25 / 31
黒い産声(むかしがたり)
しおりを挟む
浮世はあの日、迦陵頻伽のように空へと飛んだ。
しかし翼を持たない浮世の身体はむなしく大海に落下し、したたかに打ち付けられ、巨大なうねりに呑まれて水底に沈んだ。
浜辺に打ち揚げられた時にはもう、命の火は消えかかっていた。
実真は名を呼び続けて喉をからし、長い時間、海岸沿いを探し歩くと、潮に混じって血の臭いがする浜にたどり着いた。
おびただしい数のカラスの群れが上空をぐるぐるまわり、地上を我が物顔で闊歩していた。その中心に、積み重なった人間の死骸の山が一つ。太刀で袈裟懸けに斬られ、首を突かれ、腹を裂かれるなど酷いありさまだった。
近隣の漁村を襲った鬼たちが、ここに村人たちを集めて惨殺したらしい。
もはや辺りの砂浜は血で赤黒く染まっていた。
胸騒ぎを覚えた実真は浮世の名を叫んだ。
すると血の痕が一つ、どこかに続いているのに気付いた。
(生き延びた者がいる……?)
死肉をついばむカラスを跳ね除け、実真は痕跡をたどる。血は川のほうに続いており、橋の下で消えた。
「誰かいるのか!」
返事はない。水を蹴って水草の繁った川に入る。
暗がりの中に、たしかにいた。実真は言葉を失った。
「ああ……ああっ……」
今にも息絶えそうな浮世の姿がそこにあった。
全身傷だらけで、その肌は蝋のように白く生気がない。美しかった髪の毛も悲しいほどに濡れ乱れ、何かを抱えて石のようにうずくまっている。
「浮世……!」
「実真……さま……」
青ざめた唇からか細い声が漏れる。実真は駆け寄った。
「浮世……私が悪かった……帰ろう。そなたさえいれば、それでいい」
実真は裸の浮世を包むため、直垂の上着を脱ごうとした。
すると浮世は力なく首を振り、震える手で胸に抱えていた何かを差し出す。
「どうかこの子を……助けてあげて……一人きりで泣いていたの」
それは血まみれの赤ん坊だった。腕の中でぐったりしている。
「何を言う……そなたの……」
そなたの手当てが先だ――そう言おうとして、実真は言葉を呑む。
赤ん坊も怪我をしている。背中にカラスの八つの爪痕があった。
浮世は実真に向かって微笑み、何かを言った。
そこに駆けて来たのは来世である。
「実真そこか! 浮世はどこだ! 浮世……浮世か……!」
来世は太刀を投げ捨てて浮世に駆け寄る。すぐに上着をかけてやり、抱き起そうとするが、力を失った浮世の身体は石像のように重い。
「浮世……さあ、はやく手当を。実真、ここから出るぞ、手伝え!」
来世は必死の形相で実真に呼びかけた。
実真は静かに俯いている。その腕に血まみれの赤ん坊を抱いたまま。
「実真……? おい、何やってんだ……そんな赤ん坊なんか放っとけ! このままじゃ浮世が……浮世が死んじまう! 頼むよ! なあ!」
実真は顔を上げた。そして、血まみれの赤ん坊を直垂の中に抱いた。
浮世もまた最後の力を振り絞って実真の姿を視界に収めた。
互いの像がしだいにぼやけてゆく。
実真は背を向けて、その場から走って立ち去った。
「実真戻れ! このクソ野郎! 俺は諦めねえぞ、諦めねえからな!」
懸命に助けようとする来世の耳元で、浮世はささやく。
「あの子……泣いてた。死んだお母さんの上で」
「浮世もういい、しゃべるな」
「あのね――」
「俺が絶対助けてやるから、黙ってろ! 死ぬな! ああっ、ああっ」
その日、一匹の鬼が産声を上げた。
天を突き破らんとするほどの、黒い黒い哭き声だった。
※
「実真様は傷だらけの赤子を大事に抱えて近くの村に行き、その祖父母に帰してやった。そしてすぐに浮世のもとに走ったが、二人とも姿を消していた。御下命により東国に赴いたのは、その後でございます。実真様の心中を推し量ることは到底かないませぬ。ただただ戦い続け、覇者と呼ばれるようになった……しかしその栄光も……実真様にとっては……」
話し終えた安長はぐったりと項垂れる。主人の無念とやるせなさを想い、我がことのように胸を痛めていた。
「何とのう悲しい男よ。あれだけの力を持ちながら、守れなんだか」
寿老は再び髑髏を撫でる。
「浮世がここにいるはずがない。それをわかっておったのだな。しかし何と、縁も所縁もない赤子を救うために妻を見殺しにしたか」
寿老の言葉に、安長が何をか言わんと顔を上げるも反論は虚しいだけだった。
すべて事実だったからだ。
見知らぬ赤子。見知らぬ命。そのために浮世を見殺しにした――。
そのとき景平は、静乃の異変に気付いた。
「姫様……? どうなされました」
静乃は顔色を失い、震える息をゆっくり吐き出した。
「私……知ってます……」
その傷なら何度も見た。何度もこの手で触れた。
「背中の八つの傷……背中の……」
※
「なあ、人は死ぬ時どんな顔をすると思う」
鬼童丸はセナと実真に向かって上から言った。
「お前たちは憶えているか?」
鬼童丸の問いかけに二人は答えられない。鬼童丸はフッと笑う。
「俺は憶えている。これまでに手をかけた六百十四人の顔すべてを。だが、一人としていなかったよ――笑って死んだヤツは」
そして、鬼童丸は少しだけ視線を外して言った。
「笑って死ぬ時ってのは、どんな気持ちなんだろうな」
その時、鬼童丸のもとに血相を変えた手下が駆けて来た。鬼童丸に耳打ちをすると、たちまち眉間に深い皺が刻まれる。
「おい、本当か?」
手下は大きく頷く。鬼童丸は舌打ちした。
「実真! ここは預ける。せいぜい己の罪と向き合うんだな」
去りゆく鬼童丸の背に、セナは叫んだ。
「鬼童丸!」
鬼童丸は立ち止まり、わずかに顔を向けた。
「セナ……俺はお前に、一つのことしか教えなかったぞ」
そう言って、あっという間に姿を消した。
※
東国武士団は鈴鹿山脈を通過し、柘植ノ平を視界に捉えつつあった。
軍の先頭にいた鍛治谷は迅速に進軍できたことに気をよくしていた。
「ぬわっはっは! 襲撃などないではないか!」
「実真殿が防いだのでは」
志郎はいつも落ち着いている。その背を鍛治谷は力いっぱい叩く。
「伏兵などいなかったかもしれぬ。前向きでなければ女子にモテぬぞ!」
華奢な志郎は咳込んだ。
「げほっげほっ……十分前向きですよ……モテませんがね」
鈴鹿山脈は最大の難所だった。山脈を避けると遠い北から進軍しなければならず、その経路にも三関の一つ不破の関が立ちふさがる。仮にそこを突破しても、京の都を守るように横たわる長大な琵琶湖を南北どちらかで迂回しなければならない。時間もかかる。
鈴鹿山脈越えは京の都までの最短経路だった。そして柘植ノ平を抑えれば、あとは北上して敵の拠点を落とすのはたやすい。三関の一つ逢坂の関がまだ残っているが、船を調達して琵琶湖からいかようにも攻めることができる。
「伝令!」
斥候が鍛治谷のもとに運んできたのは、驚くべき情報だった。
「何!? 追討軍が逃げ出しただと!?」
「はっ、敵軍は布陣することなく続々と撤退を始めております」
ここで戦わないとは――さすがの鍛治谷も半信半疑だったが、自分の目で柘植ノ平に一つの兵気もないのを確認すると大いに肩透かしを食った。
「ワハハ! いくら畿内の弱兵とはいえ、ここで逃げるとは情けない!」
鍛治谷は笑いながら怒った。
志郎は据わった目で柘植ノ平を見晴るかしている。
そこに軍列の後方から祭子が馬に乗ってやって来た。
「志郎はどこだ――!」
「おお、祭子! よくぞ我がもとに戻った! さあ来い!」
鍛治谷は胸に飛び込めと両腕を広げる。が、祭子は無視した。
「何が起こっている? 敵との戦はどうした!?」
「それが姉上……」
志郎は手短に説明した。笑みを浮かべる鍛治谷と対照的に、祭子の顔はどんどん強張ってゆく。
「どういうことだ……ついさっき鬼童丸と遭遇したのだぞ!?」
「まことですか!? 今、実真殿はどこに」
「じきに戻る。私は負傷兵を連れて先に戻った」
まだ両腕を広げていた鍛治谷だったが、さすがに咳払いして仕切り直した。
「我らは進軍するぞ、祭子」
「待て、鍛治谷。状況がわからない。実真殿の合流が先だ」
「ならぬ。この機を逃せば敵に時を与えてしまう。このまま拠点を目指す」
鍛治谷の言うことは、そもそもの計画にある。祭子は目もとを歪めた。
「しかし……」
「俺は今、実真の代理だ。祭子といえど聞けぬ!」
さすがの鍛治谷、指揮に関しては冷静だった。祭子は志郎に目を向ける。
「姉上、私も進むべきだと思います。ここで退けば、大逆人の汚名を着たままになるでしょう。ゆえに進むしかないのです」
「志郎……」
「我々はもっと深く気付くべきでした――すでに、禁は破られたのです」
しかし翼を持たない浮世の身体はむなしく大海に落下し、したたかに打ち付けられ、巨大なうねりに呑まれて水底に沈んだ。
浜辺に打ち揚げられた時にはもう、命の火は消えかかっていた。
実真は名を呼び続けて喉をからし、長い時間、海岸沿いを探し歩くと、潮に混じって血の臭いがする浜にたどり着いた。
おびただしい数のカラスの群れが上空をぐるぐるまわり、地上を我が物顔で闊歩していた。その中心に、積み重なった人間の死骸の山が一つ。太刀で袈裟懸けに斬られ、首を突かれ、腹を裂かれるなど酷いありさまだった。
近隣の漁村を襲った鬼たちが、ここに村人たちを集めて惨殺したらしい。
もはや辺りの砂浜は血で赤黒く染まっていた。
胸騒ぎを覚えた実真は浮世の名を叫んだ。
すると血の痕が一つ、どこかに続いているのに気付いた。
(生き延びた者がいる……?)
死肉をついばむカラスを跳ね除け、実真は痕跡をたどる。血は川のほうに続いており、橋の下で消えた。
「誰かいるのか!」
返事はない。水を蹴って水草の繁った川に入る。
暗がりの中に、たしかにいた。実真は言葉を失った。
「ああ……ああっ……」
今にも息絶えそうな浮世の姿がそこにあった。
全身傷だらけで、その肌は蝋のように白く生気がない。美しかった髪の毛も悲しいほどに濡れ乱れ、何かを抱えて石のようにうずくまっている。
「浮世……!」
「実真……さま……」
青ざめた唇からか細い声が漏れる。実真は駆け寄った。
「浮世……私が悪かった……帰ろう。そなたさえいれば、それでいい」
実真は裸の浮世を包むため、直垂の上着を脱ごうとした。
すると浮世は力なく首を振り、震える手で胸に抱えていた何かを差し出す。
「どうかこの子を……助けてあげて……一人きりで泣いていたの」
それは血まみれの赤ん坊だった。腕の中でぐったりしている。
「何を言う……そなたの……」
そなたの手当てが先だ――そう言おうとして、実真は言葉を呑む。
赤ん坊も怪我をしている。背中にカラスの八つの爪痕があった。
浮世は実真に向かって微笑み、何かを言った。
そこに駆けて来たのは来世である。
「実真そこか! 浮世はどこだ! 浮世……浮世か……!」
来世は太刀を投げ捨てて浮世に駆け寄る。すぐに上着をかけてやり、抱き起そうとするが、力を失った浮世の身体は石像のように重い。
「浮世……さあ、はやく手当を。実真、ここから出るぞ、手伝え!」
来世は必死の形相で実真に呼びかけた。
実真は静かに俯いている。その腕に血まみれの赤ん坊を抱いたまま。
「実真……? おい、何やってんだ……そんな赤ん坊なんか放っとけ! このままじゃ浮世が……浮世が死んじまう! 頼むよ! なあ!」
実真は顔を上げた。そして、血まみれの赤ん坊を直垂の中に抱いた。
浮世もまた最後の力を振り絞って実真の姿を視界に収めた。
互いの像がしだいにぼやけてゆく。
実真は背を向けて、その場から走って立ち去った。
「実真戻れ! このクソ野郎! 俺は諦めねえぞ、諦めねえからな!」
懸命に助けようとする来世の耳元で、浮世はささやく。
「あの子……泣いてた。死んだお母さんの上で」
「浮世もういい、しゃべるな」
「あのね――」
「俺が絶対助けてやるから、黙ってろ! 死ぬな! ああっ、ああっ」
その日、一匹の鬼が産声を上げた。
天を突き破らんとするほどの、黒い黒い哭き声だった。
※
「実真様は傷だらけの赤子を大事に抱えて近くの村に行き、その祖父母に帰してやった。そしてすぐに浮世のもとに走ったが、二人とも姿を消していた。御下命により東国に赴いたのは、その後でございます。実真様の心中を推し量ることは到底かないませぬ。ただただ戦い続け、覇者と呼ばれるようになった……しかしその栄光も……実真様にとっては……」
話し終えた安長はぐったりと項垂れる。主人の無念とやるせなさを想い、我がことのように胸を痛めていた。
「何とのう悲しい男よ。あれだけの力を持ちながら、守れなんだか」
寿老は再び髑髏を撫でる。
「浮世がここにいるはずがない。それをわかっておったのだな。しかし何と、縁も所縁もない赤子を救うために妻を見殺しにしたか」
寿老の言葉に、安長が何をか言わんと顔を上げるも反論は虚しいだけだった。
すべて事実だったからだ。
見知らぬ赤子。見知らぬ命。そのために浮世を見殺しにした――。
そのとき景平は、静乃の異変に気付いた。
「姫様……? どうなされました」
静乃は顔色を失い、震える息をゆっくり吐き出した。
「私……知ってます……」
その傷なら何度も見た。何度もこの手で触れた。
「背中の八つの傷……背中の……」
※
「なあ、人は死ぬ時どんな顔をすると思う」
鬼童丸はセナと実真に向かって上から言った。
「お前たちは憶えているか?」
鬼童丸の問いかけに二人は答えられない。鬼童丸はフッと笑う。
「俺は憶えている。これまでに手をかけた六百十四人の顔すべてを。だが、一人としていなかったよ――笑って死んだヤツは」
そして、鬼童丸は少しだけ視線を外して言った。
「笑って死ぬ時ってのは、どんな気持ちなんだろうな」
その時、鬼童丸のもとに血相を変えた手下が駆けて来た。鬼童丸に耳打ちをすると、たちまち眉間に深い皺が刻まれる。
「おい、本当か?」
手下は大きく頷く。鬼童丸は舌打ちした。
「実真! ここは預ける。せいぜい己の罪と向き合うんだな」
去りゆく鬼童丸の背に、セナは叫んだ。
「鬼童丸!」
鬼童丸は立ち止まり、わずかに顔を向けた。
「セナ……俺はお前に、一つのことしか教えなかったぞ」
そう言って、あっという間に姿を消した。
※
東国武士団は鈴鹿山脈を通過し、柘植ノ平を視界に捉えつつあった。
軍の先頭にいた鍛治谷は迅速に進軍できたことに気をよくしていた。
「ぬわっはっは! 襲撃などないではないか!」
「実真殿が防いだのでは」
志郎はいつも落ち着いている。その背を鍛治谷は力いっぱい叩く。
「伏兵などいなかったかもしれぬ。前向きでなければ女子にモテぬぞ!」
華奢な志郎は咳込んだ。
「げほっげほっ……十分前向きですよ……モテませんがね」
鈴鹿山脈は最大の難所だった。山脈を避けると遠い北から進軍しなければならず、その経路にも三関の一つ不破の関が立ちふさがる。仮にそこを突破しても、京の都を守るように横たわる長大な琵琶湖を南北どちらかで迂回しなければならない。時間もかかる。
鈴鹿山脈越えは京の都までの最短経路だった。そして柘植ノ平を抑えれば、あとは北上して敵の拠点を落とすのはたやすい。三関の一つ逢坂の関がまだ残っているが、船を調達して琵琶湖からいかようにも攻めることができる。
「伝令!」
斥候が鍛治谷のもとに運んできたのは、驚くべき情報だった。
「何!? 追討軍が逃げ出しただと!?」
「はっ、敵軍は布陣することなく続々と撤退を始めております」
ここで戦わないとは――さすがの鍛治谷も半信半疑だったが、自分の目で柘植ノ平に一つの兵気もないのを確認すると大いに肩透かしを食った。
「ワハハ! いくら畿内の弱兵とはいえ、ここで逃げるとは情けない!」
鍛治谷は笑いながら怒った。
志郎は据わった目で柘植ノ平を見晴るかしている。
そこに軍列の後方から祭子が馬に乗ってやって来た。
「志郎はどこだ――!」
「おお、祭子! よくぞ我がもとに戻った! さあ来い!」
鍛治谷は胸に飛び込めと両腕を広げる。が、祭子は無視した。
「何が起こっている? 敵との戦はどうした!?」
「それが姉上……」
志郎は手短に説明した。笑みを浮かべる鍛治谷と対照的に、祭子の顔はどんどん強張ってゆく。
「どういうことだ……ついさっき鬼童丸と遭遇したのだぞ!?」
「まことですか!? 今、実真殿はどこに」
「じきに戻る。私は負傷兵を連れて先に戻った」
まだ両腕を広げていた鍛治谷だったが、さすがに咳払いして仕切り直した。
「我らは進軍するぞ、祭子」
「待て、鍛治谷。状況がわからない。実真殿の合流が先だ」
「ならぬ。この機を逃せば敵に時を与えてしまう。このまま拠点を目指す」
鍛治谷の言うことは、そもそもの計画にある。祭子は目もとを歪めた。
「しかし……」
「俺は今、実真の代理だ。祭子といえど聞けぬ!」
さすがの鍛治谷、指揮に関しては冷静だった。祭子は志郎に目を向ける。
「姉上、私も進むべきだと思います。ここで退けば、大逆人の汚名を着たままになるでしょう。ゆえに進むしかないのです」
「志郎……」
「我々はもっと深く気付くべきでした――すでに、禁は破られたのです」
0
あなたにおすすめの小説
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
めぐみ
歴史・時代
お民は江戸は町外れ徳平店(とくべいだな)に夫源治と二人暮らし。
源治はお民より年下で、お民は再婚である。前の亭主との間には一人息子がいたが、川に落ちて夭折してしまった。その後、どれだけ望んでも、子どもは授からなかった。
長屋暮らしは慎ましいものだが、お民は夫に愛されて、女としても満ち足りた日々を過ごしている。
そんなある日、徳平店が近々、取り壊されるという話が持ちあがる。徳平店の土地をもっているのは大身旗本の石澤嘉門(いしざわかもん)だ。その嘉門、実はお民をふとしたことから見初め、お民を期間限定の側室として差し出すなら、長屋取り壊しの話も考え直しても良いという。
明らかにお民を手に入れんがための策略、しかし、お民は長屋に住む皆のことを考えて、殿様の取引に応じるのだった。
〝行くな!〟と懸命に止める夫に哀しく微笑み、〝約束の1年が過ぎたから、きっとお前さんの元に帰ってくるよ〟と残して―。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
7番目のシャルル、狂った王国にうまれて【少年期編完結】
しんの(C.Clarté)
歴史・時代
15世紀、狂王と淫妃の間に生まれた10番目の子が王位を継ぐとは誰も予想しなかった。兄王子の連続死で、不遇な王子は14歳で王太子となり、没落する王国を背負って死と血にまみれた運命をたどる。「恩人ジャンヌ・ダルクを見捨てた暗愚」と貶される一方で、「建国以来、戦乱の絶えなかった王国にはじめて平和と正義と秩序をもたらした名君」と評価されるフランス王シャルル七世の少年時代の物語。
歴史に残された記述と、筆者が受け継いだ記憶をもとに脚色したフィクションです。
【カクヨムコン7中間選考通過】【アルファポリス第7回歴史・時代小説大賞、読者投票4位】【講談社レジェンド賞最終選考作】
※表紙絵は離雨RIU(@re_hirame)様からいただいたファンアートを使わせていただいてます。
※重複投稿しています。
カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16816927859447599614
小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n9199ey/
【完結】『江戸めぐり ご馳走道中 ~お香と文吉の東海道味巡り~』
月影 朔
歴史・時代
読めばお腹が減る!食と人情の東海道味巡り、開幕!
自由を求め家を飛び出した、食い道楽で腕っぷし自慢の元武家娘・お香。
料理の知識は確かだが、とある事件で自信を失った気弱な元料理人・文吉。
正反対の二人が偶然出会い、共に旅を始めたのは、天下の街道・東海道!
行く先々の宿場町で二人が出会うのは、その土地ならではの絶品ご当地料理や豊かな食材、そして様々な悩みを抱えた人々。
料理を巡る親子喧嘩、失われた秘伝の味、食材に隠された秘密、旅人たちの些細な揉め事まで――
お香の持ち前の豪快な行動力と、文吉の豊富な食の知識、そして二人の「料理」の力が、人々の閉ざされた心を開き、事件を解決へと導いていきます。時にはお香の隠された剣の腕が炸裂することも…!?
読めば目の前に湯気立つ料理が見えるよう!
香りまで伝わるような鮮やかな料理描写、笑いと涙あふれる人情ドラマ、そして個性豊かなお香と文吉のやり取りに、ページをめくる手が止まらない!
旅の目的は美味しいものを食べること? それとも過去を乗り越えること?
二人の絆はどのように深まっていくのか。そして、それぞれが抱える過去の謎も、旅と共に少しずつ明らかになっていきます。
笑って泣けて、お腹が空く――新たな食時代劇ロードムービー、ここに開幕!
さあ、お香と文吉と一緒に、舌と腹で東海道五十三次を旅しましょう!
夫は家族を捨てたのです。
クロユキ
恋愛
私達家族は幸せだった…夫が出稼ぎに行かなければ…行くのを止めなかった私の後悔……今何処で何をしているのかも生きているのかも分からない……
夫の帰りを待っ家族の話しです。
誤字脱字があります。更新が不定期ですがよろしくお願いします。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる