時のことは一生口にするつもりはなかったんじゃないかな。おそらくルルを元気づけるために話したんだ。
前々からわかっていたけど、フィーナは一見ツンケンしているように見えるけど、本当は優しい子なんだよな。
その優しさはおそらくルルにも伝わっているはずだ。
「私誤解していました⋯⋯本の中ではエルフと人族はとても仲が悪かったから」
「そ、それは間違ってないわ。実際人族が嫌いなエルフはいっぱいいるもの」
「そうなると⋯⋯フィーナさんが特別ってことですか?」
「べ、別にそんなことないわよ。でも⋯⋯ルルがそう思うなら、それはユートとリズのおかげね」
「ユートさんとリズさんの⋯⋯」
「ほら、あの二人は凄くお人好しじゃない。だから自然と素直になれるというか⋯⋯私、何を言ってるのかしら。今のは忘れて!」
「いえ、忘れません」
おそらく今のフィーナの顔は真っ赤になっていることだろう。ルルも楽しそうだし、少しは元気になったのかな?
「わ、私のことなんかどうでもいいのよ。それより⋯⋯ルル、あなたいつもと雰囲気が違うように見えるけど。いつもは騒がしい⋯⋯賑やかな性格だけど今は大人しい感じがするわ。悩みがあるにしても別人見たいよ」
確かにフィーナの言う通りだ。この感じは⋯⋯そう、まるで初めて会った時のルルのようだ。視線は下を向き自信がなさげで、控え目な雰囲気を出していた。
「フィーナさん⋯⋯鋭いですね」
「そんなことないわ。余計なお世話かもしれないけど何か事情でもあるの?」
それは俺も気になる。何故こうも最初に会った時とイメージが違うのか。
「え~とそれは⋯⋯」
ルルが口を開こうとしたその時、突如背後から気配を感じた。
俺は後ろを振り向くと、そこにいたのはマシロだった。
なんでマシロがここに? 俺と同じように二人をつけて来たのか?
マシロは顎をクイッと九十度横に曲げる。
たぶん二人にバレないように、静かにこの場を離れろと言っているのだろう。
二人の会話はとても気になるが、盗み聞きということもあって、俺はその命令に従い、この場を離れる。
前を歩くマシロについて行く。そして宿屋の近くに来た時、マシロがこちらを振り向いた。
「ストーカーとは最低ですね」
「いや、違うから。夜遅くに女の子が二人で外に出るなんて危ないだろ? だから俺は二人の後をつけて⋯⋯」
「ストーカーをしたと。それなら二人に話しかければ良かったのでは? 尾行して盗み聞きをするなんて、これをストーカーと言わないで何をストーカーと言いますか」
うっ! マシロの言葉が正論過ぎて何も言えない。
「あなたはセレスティア様の使徒として恥ずかしくないのですか? トラブルがあるとすぐに首を突っ込み、私に迷惑をかけていますし」
「それはその⋯⋯ごめんなさい」
セレスティア様の使徒になった訳じゃないけど、ここで反論したらマシロがうるさそうなので黙ることにする。
「これからは私の忠告に従いなさい。いいですね?」
「はい」
「よろしい。では明日から新鮮な魚は一日三匹にしなさい。一匹では足りません」
えっ? いきなり自分の要求に変わったぞ。
まさかこれが言いたいがために説教してきたのか? それならこの答えの返答は勿論⋯⋯
「嫌だよ。ね⋯⋯白虎が魚を毎日食べるのは身体に良くないんだぞ」
「今猫と言いかけましたね? あのようなただ可愛らしいだけの生物と同じにするなんて⋯⋯許せません」
「可愛らしいだけの猫と一緒にされるなんて嬉しいだろ?」
俺は言葉を話しつつ、この場から離脱する。
すると案の定マシロが追いかけてきた。
「白虎は崇高な一族です。猫と一緒にしないで下さい!」
俺は直ぐ様近くにあった宿屋に逃げ込み、自分の部屋へ向かう。そして急ぎ自室の部屋のドアに鍵をかけるのであった。
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<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
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