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第三話 運命的な出逢い
④二人は道連れだ!!
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達夫と男との距離は未だ五米も離れていなかった。達夫は雅美が今、自分から無限の彼方へ遠ざかって行くような気がした。助けてとも叫ばず、歯を食い縛ったままのろのろと自分から離れて行く彼女の背中を見て達夫は瞬時に思った。
あいつは唯の行きずりではない!互いに名前も知り合い、飯も一緒に喰い、此処まで二年もの間、二人で駆けて来た道連れだ・・・
道連れと言う言葉には、二人の人間同士の存在に関わる全ての意味が込められているように達夫には思えた。その考えは一瞬のうちに達夫の脳裏を駆け巡った。達夫の視線は今、永遠に向かって離れて行こうとする雅美の背に固定した。
彼は暗闇の中で静かに、然し、素早く、すぐ前にある自分のオートバイの工具箱を開け、一番太い鉄のスパナを取り出した。次の瞬間、達夫は音を殺して闇の中を数歩走り、気配で振り向きかけた男のこめかみにそのスパナを力一杯振り下ろした。手が肘辺りまで痺れるほどの手応えが在った。
「逃げろ!マミ!」
達夫は雅美に叫びながら、もう一度、スパナを握り直して、棒立ちになった相手の鼻柱に向かって力一杯振り下ろした。
雅美は一瞬後ろを振り返ったが、次の瞬間、眼の前の丘へ向かって弾かれたように駆け出し、灌木と草の茂った急な斜面を茂みの中へ身を隠すようにして登り始めた。
男は達夫の足元に蹲って倒れ、後ろで見張って居た二人の男がオートバイを下りて駆け寄って来た。一人は達夫を目指し、もう一人は雅美を追おうとした。
達夫は自分の方へ来る男には構わず、雅美を追う男を追って走った。そして、追い着くや否や、鉄のスパナで男の後頭部を殴打した。わぁ~っと頭に手をやって膝間付いた男の肩に更に強烈な一撃を加えて叩きのめした。それから、自分に追い縋った男の顔に振り向きざまにスパナを薙ぐように振り回した。スパナは鈍い音を立てて相手の右のこめかみに当たり、相手が耳の辺りを抑えて怯んだ隙に今度は正面から顔を打ちつけた。
雅美はもう少しで斜面を登り切って上の暗い雑木林の中へ入ろうとしていた。彼女は下を振り向き小さく達夫の名を呼んだ。
「タツっ!」
「下りて来い!今なら逃げられる!」
達夫は瞬時に考えた。
三人は今、倒れている。直ぐには起きられまい。もし、一人くらい追って来ても、一台だけならどうにでもなる。国道にまで出れば、ホーンを鳴らしてでもライトを点滅してでも通り掛かる自動車に助けを求めることが出来る。逃げるのは今だ・・・
達夫も雅美ももう遠方まで行く気は失せていた。二人は東京へ帰るべくオートバイに跨った。
雅美は今、達夫との出会いに運命の糸みたいなものを感じた。
この人は私を二度にも亘って助けてくれた。駅前書店での万引きの折には、普通なら掴まえて店員に引き渡すか警察に突き出すところを、逃がしてくれただけでなく逃亡を手伝って助けてくれた。そして今、一つ間違えば袋叩きに逢って半殺しにされるか、或は、ひょっとして生命を落とすかも知れないのに、一人で死に物狂いに闘って私が輪姦されるのを防いでくれた・・・
達夫も思っていた。
俺は一時、こいつを放り出そうとした。だが、俺は、別の声が叫びを挙げてその声に動かされた。死ぬほど怖かったが動いた後はもう何も考えなかった。今夜こいつと、こういう出来事に出くわして、こんな風にやり過ごしたことを俺は一生忘れることは無いだろう・・・
オートバイは一路、闇の中を東京の達夫の部屋へと疾走した。
あいつは唯の行きずりではない!互いに名前も知り合い、飯も一緒に喰い、此処まで二年もの間、二人で駆けて来た道連れだ・・・
道連れと言う言葉には、二人の人間同士の存在に関わる全ての意味が込められているように達夫には思えた。その考えは一瞬のうちに達夫の脳裏を駆け巡った。達夫の視線は今、永遠に向かって離れて行こうとする雅美の背に固定した。
彼は暗闇の中で静かに、然し、素早く、すぐ前にある自分のオートバイの工具箱を開け、一番太い鉄のスパナを取り出した。次の瞬間、達夫は音を殺して闇の中を数歩走り、気配で振り向きかけた男のこめかみにそのスパナを力一杯振り下ろした。手が肘辺りまで痺れるほどの手応えが在った。
「逃げろ!マミ!」
達夫は雅美に叫びながら、もう一度、スパナを握り直して、棒立ちになった相手の鼻柱に向かって力一杯振り下ろした。
雅美は一瞬後ろを振り返ったが、次の瞬間、眼の前の丘へ向かって弾かれたように駆け出し、灌木と草の茂った急な斜面を茂みの中へ身を隠すようにして登り始めた。
男は達夫の足元に蹲って倒れ、後ろで見張って居た二人の男がオートバイを下りて駆け寄って来た。一人は達夫を目指し、もう一人は雅美を追おうとした。
達夫は自分の方へ来る男には構わず、雅美を追う男を追って走った。そして、追い着くや否や、鉄のスパナで男の後頭部を殴打した。わぁ~っと頭に手をやって膝間付いた男の肩に更に強烈な一撃を加えて叩きのめした。それから、自分に追い縋った男の顔に振り向きざまにスパナを薙ぐように振り回した。スパナは鈍い音を立てて相手の右のこめかみに当たり、相手が耳の辺りを抑えて怯んだ隙に今度は正面から顔を打ちつけた。
雅美はもう少しで斜面を登り切って上の暗い雑木林の中へ入ろうとしていた。彼女は下を振り向き小さく達夫の名を呼んだ。
「タツっ!」
「下りて来い!今なら逃げられる!」
達夫は瞬時に考えた。
三人は今、倒れている。直ぐには起きられまい。もし、一人くらい追って来ても、一台だけならどうにでもなる。国道にまで出れば、ホーンを鳴らしてでもライトを点滅してでも通り掛かる自動車に助けを求めることが出来る。逃げるのは今だ・・・
達夫も雅美ももう遠方まで行く気は失せていた。二人は東京へ帰るべくオートバイに跨った。
雅美は今、達夫との出会いに運命の糸みたいなものを感じた。
この人は私を二度にも亘って助けてくれた。駅前書店での万引きの折には、普通なら掴まえて店員に引き渡すか警察に突き出すところを、逃がしてくれただけでなく逃亡を手伝って助けてくれた。そして今、一つ間違えば袋叩きに逢って半殺しにされるか、或は、ひょっとして生命を落とすかも知れないのに、一人で死に物狂いに闘って私が輪姦されるのを防いでくれた・・・
達夫も思っていた。
俺は一時、こいつを放り出そうとした。だが、俺は、別の声が叫びを挙げてその声に動かされた。死ぬほど怖かったが動いた後はもう何も考えなかった。今夜こいつと、こういう出来事に出くわして、こんな風にやり過ごしたことを俺は一生忘れることは無いだろう・・・
オートバイは一路、闇の中を東京の達夫の部屋へと疾走した。
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