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17 ドレス選び(※ローズ視点)
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プラチナムのご婦人は、本当に3日でお姉様と私のデザイン案と生地のサンプルを持ってきたわ。さすがに二人分ともなるとお手伝いを雇う必要があるのか、それとも弟子なのか、何人かの女性が丁寧にサロンに荷物を運んできた。
「さ、こちらがデザイン案ですよ。気にいるものはあるかしら?」
プラチナムのご婦人が持ってきたのは、3組のドレスの図案。どれも私とお姉様の対案で、2人で並べばそうと分かり、1人でいれば自分の魅力を最大限に活かすデザイン。今流行りの広がりのあるドレスではなく、ほっそりとしたお姉様と私のスタイルが生きる、身体のラインにそったデザインだった。
流行ばかり追っていた私はこのドレスがどれだけ注目を集めるかよく分かる。これはとても目立つだろう、それも良い意味で。
姉はデザインの良し悪しには疎いからか、何度も3枚を見比べている。たぶん、違いが分かっていないのだわ。困ったお姉様だこと。私はお姉様の手元からデザイン案を引っこ抜く。
「あ……ローズ」
「お姉様、分かっていますよ。貴女がデザインの違いがよく分からなくて困っていることなんて」
プラチナムのご婦人は面白そうに笑って私にデザイン案の全てを見せてきた。
私も聡い方だとは思うけれど、ご婦人の方も相当聡い方だわ。選ばれた人しか作ってもらえないというのも頷ける。
プラチナムのご婦人のデザイン、これは流行を作る側のデザイン。絶対に世の人に受け入れられ、斬新でありながら気品は損なわない。私たち姉妹がこれを着て建国祭に出たら……、とても目立つでしょうね。
生地のサンプルにも触らせてもらいながら、私が決めたのは、薄絹とレースでデザインされた花弁をイメージしたドレス。
刺繍を施した物と迷ったけれど、私たちはまだ若い。薄絹とレースを重ね、肩は出ているけれど長手袋でカバーされて、薔薇にも百合にも見える花を象ったデザイン。裾は後ろに少し長く、前は透けるレースで靴が見える。その靴もヒールは高くとも繊細でありながら、動きやすいデザインに見えた。
色は私が華やかな赤で、姉は銀に近い白。姉の方は光沢がある生地で私は逆に色が強いからか光沢は無いが重たくなりすぎない生地。
「すごいわ……、完璧ですプラチナム婦人」
「あらあら、完璧なんて事ないのよ。貴女たちはとても若くて美しい。口さがない男たちの噂からは、私のドレスで守ってあげますからね。……それに、貴女たちが成長してからも、ドレスを任されたいわ。長生きしないといけない理由ができたわね」
どうやら私が選んだデザイン案は、プラチナムのご婦人の一番自信のあるデザインだったようだ。認められた、と思ったし、社交界についてもプラチナムのご婦人はご存知のようだわ。
でも、本当にそう。このドレスを着て姉と私が建国祭に出たら、絶対に注目が集まる。私たちのためのドレスでありながら、ドレスそのものが強い力を持っている。悪評、私の……過去のあやまち、それを跳ね除ける力のあるドレス。
お姉様にも生地を触らせて、デザインについて説明したけれど、全くこの人は分かっていない。
プラチナムのご婦人は品よく笑うと、では採寸しましょうかと私たちを促した。
「さ、こちらがデザイン案ですよ。気にいるものはあるかしら?」
プラチナムのご婦人が持ってきたのは、3組のドレスの図案。どれも私とお姉様の対案で、2人で並べばそうと分かり、1人でいれば自分の魅力を最大限に活かすデザイン。今流行りの広がりのあるドレスではなく、ほっそりとしたお姉様と私のスタイルが生きる、身体のラインにそったデザインだった。
流行ばかり追っていた私はこのドレスがどれだけ注目を集めるかよく分かる。これはとても目立つだろう、それも良い意味で。
姉はデザインの良し悪しには疎いからか、何度も3枚を見比べている。たぶん、違いが分かっていないのだわ。困ったお姉様だこと。私はお姉様の手元からデザイン案を引っこ抜く。
「あ……ローズ」
「お姉様、分かっていますよ。貴女がデザインの違いがよく分からなくて困っていることなんて」
プラチナムのご婦人は面白そうに笑って私にデザイン案の全てを見せてきた。
私も聡い方だとは思うけれど、ご婦人の方も相当聡い方だわ。選ばれた人しか作ってもらえないというのも頷ける。
プラチナムのご婦人のデザイン、これは流行を作る側のデザイン。絶対に世の人に受け入れられ、斬新でありながら気品は損なわない。私たち姉妹がこれを着て建国祭に出たら……、とても目立つでしょうね。
生地のサンプルにも触らせてもらいながら、私が決めたのは、薄絹とレースでデザインされた花弁をイメージしたドレス。
刺繍を施した物と迷ったけれど、私たちはまだ若い。薄絹とレースを重ね、肩は出ているけれど長手袋でカバーされて、薔薇にも百合にも見える花を象ったデザイン。裾は後ろに少し長く、前は透けるレースで靴が見える。その靴もヒールは高くとも繊細でありながら、動きやすいデザインに見えた。
色は私が華やかな赤で、姉は銀に近い白。姉の方は光沢がある生地で私は逆に色が強いからか光沢は無いが重たくなりすぎない生地。
「すごいわ……、完璧ですプラチナム婦人」
「あらあら、完璧なんて事ないのよ。貴女たちはとても若くて美しい。口さがない男たちの噂からは、私のドレスで守ってあげますからね。……それに、貴女たちが成長してからも、ドレスを任されたいわ。長生きしないといけない理由ができたわね」
どうやら私が選んだデザイン案は、プラチナムのご婦人の一番自信のあるデザインだったようだ。認められた、と思ったし、社交界についてもプラチナムのご婦人はご存知のようだわ。
でも、本当にそう。このドレスを着て姉と私が建国祭に出たら、絶対に注目が集まる。私たちのためのドレスでありながら、ドレスそのものが強い力を持っている。悪評、私の……過去のあやまち、それを跳ね除ける力のあるドレス。
お姉様にも生地を触らせて、デザインについて説明したけれど、全くこの人は分かっていない。
プラチナムのご婦人は品よく笑うと、では採寸しましょうかと私たちを促した。
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