姉と妹に血が繋がっていないことを知られてはいけない

マーラッシュ

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情けない状況で使う切り札

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 うぅ⋯⋯頭が痛い。何だこの痛みは。顔面と後頭部が滅茶苦茶痛いぞ。
 何故このような状況になったのか思い出してみよう。
 視界は暗い。そして背中から感じるこの温もりは俺のベッドで間違いない、おそらく俺は寝ていたか気絶したのだろう。それなら何故俺はそのような状況に陥ったのか。それは瑠璃、コト姉、ユズの青と白のストライプ、白、薄ピンクの下着を見てしまったからだ。確かに紳士としてはよくない行動だったが、目の前に桃源郷が広がっていたら目を向けない者などいないだろう。
 そして俺は3人に殴られて後頭部をドアにぶつけ、気絶した後にベッドに運ばれたということだろう。
 それに俺の考えが間違っていないことは耳が教えてくれている。

「ユ、ユズユズ⋯⋯せ、先輩大丈夫ですかね」
「すごい音がしましたからね。お姉ちゃんに殴られて無事でいるはずがありません」
「えっ! お姉ちゃんのせいなの! ユズちゃんと瑠璃ちゃんも一緒にやってたよね!」
「地球人で戦闘力5しかない私達と戦闘力18,000のサ◯ヤ人のエリートであるお姉ちゃんを一緒にしないで下さい」
「ですです」
「2人ともひっど~い。お姉ちゃんはか弱い女の子だよ」
「ソ、ソウデスネ」
「お、お姉ちゃんがか弱い?」

 突っ込みどころが満載だな。コト姉がか弱い? か弱い女の子は熊を素手で倒したりしません。目を閉じていてもユズと瑠璃が苦笑いしている姿が目に浮かぶぞ。それに戦闘力18,000って。ユズは本当に瑠璃に染まり過ぎてないか。少しどころかかなり心配になってしまうぞ。

「で、でも兄さんが悪いですよね。私達の下着を舐めるよう目で見ていたんですから」
「お姉ちゃんも恥ずかしかったなあ。もっと可愛いやつ履いていれば良かったよ」
「何か琴音先輩の恥ずかしい基準が少し私達と違うような⋯⋯」
「お姉ちゃんは普通とは少し違いますから。気にしたら負けです」
「ひどいよ。ユズちゃんが反抗期だよ~」

 安心しろコト姉。ユズは俺に対しては年がら年中反抗期だからな。

「け、けど先輩が下着をじっくり見ていたというのは同意です。眼の横に血管が浮き出ていて限られた一族しか使えないびゃ◯がんを使っていましたから」

 俺が寝ているのをいいことに、ユズと瑠璃が冤罪をかけてくる。しかもびゃ◯がんって何だよ。そんな全てを見渡せる眼があるならほしいわ!

「瑠璃ちゃんが何を言っているのかわからないけど下着を見ていたリウトちゃんが悪いっていうことには同意だね」

 あれ? これってもしかして殴られて痛い目をみたのに、目を覚ませばさらに断罪される流れですか。
 ど、どうしよう。これじゃあ迂闊に起きることが出来なくなったぞ。
 それならこのまま寝たふりをするか。だが結局先延ばしにするだけで事態が解決するわけではない。
 考えろ、考えろ俺。こういう窮地を乗り越えるために今まで知識を仕入れて来たんじゃないのか!
 ⋯⋯下着を見て、怒られないようにするために頑張ったって⋯⋯。何だか自分で言っていて悲しくなってきたな⋯⋯。
 と、とにかくこうなったらもう、あの作戦で行くしかない。 

「う、う~ん⋯⋯ここは⋯⋯何だか頭が痛いぞ」

 俺は目を開けて身体を起こす。

「せ、先輩が起きましたよ」
「リウトちゃん大丈夫?」
「頭が痛いのは自業自得です。兄さんが変態行為をしたんですから」

 ユズの余計な一言によって3人が俺のことをジト目で見てくる。
 やはりエロ本を持っていたこと、そして下着を見ていたことを断罪するつもりなのだろう。
 このままだとまた土間の上で正座させられてお仕置きされるというループを逃れることはできない。
 ここはやっぱり奥の手を使うしかなさそうだ。

「ここは⋯⋯どこだ? 俺は⋯⋯誰だ?」

 俺がこの場から逃れるために灰色の脳細胞が導きだした答え⋯⋯それは記憶喪失の振りをすることだった。
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