猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

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蔑まれた令嬢?

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「ルルの⋯⋯お姉さん!?」

 確かに目の前の女性が数年後のルルと言われたら、信じてしまうな。
 姉妹なだけはあり、二人の姿とてもよく似ているようだ。

「でも何故ルルがここにいるの? お父様からルルは帝国には戻らないと聞いていたのに。私もその意見には賛成ですわ」

 あの父親もこの姉も、ルルは家族なのに一緒にいたくないというのか。それはあんまりだ。

「何をしに帝国に来たの?」
「そ、それは⋯⋯」

 背中越しにルルが震えているのがわかる。そのため姉の問いに上手く答えられないでいた。
 濁していたが、やはり船上で聞いた話はルルのことだったのか。
 家族仲が悪いなら、ここは俺が対応した方がいいのかもしれない。

「俺達はムーンガーデン王国とガーディアンフォレスト王国の親書を皇帝陛下に渡しに来たんです」
「そうなの? それなら用が終わり次第、ルルを連れてすぐに帝国から出て行って下さらない?」

 姉の非情な言葉を聞き、ルルは俺の服をギュッと掴む。

「俺も会いたくない奴がいるので、言われなくてもすぐに出ていきますよ」
「そう。それは⋯⋯」
「お嬢様。約束の時間が迫っております」

 ルルのお姉さんが何かを口にしようとしたが、馬車の運転をしている御者が話に割って入ってきた。

「わかりました」

 ルルのお姉さんは御者に返事をすると、再びルルに視線を向けてきた。

「ルル、あなたはここにいるべきではありません。そこの方と⋯⋯そういえばあなた名前は?」
「俺はユートだ」
「そう⋯⋯私はレオナーラ・フォン・ニューフィールドよ。ユート、それにルル。一刻も早くこの帝都から立ち去ることね」

 そう言い残すとレオナーラは馬車に乗り込み、この場から立ち去ってしまった。

 言いたいだけ言って、行ってしまったな。
 ハッキリと姉に拒絶されたんだ。ルルのことが心配だな。
 俺は後ろを振り向いてルルの顔を見る。
 だがその表情は落ち込んでいるようには見えず、むしろ笑顔だった。

「いや~まさかここでお姉様に会うとは思いませんでした。ほら、兵士さんが戻って来ましたよ。早く城の中に行きましょう」

 ルルは兵士の所へ向かう。

「あっ⋯⋯ルルさん⋯⋯」

 本当は悲しいはずなのに笑顔を作っているルルを見て、リズは言葉が詰まってしまったようだ。

「ユート⋯⋯」

 フィーナもリズと同じで、どうしたらいいのかわからないと言った所か。
 正直俺もどうすればいいのかわからない。ルルは父親からも姉からも蔑まれているように見えた。ここはもう本当に帝国を離れた方がいいかもしれないな。
 だけど簡単に故郷である帝国を捨てろなんて気軽に言うことは出来ない。
 それに今は考えている暇はない。
 兵士から城の中へ入るよう促されているため、この話は後だ。

「今は先にやるべきことをやろう」
「わかったわ」

 俺達は兵士とルルの後に続いて城の中へと入る。

 お連れの方達はこちらの部屋でお待ち下さい。
 ここでルルとマシロ、ノアとヨーゼフさんとは別れる。
 そして長い廊下を進み、一つの部屋に案内されると、そこには老年の男性の姿があった。

「ようこそおいで下さいました。美しき姫君達と⋯⋯ムーンガーデン王国とガーディアンフォレスト王国を救った英雄ユートよ」

 笑顔で対応してくれているが、目が笑っていないように感じた。
 この人は誰なんだ? 皇帝陛下ではないことは間違いないけど。
 皇帝陛下は一度だけ見たことがあるからな。

「私はこの国の宰相であるアルザス・フォン・ビスマルクです」

 宰相か。この国のNo.2と言われる存在で、かなりやり手らしい。俺は政治に関しては素人だ。おそらくリズやフィーナも王族とはいえまだ若いから、政治に関して詳しいとは言えないだろう。
 やり込められなければいいけど。

「私はリズリット・フォン・ムーンガーデンです」
「私はフィーナ・フォン・ガーディアンフォレストよ」
「ユートです。はじめまして」

 俺達はアルザス宰相と一人一人握手をかわす。

「本来は皇帝陛下がお会いする予定でしたが、今は少し立て込んでいまして⋯⋯」

 立て込んでいる? 何かあったのだろうか。

「結論から申し上げます。バルトフェル帝国は新たな国をつくることを認めることはありません」

 簡潔にきたな。
 まあ元より断られることは承知の上で来たんだ。
 予想出来た答えでもある。
 しかしその結果に、リズとフィーナは反論する。

「それは皇帝陛下のお考えでしょうか」
「もう少し議論してもいいんじゃない? あなた達はムーンガーデン王国に何をしたのか忘れたの? 解決してくれたのはユートなのよ」

 バルトフェル帝国としては痛い所を突かれただろう。ハメードの独断とはいえ、帝国の者がムーンガーデン王国を乗っ取ろうと画策していたのだ。誰が見てもこれは許されるものではない。しかしアルザス宰相の表情に変化は見られなかった。さすがは一国の宰相なだけはある。ポーカーフェイスはお手の物って所か。

「そのことについては正式に謝罪を行う準備が出来ています。だが新しく国を立ち上げることについては別問題だ」
「どうあっても認めて頂けないということですか」
「ええ⋯⋯皇帝陛下よりそのように言われています」

 これはどう見ても承諾してもらえなそうだな。
 まだ他にも許可をもらえる国はあるし、これ以上交渉して両国の関係が悪くなるのも申し訳ない。ここは一度引くべきだろう。
 それに俺としては国の設立より、魔界の魔物の方が気になる。

「わかりました」
「えっ?」
「ユート様⋯⋯」

 二人は納得していないようだけど、たぶんこれ以上は無駄だと思う。それに今は先にダーメリアの街のことについて話しておきたい。

「それと今回の件とは別に報告したいことが――」

 俺はダーメリアで起きた謎の光と魔物について話す。
 すると先程まで表情一つ変えなかったアルザス宰相だが、俺の話を聞いて眉を上げるのだった。
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