猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

文字の大きさ
64 / 74
連載

月夜の湖畔

しおりを挟む
「フィーナは⋯⋯いや、ルルはどこまでいくつもりなんだ」

 夜道をフィーナがルルを尾行し、俺がフィーナを尾行するというおかしなことになっていた。
 さすがにそう遠くまでは行かないと思うけど⋯⋯

 数分程歩くと、小川が見えてきた。そしてルルは小川に沿って歩いていく。
 もしかしてルルが行こうとしている所は⋯⋯
 道を進んで行くと、突然景色が広くなり、大きな湖が目に入った。
 そしてルルは湖に到着すると大きな石の上に腰を掛けた。

 もしかしたらこの村の観光地でもある湖を見たかっただけなのか? それとも一人になりたかったのか⋯⋯でもやっぱり夜に一人で歩くのは危険だ。
 フィーナもいるから大丈夫だと思うけど、一応周囲を警戒しつつ、ルルとフィーナの様子を見守るとしよう。

「ルル」

 ここまでルルを尾行していたフィーナだが、湖畔に到着すると躊躇いもなく声をかけた。

「フィーナさん⋯⋯どうしてここへ」
「あなたが外に行くのが見えたから。それと⋯⋯一昨日辺りから特に元気がないように感じたけど気のせいかしら」

 えっ? そうなの? 以前悩みを聞いてから、特におかしなようには見えなかった。だけどフィーナには何か感じることがあったということか。

「⋯⋯どうして⋯⋯そう思われるのですか?」
「う~ん⋯⋯それはあなたが何となく私に似ているから」
「私と⋯⋯フィーナさんが? そんなことないです。ユートさんから聞いてますよ。フィーナさんは弓の名手だって⋯⋯落ちこぼれの私とは違います。船で魔物に襲われた時も、私は何も出来ないどころか捕まってしまい、ユートさんに怪我をさせて⋯⋯」

 どうやらクラーケンとの戦いは、ルルの負の感情を呼び起こすことに十分だったようだ。だからフィーナはルルが元気がないと言ったのか。
 そしてフィーナはルルの言葉を聞いて、複雑な表情をする。何故ならフィーナは⋯⋯

「あのね。少し前までの私の呼び方って知ってる?」
「えっ? 聞いたことないです」

 ルルはもしかして素晴らしいあだ名を思い浮かべているかもしれない。だけど現実はその真逆のものだ。

「傾国の姫よ」
「け、傾国の姫⋯⋯ですか⋯⋯」
「そうよ。国家を崩壊させるって意味で、酷くない?」
「それは⋯⋯はい⋯⋯」
「それに⋯⋯思い出したくないけど、クラーケンに襲われた時の私を見たでしょ? 凄く取り乱して⋯⋯忘れたい記憶だわ」
「ふふ⋯⋯確かにあの時のフィーナさんとマシロさんは⋯⋯ご、ごめんなさい笑ったりして」
「いいのよ。笑われて当然だもの。でも、ルルが笑ってくれたならあの時の行動も無駄ではなかったわね」

 フィーナが船で取り乱していたことを認めた! でもあの時のことは一生口にするつもりはなかったんじゃないかな。おそらくルルを元気づけるために話したんだ。
 前々からわかっていたけど、フィーナは一見ツンケンしているように見えるけど、本当は優しい子なんだよな。
 その優しさはおそらくルルにも伝わっているはずだ。

「私誤解していました⋯⋯本の中ではエルフと人族はとても仲が悪かったから」
「そ、それは間違ってないわ。実際人族が嫌いなエルフはいっぱいいるもの」
「そうなると⋯⋯フィーナさんが特別ってことですか?」 
「べ、別にそんなことないわよ。でも⋯⋯ルルがそう思うなら、それはユートとリズのおかげね」
「ユートさんとリズさんの⋯⋯」
「ほら、あの二人は凄くお人好しじゃない。だから自然と素直になれるというか⋯⋯私、何を言ってるのかしら。今のは忘れて!」
「いえ、忘れません」

 おそらく今のフィーナの顔は真っ赤になっていることだろう。ルルも楽しそうだし、少しは元気になったのかな?

「わ、私のことなんかどうでもいいのよ。それより⋯⋯ルル、あなたいつもと雰囲気が違うように見えるけど。いつもは騒がしい⋯⋯賑やかな性格だけど今は大人しい感じがするわ。悩みがあるにしても別人見たいよ」

 確かにフィーナの言う通りだ。この感じは⋯⋯そう、まるで初めて会った時のルルのようだ。視線は下を向き自信がなさげで、控え目な雰囲気を出していた。

「フィーナさん⋯⋯鋭いですね」
「そんなことないわ。余計なお世話かもしれないけど何か事情でもあるの?」

 それは俺も気になる。何故こうも最初に会った時とイメージが違うのか。

「え~とそれは⋯⋯」

 ルルが口を開こうとしたその時、突如背後から気配を感じた。
 俺は後ろを振り向くと、そこにいたのはマシロだった。
 なんでマシロがここに? 俺と同じように二人をつけて来たのか?
 マシロは顎をクイッと九十度横に曲げる。
 たぶん二人にバレないように、静かにこの場を離れろと言っているのだろう。
 二人の会話はとても気になるが、盗み聞きということもあって、俺はその命令に従い、この場を離れる。
 前を歩くマシロについて行く。そして宿屋の近くに来た時、マシロがこちらを振り向いた。

「ストーカーとは最低ですね」
「いや、違うから。夜遅くに女の子が二人で外に出るなんて危ないだろ? だから俺は二人の後をつけて⋯⋯」
「ストーカーをしたと。それなら二人に話しかければ良かったのでは? 尾行して盗み聞きをするなんて、これをストーカーと言わないで何をストーカーと言いますか」

 うっ! マシロの言葉が正論過ぎて何も言えない。

「あなたはセレスティア様の使徒として恥ずかしくないのですか? トラブルがあるとすぐに首を突っ込み、私に迷惑をかけていますし」
「それはその⋯⋯ごめんなさい」

 セレスティア様の使徒になった訳じゃないけど、ここで反論したらマシロがうるさそうなので黙ることにする。

「これからは私の忠告に従いなさい。いいですね?」
「はい」
「よろしい。では明日から新鮮な魚は一日三匹にしなさい。一匹では足りません」

 えっ? いきなり自分の要求に変わったぞ。
 まさかこれが言いたいがために説教してきたのか? それならこの答えの返答は勿論⋯⋯

「嫌だよ。ね⋯⋯白虎が魚を毎日食べるのは身体に良くないんだぞ」
「今猫と言いかけましたね? あのようなただ可愛らしいだけの生物と同じにするなんて⋯⋯許せません」
「可愛らしいだけの猫と一緒にされるなんて嬉しいだろ?」

 俺は言葉を話しつつ、この場から離脱する。
 すると案の定マシロが追いかけてきた。

「白虎は崇高な一族です。猫と一緒にしないで下さい!」

 俺は直ぐ様近くにあった宿屋に逃げ込み、自分の部屋へ向かう。そして急ぎ自室の部屋のドアに鍵をかけるのであった。





しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

ゴミスキル【生態鑑定】で追放された俺、実は動物や神獣の心が分かる最強能力だったので、もふもふ達と辺境で幸せなスローライフを送る

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティの一員だったカイは、魔物の名前しか分からない【生態鑑定】スキルが原因で「役立たず」の烙印を押され、仲間から追放されてしまう。全てを失い、絶望の中でたどり着いた辺境の森。そこで彼は、自身のスキルが動物や魔物の「心」と意思疎通できる、唯一無二の能力であることに気づく。 森ウサギに衣食住を学び、神獣フェンリルやエンシェントドラゴンと友となり、もふもふな仲間たちに囲まれて、カイの穏やかなスローライフが始まった。彼が作る料理は魔物さえも惹きつけ、何気なく作った道具は「聖者の遺物」として王都を揺るがす。 一方、カイを失った勇者パーティは凋落の一途をたどっていた。自分たちの過ちに気づき、カイを連れ戻そうとする彼ら。しかし、カイの居場所は、もはやそこにはなかった。 これは、一人の心優しき青年が、大切な仲間たちと穏やかな日常を守るため、やがて伝説の「森の聖者」となる、心温まるスローライフファンタジー。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。 しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。 絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。 一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。 これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。