【完結】忌子と呼ばれ婚約破棄された公爵令嬢、追放され『野獣』と呼ばれる顔も知らない辺境伯に嫁ぎました

葉桜鹿乃

文字の大きさ
4 / 21

4 邪魔者はいなくなった(※ブレンダ視点)

しおりを挟む
 あぁ、せいせいした!

 双子として産まれて、ずっと傍に忌子であるあれが居るのに耐えられなかった。

 公爵家でありながら子宝に恵まれず、私が亡くなってからでは次の子は望めず取り返しもつかない。だから殺す訳にもいかないし、せいぜい利用しようという父母には、私まで道具扱いされてるみたいで不愉快だった。

 けど、一番不愉快なのは、忌子の方を王太子の婚約者にした事。なんで私じゃないの? と何度も聞いた。返ってくるのはいつも同じ返事。

「王室に不幸があっても、公爵家に不幸が無ければそれでいい」

 たしかに王弟殿下である大公様もいらっしゃるし、その御子息もいる。いざとなれば頭はすげ替えが利く、という理屈は分かる。

 だけど、私は忌子じゃないのに公爵家で婿を取り、あれが王宮で王妃になる? 耐えられないわ、そんな社交界。

 いつバラそうかと機会を伺っていたけれど、我が家に王太子が通うようになって1年。ようやくチャンスが訪れた。

 あれと二人きりでお茶をしている最中、ずっと物陰で張っていて正解だった。席を離れた隙に王太子に全てを打ち明けたら、顔色を蒼くして黙り込んで、すぐに帰ると言い出した。

 我が家は王家の転覆を願う立場ではないことだけは、お父様の働きで理解されている。ただ、思っていた以上に重用されないことに痺れを切らしていたのは確か。

 翌日、私との婚約を先に宣言してから婚約破棄をあれに突き付け、利用価値のなくなったあれは『野獣』と呼ばれる辺境伯領に嫁ぐことが決まった。

 それまで与えられていた全てを取り上げられて……今までが分不相応だっただけのこと……金で雇った荒くれ者に、『野獣』に嫁ぐ貴族の娘だから、と人を使って言い含め、『野獣』を知らぬ者はいないから貞操だけは保証されて送られていった。

 僅かな下着と一枚の替えの服だけ持たされて、粗雑な荷馬車で運ばれていったと聞いている。

 そして、私は王太子殿下の次の婚約者として……姉妹の場合、一人が病気で婚約を解消した場合、大体はもう一人が後釜に収まるのが通例だ……正式に書類を交わした。

 これで私は忌子であるあれから切り離され、王太子妃の地位も約束され、お父様たちは最初からそうしておけばよかったものを、遠縁から養子を取って爵位を継がせることになった。

 全てうまく回り始めたわ。王太子妃教育だって、あの子ができた事が私にできないはずがない。

 それに、王太子殿下の心だって、あの子が忌子と分かった瞬間宙に浮いた。すぐに私に夢中にさせて忘れさせてあげなくちゃ。

 双子の下の子は忌子。

 この国は遠い昔魔族の侵攻を受けた。魔王なんてもうお伽話の中にしか居ないけれど、その魔王がその代の王妃を犯して生まれた子が双子。

 上の子は人間、下の子は魔物の特徴を継いでいた。角が生え、触れるものを皆腐らせ、呪いを振りまいて直ぐに死んだ。その時にはもう、当代の勇者が魔王を殺していたから、誰もその子を助けも育てられもしなかった。

 そして、忌子を産んだ王妃も、その前に殺された国王も居ない中、玉座に収まったのが今の王族だと言い伝えられている。

 市井でも忌子だと言って口減らしのために双子の下の子は殺されるし、貴族や王族ならばほとんど殺される。欲をかいた貴族……うちの両親のような場合、結局バレれば損をする。

 今回ばかりは全てうまくいってくれたけれど。公爵家と王室の結婚、まして忌子の出産に関わった使用人や乳母は皆『亡くなって』いるし、今更誰も何も証明できない。

 だからこそ、私一人が告げ口するだけで信憑性が出る。少し調べれば『忌子に関わった人間が死んでいる』と分かるのだから。

「あれがずっと表舞台にいたのが間違いなのよ。魔物の跋扈する辺境で、さっさと不幸を振りまいてのたれ死んでしまえばいいわ」

 そして、私は将来の国母となる。

 私のようなたまたま忌子の姉として産まれてしまったような不幸な人を減らすために、絶対に忌子は殺すように、法を整えてみせるわ。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。 このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。 そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。 ーーーー 若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。 作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。 完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。 第一章 無計画な婚約破棄 第二章 無計画な白い結婚 第三章 無計画な告白 第四章 無計画なプロポーズ 第五章 無計画な真実の愛 エピローグ

婚約破棄されたので、その場から逃げたら時間が巻き戻ったので聖女はもう間違えない

aihara
恋愛
私は聖女だった…聖女だったはずだった。   「偽聖女マリア!  貴様との婚約を破棄する!!」  目の前の婚約者である第二王子からそう宣言される  あまりの急な出来事にその場から逃げた私、マリア・フリージアだったが…  なぜかいつの間にか懐かしい実家の子爵家にいた…。    婚約破棄された、聖女の力を持つ子爵令嬢はもう間違えない…

【完結】公爵家のメイドたる者、炊事、洗濯、剣に魔法に結界術も完璧でなくてどうします?〜聖女様、あなたに追放されたおかげで私は幸せになれました

冬月光輝
恋愛
ボルメルン王国の聖女、クラリス・マーティラスは王家の血を引く大貴族の令嬢であり、才能と美貌を兼ね備えた完璧な聖女だと国民から絶大な支持を受けていた。 代々聖女の家系であるマーティラス家に仕えているネルシュタイン家に生まれたエミリアは、大聖女お付きのメイドに相応しい人間になるために英才教育を施されており、クラリスの側近になる。 クラリスは能力はあるが、傍若無人の上にサボり癖のあり、すぐに癇癪を起こす手の付けられない性格だった。 それでも、エミリアは家を守るために懸命に彼女に尽くし努力する。クラリスがサボった時のフォローとして聖女しか使えないはずの結界術を独学でマスターするほどに。 そんな扱いを受けていたエミリアは偶然、落馬して大怪我を負っていたこの国の第四王子であるニックを助けたことがきっかけで、彼と婚約することとなる。 幸せを掴んだ彼女だが、理不尽の化身であるクラリスは身勝手な理由でエミリアをクビにした。 さらに彼女はクラリスによって第四王子を助けたのは自作自演だとあらぬ罪をでっち上げられ、家を潰されるかそれを飲み込むかの二択を迫られ、冤罪を被り国家追放に処される。 絶望して隣国に流れた彼女はまだ気付いていなかった、いつの間にかクラリスを遥かに超えるほどハイスペックになっていた自分に。 そして、彼女こそ国を守る要になっていたことに……。 エミリアが隣国で力を認められ巫女になった頃、ボルメルン王国はわがまま放題しているクラリスに反発する動きが見られるようになっていた――。

国外追放ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私は、セイラ・アズナブル。聖女候補として全寮制の聖女学園に通っています。1番成績が優秀なので、第1王子の婚約者です。けれど、突然婚約を破棄され学園を追い出され国外追放になりました。やった〜っ!!これで好きな事が出来るわ〜っ!! 隣国で夢だったオムライス屋はじめますっ!!そしたら何故か騎士達が常連になって!?精霊も現れ!? 何故かとっても幸せな日々になっちゃいます。

【完結】婚約破棄をされたわたしは万能第一王子に溺愛されるようです

葉桜鹿乃
恋愛
婚約者であるパーシバル殿下に婚約破棄を言い渡されました。それも王侯貴族の通う学園の卒業パーティーの日に、大勢の前で。わたしより格下貴族である伯爵令嬢からの嘘の罪状の訴えで。幼少時より英才教育の過密スケジュールをこなしてきたわたしより優秀な婚約者はいらっしゃらないと思うのですがね、殿下。 わたしは国のため早々にこのパーシバル殿下に見切りをつけ、病弱だと言われて全てが秘されている王位継承権第二位の第一王子に望みを託そうと思っていたところ、偶然にも彼と出会い、そこからわたしは昔から想いを寄せられていた事を知り、さらには彼が王位継承権第一位に返り咲こうと動く中で彼に溺愛されて……? 陰謀渦巻く王宮を舞台に動く、万能王太子妃候補の恋愛物語開幕!(ただしバカ多め) 小説家になろう様でも別名義で連載しています。 ※感想の取り扱いについては近況ボードを参照してください。

婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの
恋愛
 婚約者の第五王子フランツ殿下には好きな令嬢が出来たみたい。その令嬢とは男爵家の養女で親戚筋にあたり現在私のうちに住んでいる。  婚約者の私が邪魔になり、身分剥奪そして追放される事になる。陛下や両親が留守の間に王都から追放され、辺境の町へと行く事になった。  100キロ以内近寄るな。100キロといえばクレマン? そこに第三王子フェリクス殿下が来て“グレマン”へ行くようにと言う。クレマンと“グレマン”だと方向は真逆です。  追放と言われましたので、屋敷に帰り準備をします。フランツ殿下が王族として下した命令は自分勝手なものですから、陛下達が帰って来たらどうなるでしょう?

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。

銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。 しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。 しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……

処理中です...