猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

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怪しい光

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「くっ! どういうことだ!」

 なんだこの光は!
 白い光が街を飲み込んでいるぞ。
 幸いなことにこちらには謎の光は迫っていないが、眩しくて目が開けられなくなってきた。

「ユート様!」
「なんなのよ!」
「こ、怖いです!」

 女性陣は恐怖からか、悲鳴を上げながら両腕と背中に抱きついてきた。
 少々動き難いが、視覚が光で遮られても三人の位置がわかるのは助かる。
 最大限に周囲を警戒して、何が起きても三人を守れるよう身構えた。
 そして数秒程時が経ち、徐々に目が開けられるようになってきたため、辺りを確認する。 
 俺に抱きついているリズとフィーナとルルは無事だ。
 マシロとノアもちゃんといるし、ヨーゼフさんも背後に確認することが出来た。
 周囲にも他に誰かがいる様子もないし、攻撃を受けたわけでもない。

「今の光はいったい⋯⋯」
「ま、街が光に包まれていたわよ」

 言葉からフィーナの不安な様子が伝わってきた。俺は改めてダーメリアの街に視線を送る。

「何か起きている訳じゃなさそうね」
「そうだな。でもこれから何が起きるかわからない。ちょっと確認してくるよ」
「待って! 私も行くわ」
「ユート様が行かれるなら私も」

 いや、ダメだろ。わけがわからない現象が起きた場所に、お姫様を連れて行く訳にはいかない。

「二人はここで待っててくれ。ここは俺と⋯⋯」

 チラリとマシロとノアに視線を送る。探知能力が高いどちらかに来てもらうと助かる。

「私が行きます」

 俺が指名する前にマシロが立候補した。

「ノアはここで世話係達を守っていなさい」
「わかりました」
「ユート、いいですね?」
「あ、ああ」

 驚いたな。マシロは面倒くさがって嫌がると思っていたのに。だけど裏を返せば、それだけさっきの光は見過ごせないってことなのか?
 これは細心の注意を払って行動した方が良さそうだな。

「行くぞマシロ」
「ええ」

 マシロは定位置であるはずの肩には乗らず、自分の足で歩きダーメリアへと向かう。

「ユート様、お気をつけて」
「わ、私は心配なんてしてないから。でも無事に帰って来なきゃ許さないわよ」

 俺はリズとフィーナの激励を受ける。しかし二人とは違ってルルは震えて、顔面蒼白になっていた。
 リズもフィーナもそれなりに場数を踏んでいるから、予想外のことが起きても冷静でいられるのだろう。だけどルルは箱入りの公爵令嬢であるため、恐怖を感じていてもおかしくはない。

「大丈夫⋯⋯ここにいれば安全だ。ノアもいるしな」

 俺はルルを軽く抱きしめる。

「でも⋯⋯」
「すぐに戻って来るよ」
「は、はい⋯⋯」

 ルルの震えが収まったので、俺は抱きしめていた手を緩める。

「じゃあ行ってく⋯⋯」

 俺は別れの言葉を述べると、リズとフィーナがジト目でこちらを見てきた。

「な、何?」
「女神セレスティア様は仰いました。リズリットを抱きしめてから行きなさいと」
「えっ?」
「さあユート様。セレスティア様のお告げですよ」

 リズは手を広げて俺を受け入れる準備をする。
 ほ、本当に? 毎回思うがタイミングが良すぎないか?
 これはリズが考えていることで、セレスティア様は関係ないんじゃ⋯⋯
 疑問に思っていると、俺を急かす声が聞こえてきた。

「早くしなさい。セレスティア様のお告げですよ」

 セレスティア様の聖獣であるマシロは、リズの言うことを完全に信じている。逆らうことは許さないという目だな。あれは。

「わ、わかったよ。それじゃあ失礼して⋯⋯」

 俺はリズを抱きしめる。すると鼻を刺激する香りが漂ってきた。
 ルルの時も思ったが、何で女の子は男には出せない甘い匂いがするのだろう。俺には一生わからなそうだ。
 それに胸に大きくて柔らかい物が押しつけられているから、どうしても気になってしまう。
 俺は理性が壊れる前にリズから離れる。

「こ、これでいいかな?」
「はい♪」

 満面の笑みを返された。
 取りあえずこれで⋯⋯ひっ!
 フィーナから殺気が⋯⋯こっちを睨んでいる気がする。
 リズを抱きしめたことがいけなかったのか? でも前も同じようなことをフィーナの前でしたよな?
 その真意が俺にはわからなかった。

「フィーナ様、ここは素直に私も抱きしめてというべきでは?」
「な、何を言ってるのよ! べべべ、別にそんなこと一ミリも考えてないわよ!」

 ヨーゼフさんの指摘にフィーナが慌て始める。
 えっ? 本当にフィーナが?
 フィーナはいつもツンツンしているため、俺にはヨーゼフさんの言うことが信じられなかった。でも漆黒の牙シュヴァルツファングを倒した時に、感極って頬にキスをしてきたな。強ちヨーゼフさんの言うことも間違ってないのか?

「やれやれ。フィーナ様は相変わらずですな」
「別に変じゃないでしょ⋯⋯で、でもユートがどうしても不安だから、落ち着くために私を抱きしめたいって言うなら許可してあげないこともないけど」

 確かに不安ではあるけど狼狽えているわけじゃない。だから落ち着く必要はないけど、ヨーゼフさんがフィーナの後ろで頭を下げているから、ここは抱きしめた方がいいのか?  でも抱きしめるって口にしたら「この変態!」って言われて、平手打ちが飛んで来ないよな?

「じゃ、じゃあ⋯⋯いいかな」

 俺は恐る恐る口する。
 するとフィーナは顔を赤らめて、ゆっくり手を広げた。
 オッケーが出たってことで良いんだよな?
 俺はリズにした時と同じように、フィーナを優しく抱きしめる。
 すると先程リズやルルから感じた時と同じように、フィーナから甘い香りがした。
 しかし二人と決定的に違う所がある。
 それは胸からは⋯⋯いや、考えるのはやめよう。もし口に出したら、ダーメリアを確認する前にフィーナにやられてしまう。
 俺は心の声を封印することにして、フィーナから離れる。

「ぜ、絶対に無事に帰って来なさいよ」
「わかってる。約束するよ」

 フィーナはそっぽを向きながら話しかけてくる。
 おそらく抱きしめられて凄く恥ずかしかったのだろう。

「それじゃあ行ってくるよ」

 俺は見送るリズ達を背に、マシロとダーメリアの街へと向かうのであった。


―――――

【猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る】2巻が、アルファポリス様より4月16日頃に書籍化されることが決定しました!
フィーナのツンデレや意地悪なフェリが登場し、1巻よりさらにパワーアップした内容となっています。
もし書店等で見かけましたら、手にとって頂けると幸いです。
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