猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ

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宰相からの依頼

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「とうとう帝国まで来たか」

 アルザス宰相は神妙な顔で呟く。
 とうとうということは、帝国は魔物について予期していたのか。

「帝国は魔物について知っていたのですか?」
「その通りです。帝国の西側にあるサンガルド王国は今、魔物によって多大な被害を受けています」

 ダーメリアであった中年男性も、よくも我が故郷をって言っていたしな。本当のことなのだろう。

「それでは街の人が消える現象も⋯⋯」
「はい。いくつかの街は魔物によって滅ぼされたと聞いています。そしてサンガルド王国の一つの街が、ダーメリアのように光に包まれ、人が消えたと」

 ダーメリアで見たあの光は他の場所でも起きていたのか。でも本当にあの光は誰が何のために起こしたんだ? 全くもって見当がつかない。

「それにあの魔物だ。サンガルド王国では少なくとも百匹前後はいたとの報告を受けている」
「百匹ですか!」

 一匹じゃなかったのか。これは少し厄介だぞ。

「どうして百匹もの魔物が⋯⋯」
「わからない。数週間前に突如大蛇の魔物が現れ、いくつもの街や村を⋯⋯奴らには攻撃が効かないからな。いったい何なのだあの魔物は」

 ん? もしかしてアルザス宰相は魔界の魔物だということを知らないのか? 俺もマシロに聞いて初めて知ったし、わからなくてもおかしくはない。

「あれは魔界の魔物です」
「なん⋯⋯だと⋯⋯」

 アルザス宰相は感情を出して驚いている。
 やはり魔界の魔物だということを知らなかったようだ。

「この世界とは別の世界があると聞いたことがある。その一つが魔界だ。まさかそこから来た魔物だというのか」
「理由は⋯⋯その言えませんが間違いないです。そしてダーメリアの魔物は俺が倒しました」
「なに! あの魔物を倒しただと! いったいどうやって」
「それは⋯⋯この神剣を使って」

 俺は背中に背負っていた神剣をアルザス宰相に見せる。

「聞いたことがある。エルフの国に何千年も前からあると言われているあの神剣のことか⋯⋯素晴らしい。どれ⋯⋯私によくみせてくれないか」

 えっ? 大事な神剣をいくら帝国の宰相だからといって触らせたくはない。だけどこれからのことを考えると⋯⋯

「いいですよ。どうぞ」

 俺は神剣をテーブルの上に置く。
 するとアルザス宰相は目を輝かせて神剣に手を伸ばした。
 そしてアルザス宰相は神剣を持ち上げようとするが⋯⋯

「ん? ふぬぅぅぅ!」

 力んだ様子で声を上げるが、神剣はピクリとも動かなかった。

「はあはあ⋯⋯ど、どういうことだ。神剣とは凄く重い代物なのか」
「いえ、神剣は選ばれし者しか持つことが出来ないため、使
「なるほどな」

 俺は暗に帝国には使えないと伝えた。
 杞憂かも知れないけど、魔界の魔物を倒すために、神剣を奪うという考えに至る可能性もある。
 これで下手にこちらに手を出してくることはないだろう。
 帝国にいる上層部が全て信じられないという訳じゃないけど、ギアベルやハメードを生み出した国だからな。用心するに越したことはない。

「よし」

 アルザス宰相は納得したのか頷く。
 そして俺に向かって語りかけてきた。

「魔界の魔物を討伐することが出来たら、新しい国を作る許可をもらえるよう、私から皇帝陛下に進言しよう。皇帝陛下も私の言葉は無視できないはずだ」

 俺としては新しい国を作らなくていいと思っているけど、このまま魔界の魔物を放置すれば、多くの人の命が奪われるのは間違いない。
 それにもし帝国が滅んでしまったら、次はムーンガーデン王国が狙われる可能性もある。謎の光も気になるし、ここは引き受けるべきなのか?

「わかりました」

 俺が迷っているとリズが返事をしてしまう。

「女神セレスティア様も迷える子羊に手を差し伸べろと仰っています」

 セレスティア様も受けるように言っているなら、やるしかないな。

「その依頼お受けします」

 俺は覚悟を決めてアルザス宰相の言葉に応えるのであった。



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