大人への門

相良武有

文字の大きさ
65 / 67
第一話 開かれた大人への扉

⑤修治、プロの女を抱く

しおりを挟む
 大学一年の夏、北陸へ合宿に行った最終日に先輩が修治に聞いた。
「おい藤木、お前、筆下ろしはもう済んでいるのか?」
先輩の唐突な問に修治は慌てた。
「ええ、まあ・・・」
修治は曖昧な返事で誤魔化した。
「なんだお前、未だ済んでいないのか。よし、じゃ今夜、俺に従いて来い」
 先輩に連れて行かれた鄙びた温泉街のバーで、修治は女を抱いた。
相手は、色白で少し太り気味の、鼻筋の通った切れ長の眼の、それでいて、ふわぁっとした柔らかい表情を浮かべる三十歳前のホステスだった。
「あんた、初めてではないわね」
にっこり微笑んだ女は、指でスカートの縁を少しずつたくし上げていった。成熟し切って下り坂にある、快楽の対象としては打ってつけの肉体に眼を射られて、妄想を掻き立てられた修治は、挑むように女に飛びかかっていった。
女はやさしかった。
無私の同情と優しい愛情と無償の手ほどきの、柔らかくて親切な誘いに、積極的な快楽を与えられた修治は、だんだんと陶酔境に浸っていった。
これは、優しくて綺麗な女なら、むしろ自分の義務と考える最も純粋な在り方ではないか、修治はそう思った。
「わたしはねえ、私の肉体によって多くの若い人達にねえ、男らしさの土台を作ってあげるのよ」
女は言った。
「しかも、当惑させないように、後腐れの無い安心感を与えながら、ね。恐らくこれは一つの美徳でしょう」
確かにそうだ。俺たちが、男色という悲しい方便に歪められたり、自分で自分を満足させる自涜に耽ったりするのは、痛ましい限りだ。そんな悪癖から守ってくれるのは、その手段を沢山持ち合わせているこういう境遇の女達なのだ、と修治は思った。
あくせく営む交わりの中で、修治が求めたもの、それは断じて「おんな」ではなかった。
修治の中で男が立ち上がり、捩れ合い絡み付き合った。彼の中を白い液体が走って彼は仰け反り、女の水位の持ち上がった花園に、淫らな線を描いたその割け目に、修治は人間の亀裂と彼自身の割け目を覗いた。
恍惚たる陶酔の後、鉄砲を狂わせて、修治は果てた。
 行為が終わると、女はその代償を喜んでさっさと受取り、そして、言った。
「もし私がお金を受取らなかったら、あなた達は残酷なまでに自尊心を痛めるでしょう。慈悲心なんて不躾だと思うでしょう」
「そうだ。こういう場合、金とは匿名のものだ。何という偽りの無邪気さ、何というエゴイズムか。若い俺たちは金で女を辱めることを義務とすべきなんだ」
二人は声を立ててカラカラと笑い合った。
あの堪らない喜悦の広がりの中で修治が認識したもの、それは「精神と肉体の合一性」であった。
女は言った。
「自分の肉体や相手の肉体を愛しもせず、ただ魂の力だけで相手を征服しようとしても、真実に相手を満足させることは出来ないのよ」。
「そうだ。肉体を精神から完全に切り離すことは出来ないし、精神以上に自己に深く根ざしている肉体の可能性以外のところに、自己を見ることは出来ないんだからな」
この哲理を理屈でなく身体で感知した修治は、豊かな肉体と豊かな魂の結合の中に、純粋で優しい高潔な天使の存在を見出したのだった。
修治の中で男の燃焼が尽きて彼の頭脳がどろりと凍り、彼は夢に沈んでその夢に座り続けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...