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10 王家にのみ伝わる真実(※ヨルング視点)
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まさか今まで婚約していた相手が忌子だなどと誰が思うだろう。
4つ歳下の……本来なら3つ歳下の、儚げで美しく、一歩下がって男性を立てるメルクール。王太子妃教育にも弱音を吐かず、完璧にこなしてみせた。
いまさら他の誰かとなど考える余地もなく、情も好意も持っていたが、彼女の姉のブレンダ嬢の言葉で具に調べ上げた内容は、ブレンダ嬢の言葉を裏付けるに相応しい内容だった。
産婆、当時の使用人、乳母、全ての者が彼女らが生まれてから5年の間に消息不明、または死亡が確認されている。
子供が生まれ環境が変われば、徐々に使用人を入れ替えるのは不自然なことではない。
が、その全ての生死が確認できないなどというのは明らかにおかしい。アルトメア公爵をこの証拠で問い詰めた所、床に這いつくばって額を擦り付けていた。
忌子を将来の国母として迎えるなどあってはならないことだ。すぐさま婚約破棄……表向きは世間を騒がせないように病による婚約解消とし、メルクールは厄介者の『野獣』の元へ、私の婚約者は姉のブレンダ嬢へとすげ変わった。
王家にのみ伝わる真実の歴史……過去、隣国の第二王子と第三王子が共闘して我が国に攻め込み、当時の王を殺し流行病によって王妃及びその周りの者を悉く死に追いやった第三王子を、第二王子が殺す形で玉座に収まった。
遠い遠い、それこそ御伽噺になるほど昔の話だ。第二王子と第三王子は双子で、第三王子のみが病を持っており、第二王子はそのまま健康な体で大公の娘を娶って、今代々続く王家がある。
双子の下の子が忌子である、という風習は、当時攻め入ってきた兵の中にも病は蔓延しており、当時のナーガフォレスト王国にも病を発する者が出たため、口減らしするための詭弁だった。
しかし厄介な病は長く二つの国を苦しめ、今なお因習として残る程の歳月、それが続くこととなり……、王となった双子の兄が功績を残して死んだ弟を弔うためにそうしている、とされている。
双子の下の子は忌子である。これを本気で魔王によって呪われたものだからと市井の民も、貴族も、信じている。真実を知るのは王室の者のみだ。
病によるものだという事実は知られていない。今更その病が流行ることも、もうない。その当時の我が国に攻め入った第三王子の主治医が治療法を見つけた。彼もまた、消息をたったが。
そして、今に至る。グラスウェル辺境伯は隣国から攻め入られ、病を国に蔓延させた責任を取って、王都への来訪や社交活動を禁じられてきた。
今なお隣国はこちらの国を狙っている。何故なら『その病の治療法は当国にのみある』からだという。隣国では、徹底した隔離治療によって病をおさめたらしいが、未だに明確な予防や治療法は確立されていない。
お陰で衛生面、医療面では我が国が優っている状態だ。
隣国の当時の王の弟たちによってもたらされた病の解決法は、病人であった攻め込んできた弟をきっかけに確立され、あちらの国は随分と死者を出したようだ。
「今更……、いや、忌子の風習の残るこの国も、また、今更だな」
隣国がきな臭いことは分かっているが、決定的に攻め込んでくる気配はない。
グラスウェル辺境伯は随分とうまくやっているらしい。
次に攻め込まれる事があれば、それこそグラスウェル辺境伯はお家取り潰しの上、下手をすれば隣国との共謀さえ疑われる。
王家はグラスウェル辺境伯に対して大きな恐れと嫌悪を抱いている。特に、父上がそうだ。……一体なぜ、と思わなくもないが、大事なのは……そう、今大事なのは忌子と結婚することのなかったという現在だ。
王太子妃教育は並々ならぬ努力を要するだろう。しかし、ブレンダもまた王室を騙していた一人であるのだから、その位はこなしてもらわねば信用してそばに置けない。
メルクール。彼女は最後まで、自分が忌子である事を自覚していた。
私は一体何を憎み、何が味方で、何が敵なのかを計りかねているらしい。
きっと、しばらくの時がくれば落ち着くはずだ。そう、きっと……時間の問題だ。
4つ歳下の……本来なら3つ歳下の、儚げで美しく、一歩下がって男性を立てるメルクール。王太子妃教育にも弱音を吐かず、完璧にこなしてみせた。
いまさら他の誰かとなど考える余地もなく、情も好意も持っていたが、彼女の姉のブレンダ嬢の言葉で具に調べ上げた内容は、ブレンダ嬢の言葉を裏付けるに相応しい内容だった。
産婆、当時の使用人、乳母、全ての者が彼女らが生まれてから5年の間に消息不明、または死亡が確認されている。
子供が生まれ環境が変われば、徐々に使用人を入れ替えるのは不自然なことではない。
が、その全ての生死が確認できないなどというのは明らかにおかしい。アルトメア公爵をこの証拠で問い詰めた所、床に這いつくばって額を擦り付けていた。
忌子を将来の国母として迎えるなどあってはならないことだ。すぐさま婚約破棄……表向きは世間を騒がせないように病による婚約解消とし、メルクールは厄介者の『野獣』の元へ、私の婚約者は姉のブレンダ嬢へとすげ変わった。
王家にのみ伝わる真実の歴史……過去、隣国の第二王子と第三王子が共闘して我が国に攻め込み、当時の王を殺し流行病によって王妃及びその周りの者を悉く死に追いやった第三王子を、第二王子が殺す形で玉座に収まった。
遠い遠い、それこそ御伽噺になるほど昔の話だ。第二王子と第三王子は双子で、第三王子のみが病を持っており、第二王子はそのまま健康な体で大公の娘を娶って、今代々続く王家がある。
双子の下の子が忌子である、という風習は、当時攻め入ってきた兵の中にも病は蔓延しており、当時のナーガフォレスト王国にも病を発する者が出たため、口減らしするための詭弁だった。
しかし厄介な病は長く二つの国を苦しめ、今なお因習として残る程の歳月、それが続くこととなり……、王となった双子の兄が功績を残して死んだ弟を弔うためにそうしている、とされている。
双子の下の子は忌子である。これを本気で魔王によって呪われたものだからと市井の民も、貴族も、信じている。真実を知るのは王室の者のみだ。
病によるものだという事実は知られていない。今更その病が流行ることも、もうない。その当時の我が国に攻め入った第三王子の主治医が治療法を見つけた。彼もまた、消息をたったが。
そして、今に至る。グラスウェル辺境伯は隣国から攻め入られ、病を国に蔓延させた責任を取って、王都への来訪や社交活動を禁じられてきた。
今なお隣国はこちらの国を狙っている。何故なら『その病の治療法は当国にのみある』からだという。隣国では、徹底した隔離治療によって病をおさめたらしいが、未だに明確な予防や治療法は確立されていない。
お陰で衛生面、医療面では我が国が優っている状態だ。
隣国の当時の王の弟たちによってもたらされた病の解決法は、病人であった攻め込んできた弟をきっかけに確立され、あちらの国は随分と死者を出したようだ。
「今更……、いや、忌子の風習の残るこの国も、また、今更だな」
隣国がきな臭いことは分かっているが、決定的に攻め込んでくる気配はない。
グラスウェル辺境伯は随分とうまくやっているらしい。
次に攻め込まれる事があれば、それこそグラスウェル辺境伯はお家取り潰しの上、下手をすれば隣国との共謀さえ疑われる。
王家はグラスウェル辺境伯に対して大きな恐れと嫌悪を抱いている。特に、父上がそうだ。……一体なぜ、と思わなくもないが、大事なのは……そう、今大事なのは忌子と結婚することのなかったという現在だ。
王太子妃教育は並々ならぬ努力を要するだろう。しかし、ブレンダもまた王室を騙していた一人であるのだから、その位はこなしてもらわねば信用してそばに置けない。
メルクール。彼女は最後まで、自分が忌子である事を自覚していた。
私は一体何を憎み、何が味方で、何が敵なのかを計りかねているらしい。
きっと、しばらくの時がくれば落ち着くはずだ。そう、きっと……時間の問題だ。
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