男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして？

延長戦

第23話 王様ゲーム(2)

「1番は……」

「わ、私から」

　立夏ちゃんが手を挙げる。

　てか僕、パンイチでキスすることになるのね。

「大晴」

　鹿波ちゃんに呼ばれて、彼女の瞳を見る。
　『貴方からキスするのよ』と言っているようだ。

　王様の命令は絶対……この場に置いて、鹿波ちゃんの命令は絶対。

『さぁ本気キスで分からせにいくのよ』

　ふぅ、と深呼吸をして、覚悟を決める。

「立夏ちゃん」

「ひゃ、ひゃい！」

　比較的、しっかり者で落ち着いた様子の立夏ちゃんがこんなにも顔を真っ赤にしている。

　そんな彼女の肩に手を置き、逃げられないようにする。

　互いの息が触れあう。
　そして、唇が重なり合う。
　
　……ちゅ

　薄くではあったが確実に触れあった。

「……ふぁ」

　トロンとした瞳と甘い声を出す立夏ちゃん。

　そして再びキス。

　ゆっくりと互いの思いを確かめるようにしたキスは、拙かったけれども、心地よくて、何度も小鳥が啄むようにその唇を重ねた。

　しばらくして互いの顔を見ながら短い言葉を交わす。

「……痛くない？」

「だいじょうぶ……むしろ、気持ちいい」

「そう」

　しばらく立夏ちゃんの唇にキスをしていると、僕の背中が一気に柔らかく、そして温かいものが押し付けられた。

　僕は今、上半身裸。
　温もりがじわじわと皮膚に伝わる。

「……美奈ちゃん？」

　振り向くと、美奈ちゃんは恥ずかしそうに太ももを擦り合わせていた。

「そ、そろそろアタシと……」

　見た目はギャルで経験豊富そうなのに、こんなに顔を赤く染めて、初心な姿で……。

「……美奈ちゃん可愛い」

「ばっ……っかぁ。ん……」

　叩かれるのも気にせず、美奈ちゃんをぎゅっと抱きしめ、キスする。

　立夏ちゃんの切なそうな声が漏れたが、今は美奈ちゃんに集中。

　よほど恥ずかしいのか、美奈ちゃんの瞳には薄く涙が。

　そんなの、男を煽る要素になるとは知らず。

　僕は鼻息を荒くしながらも、出来るだけ優しくキスをしていく。

　今度は、ツンツンと横腹を突かれた。

「先輩、そろそろ私……です」

　恥ずかしそうにか細い声を出す、弥夕ちゃん。

　刹那、彼女の顔がドアップに。

「ちゅっ、んっ……」
　
　妙にとろんとした目をして、弥夕ちゃんは自ら唇を寄せてくる。
　時にははむはむ、と唇を貪るようなキス。

「大晴くん」
「大晴」
「大晴先輩」
　
　王様の命令が続く限り、キスは永遠。

　ちゅっ、ちゅっ、と何度も何度も3人にキスを繰り返す。　

　ちゅっ

　音が鳴る。そして間髪入れずに再び。

　ちゅっ、ちゅ
　　
　キスの雨。

　視線の奥では鹿波ちゃんが僕らを眺めていた。

　 ……鹿波ちゃん、君は一体、僕に何を求めているの？


＊＊＊＊＊

(鹿波視点)

　目の前で広がるのは、男1人と女3人によるキス。
　私はそれをただ眺めているだけ。

　自分が楽しむためにこうしているんだ。

　――本当に、そうなの？

　男女の恋愛なんて、最終的には性欲に行き着く。男が誰であろうと。

　――じゃあ、どうして彼を選んだ？

　――どうして、あの日、彼を拾った？

　……。

　自分自身から発せられるいくつもの問い。答えを作っては、また疑問が増える。
　
　最初から『彼女たちは貴方のことが好き』と伝えれば人蹴りで済む話だった。

　それなのに、なぜ自分は『攻略』などという余計な手順を増やしたのか。

　――わざわざ、彼女たちを攻略させたのはなぜだ？

　――2番目の彼女と告白するように言ったのはなぜだ？

　――今、キスをさせているのはなぜた？

　疑問ばかり増えていく。

　……私は一体、彼に何を求めているのだろう。