猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

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魔界の魔物

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「むっ⋯⋯急ぎますよ」

 民家を出た瞬間、マシロが走り出した。

「どうしたんだ?」
「怪しい気配に人間が近づいています」
「人が!?」

 何の気配も感じないとマシロは言ってたけど、街に人はいたってことか?
 しかし人がいたことに安堵したけど、やはりその怪しい気配の方が気になる。

「マシロが言ってる怪しい気配ってなんなんだ?」

 マシロに追走しながら話しかける。

「それは走りながら話します。まずは身体強化魔法を」
「わかった。神聖身体強化魔法セイクリッドブースト

 自分自身とマシロに魔法をかける。すると力やスピードが強化されたのがわかった。

「それで? そろそろ相手の正体を教えてくれ」
「⋯⋯」

 マシロは俺の問いに答えない。
 もったいぶってるのか? それとも答えづらい相手なのかもしれない。何だか嫌な予感がしてきたぞ。こういう時の俺の感って、残念ながら当たっちゃうんだよな。
 俺はもう一度マシロに視線を向ける。
 するとマシロはゆっくりと口を開き始めた。

「⋯⋯魔物です」
「魔物?」

 元々街の人がいないのは、魔物や盗賊から逃げたからと考えていた。予想が当たっていたことに少しホッとする。
 魔物がいるなら倒せばいいだけだ。
 でも変だな。船上ならともかく、いつものマシロなら「魔物如き、この私にかかれば相手にもなりません」くらい言いそうだけどな。
 ひょっとして魔物の数が多いとか? 

「魔物って何匹くらいいるんだ?」
「一匹です」
「一匹?」

 とりあえず懸念事項の一つが潰れた。そうなると⋯⋯

「もしかしてただの魔物じゃないのか?」
「⋯⋯ええ⋯⋯ですが本来このような場所にいるはずが⋯⋯」
「どういうことだ」

 マシロの意図がわからない。この世界に魔物は溢れかえっている。だから今この街に魔物がいても何もおかしくないはずだ。

「⋯⋯魔物でもここにいる魔物は魔界の魔物です」
「魔界⋯⋯だと⋯⋯それってどういう」
「この世にある四つの世界のうちの一つです」
「四つ? え~と俺達がいる地上界に、セレスティア様がいる天上界、それと今マシロが言った魔界⋯⋯もう一つ世界があるのか?」
「ええ⋯⋯精霊界があります」

 精霊界? 魔界もそうだけど初めて聞く言葉だ。どうやらこの異世界には様々な世界があるようだ。

「とりあえず今は精霊界のことは置いといて、魔界の魔物は⋯⋯」

 マシロが何かを口にしようとした時、前方に噴水のようなものが見えてきた。
 そして噴水の側には人間と何かがいた。

「よくも我が故郷であるデルガリアを! 貴様だけはこの私の手で葬ってやる!」

 大剣を持った中年男性が、人の数倍はありそうな大蛇と対峙している。
 故郷? デルガリア?
 確かデルガリアは帝国の西側にある国、サンガルド王国の街の名前だったはず。あの中年男性が言っていることが正しければ、デルガリアはあの大蛇に滅ぼされたってことなのか。

「我が憎しみの一撃を喰らえ!」

 中年男性は大蛇へと接近を試みる。
 そのスピードは早く、大剣を持っているにもかかわらず、一瞬で大蛇の元へとたどり着く。

「でぇぇぇぇいっ!」

 中年男性は大蛇の前で高く飛び上がった。そして上段から鋭い一撃を振り下ろす。
 今の動作を見て、この中年男性が只者ではないことがわかる。
 大剣は大蛇の頭部に迫っており、このまま決着がつくかのように見えた。しかし隣にいるマシロからは、俺の思いとは違う言葉が返ってきた。

「止めて下さい。このままだとあの人間は死にますよ」

 死ぬ? いや、どう見てもあの中年男性の勝ちだろ。俺はマシロの言っている意味が理解出来なかった。
 そして俺の予想通り、大剣は大蛇の頭を真っ二つに斬り裂く。 
 大蛇はこの一撃で死ななかったとしても、大ダメージを受けた。これで中年男性の勝利は揺るがないだろう。

「こ、これで皆の仇を取ることが出来た。わざわざ帝国まで追ってきた甲斐があったな」

 中年男性は大蛇を倒したことで勝利を確信したのか、目に光るものが見えた。

「マシロの予想は外れたんじゃないか?」

 いくら魔界の魔物と言っても、頭を斬られたら生きることは不可能だろう。
 チラリとマシロの顔を見る。だけどマシロの顔はまだ晴れてはいない。

「ダメです! ユート早くあの人間を助けなさい!」

 頭では納得出来ないけど、俺は反射的にその声に従って男の元へと向かう。
 だがこの後、信じられないことが起きた。

「なっ! なんだ⋯⋯うわぁぁぁぁっ」

 男の悲鳴が周囲に木霊する。しかしその声はすぐに途切れてしまった。何故なら男は真っ二つにしたはずの大蛇に、頭を噛み砕かれたからだ。



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